Facebookによる感情操作と「スタンフォード監獄実験」「ミルグラムの服従実験」
Facebookがユーザーに秘密で感情操作の実験
ぜんぜん知らなかったのだけど、昨年、こんなことが話題になったらしい。Facebookによるユーザー感情操作実験の倫理性|Tech Crunch
それによると、2012年頃、Facebookがユーザーに秘密で感情操作の実験を一週間にわたり試み、そのことで非難が集まったという。
この研究は、ユーザーのニュースフィードの内容が、ユーザー本人の感情形成に影響を与えるかどうかを発見することを目的とし、歪曲されたコンテンツを見た後の投稿内容のトーンを測定することによって判断するものだ。なるほど。フィードに楽しい記事ばかりがならぶのと、暗い記事で埋められるのでは、ユーザーの感情体験や、その後の投稿行動にも違った影響を与えるというのはありそうなことだ。
70万人近いFacebookユーザーが、ポジティブあるいはネガティブに偏ったコンテンツを見せられた。研究の結果、ポジティブなニュースフィードを与えられたユーザーはよりポジティブな内容を投稿し、ネガティブなニュースフィードを与えられたユーザーはネガティブな内容を書き込んでいたことがわかった。との結果とのこと。
まあ、ありそうな結果ではあるが、問題は了解なくこうした実験が行なわれたというところ。
George Orwell,"1984" |
ミルグラム、ジンバルドー、Facebook
「服従から感染へ:ミルグラム、ジンバルドー、そしてFacebook実験におけるパワーの言説」Timothy Recuber,
From obedience to contagion: Discourses of power in Milgram, Zimbardo, and the Facebook experiment, Research Ethics
という論文の、例によってアブストラクトだけ読んでみた。
そもそも、google scholarで"prison experiment"に関する最近の研究を検索してみたら上の方に出てきて、その流れで Facebook experiment について知ったのだった。
Facebookの感情操作実験と、ミルグラムの服従実験、ジンバルドーによるスタンフォード監獄実験には、確かに共通点がある。いずれの実験も、人間を対象とした研究の規範を犯している。しかしそれ以上の、本当の共通点は?
ミルグラムやジンバルドー、Facebookによる実験は、パワー(権力)というものが現在、どのように捉えられているかということについてなにがしかを明らかにしたのだ。
三つの実験はどれも、本質的には、研究者が被験者の感情や行動をどれくらい変化させることができるかという能力を測定している。
けれどもFacebookの実験は、他の二つと比べてこのような意図を隠し、この実験で動いているパワーの行使を不自然でなく見せようとしている。パワーをより見えないものにしているという点で、ずっと狡猾だと著者は述べている。
Facebookが「ビッグ・ブラザー」としてわれわれを監視したり、感情や行動を操作するような時代なのだろうか。
以下は、『コンプライアンス 服従の心理』という映画の予告編。
アメリカのあるファーストフード店で店長を務めるサンドラのもとに、警察官と名乗る男から電話が入る。男は女性定員のベッキーに窃盗の疑いがあると言い、サンドラに対してベッキーの身体検査を命じる。警察官の言うことならばと指示に従ったサンドラだったが……。というストーリー。
ミルグラムの権威への服従実験が映画化されてた
『スタンフォード監獄実験』再び映画化、3作のトレイラーを見比べてみる
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