創造的な人たちは、情緒不安定さを伴っているということが研究で分かったのだそう。
ネガティブにくよくよ考えるのも、悪いことばっかりじゃないってことだ。


心配性と創造性

「神経症的な(情緒不安定な)人々は、意外な利点を持っている」
Neurotic People Have A Surprising Mental Advantage|PsyBlog

この記事によると、創造性と関連する脳の部位は、考え過ぎや心配し過ぎの傾向も担っているのだという。

これまで神経症的な人たちは、怖さの受けとめ方が大げさだと考えられてきたが、事実はそうじゃない。

神経学者たちが述べるところでは、神経症的な人々は、脳の内側前頭前皮質(Medial Prefrontal Cortex)の活動性が高いが、この領域は自己生成思考(self-generated thoughts)にとってもまた重要だ。

self-generated thoughtsというのは、頭のなかで生まれてくる考えといったくらいの意味合いだろう。

内側前頭前皮質が活発な神経症的な人は、頭のなかで恐怖や不安を想像している。創造性の高い人もまた、この内側前頭前皮質が活発というわけだ。

もともとの研究は、

「考えすぎること:神経症傾向のエンジンとしての自己生成思考」
Thinking too much: self-generated thought as the engine of neuroticism

というもの。
  • 既存の神経症傾向モデルでは、不幸と創造性のつながりを説明できない。
  • 自己生成思考(SGT)は、創造性を促進するが、不幸の原因ともなりうる。
  • 内側前頭前皮質(mPFC) の恐怖に関連する領域は、ブルーに染まったSGTを生む。
  • 神経症傾向の高さはmPFCの過活動に由来するSGT傾向を反映する。
とのこと。

創造の病い

この話を読んで、「創造の病い(Creative illness)」について連想した。

「創造の病い」とは、精神医学者のエランベルジュ(『無意識の発見』ではエレンベルガーと表記されていた。H.Ellenberger)が提唱した概念だ。

フロイトやユングなどのクリエイティブな思索を行なった人物にはまた神経症的な時期があった。

抑うつやさまざまな神経症症状は、創造的な発見を生み出すために必要なものでもあった、とエランベルジュは考えたのだ。

河合隼雄はフロイトとユング、そして夏目漱石の「創造の病い」について、エランベルジュの説を紹介しつつ、次のように述べている。
エレンベルガーは2人を研究するうちに、「2人の病気はむしろ創造の病(クリエイティブ・イルネス)と言うべきものではないか。なぜなら、完全に病気ではあるが、病気による混乱状態を本人が克服して、それを統合したところから、ものすごいクリエイションが起こり、結果として学問体系が出来上がった。それをクリエイティブ・イルネスと言っていいのではないか」という説を唱え始めました。その後、いろいろな人が同様の研究をいたしますと、大発見、大発明、優れた芸術作品や文学作品は、病が治っていく過程で生まれてくることが多いということがだんだん判ってきて、それでクリエイティブ・イルネスが注目されるようになりました。  1つの例として、私はよく夏目漱石を挙げます。漱石の場合は、胃潰瘍で瀕死の状態になって、それが治ったところから作風が全く変わっていきます。まさにクリエイティブ・イルネスと言っていいのではないでしょうか。「物語の意義について
上の文章は、「学士会」という財団法人に掲載されていた河合先生の講演記録をたまたま見つけたのだけど、「創造の病い」の話から「牛に引かれて善光寺参り」につながってておもしろかった。