デジャヴ(既視感)と記憶の心理学

10/18/2015

心理学

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デジャヴ(既視感)とは

初めての場所を歩いていて、「あれ、ここには来たことがあるぞ」と感じることがあります。

あるいは、誰かと話をしている最中に、
「この場面はすでに体験したことがある」
という感覚をもつこともあります。

「このあときっと、彼がこんなことを言うんだった」
と「思い出して」いると、そのとおりのことが起こったりします。

デジャヴ(Deja vu)と呼ばれている体験で、既視感とか既視体験などと訳されています。
初めてのことなのに、まったく同じことが前にもあったと強く確信するような体験です。

こんな不思議な体験が続くと、
「ひょっとして自分だけ時間がループしているんじゃないか?」(そんな映画がありましたね。なんだっけ、トム・クルーズが出てた)
「俺って未来が予知できるのかも。宝くじ買わねば」
「運命はすべて決定されているのか」
なんて考えてしまいます。

はたしてデジャヴは、未来予知やタイムループといった超常的な現象と関係しているものなのでしょうか?

Psychology Todayの"What Is Déjà Vu?"という記事には、
the experience of déjà vu is just an extreme reaction of the system that your memory uses to tell you that you are in a familiar situation.
「デジャブ体験とは、あなたが似たような状況にいるということを知らせる記憶のシステムが極端に反応したものだ」と書かれていました。

ループした時間の中に閉じ込められている

すべての景色に見覚えがある「デジャヴ」に7年間苦しむ男性 | livedoor NEWS

というニュースでは、イギリスの医学論文『Journal of Medical Case Reports』に報告された奇妙な事例が紹介されていました。
23歳の男性は、2007年以来、生活のなかで体験するありとあらゆる出来事に、デジャヴを感じてしまうようになったというのです。

男性はもともと強迫性障害を患っていたそうですが、大学入学の後、症状が悪化し、デジャヴ体験が増えてきたのです。
そのうち一日中、すべての出来事に既視感が伴うようになり、「自分はループした時間の中に閉じ込められている」と苦しむようになってしまいました。
旅行をしても人と話しても、テレビやラジオをつけても、「前にも見たことがある」と感じるというのは、不思議を通り越して苦痛な体験になってしまうのではないでしょうか。

デジャヴと精神疾患

デジャヴという言葉は、フランスの心理学者エミール・ブワラックによって1917年に提唱されました。フランス語で、「すでに見たことがある」といった意味も言葉です(ちなみにデジャヴとは反対に、見慣れたはずなのに初めてのように感じられる現象を「ジャメヴ(未視感)」と言います)。

デジャブ自体は、多くの人が普通に経験することで、健常者でも3分の2くらいは体験したことがあると報告します。
わりと一般的な体験なんですね。
ただ、先の事例のようにあまりに極端になると、生きづらくなってしまいます。
また、他の精神疾患の症状と関連して、デジャヴが現れることもあります。

『解離性障害―「うしろに誰かいる」の精神病理』 (ちくま新書) には、解離性障害や離人症との関連で、「解離の患者はこのデジャヴュを幼少期から頻繁に体験していることが多い」と述べられていました。

解離性障害―「うしろに誰かいる」の精神病理 (ちくま新書)

統合失調症の患者がデジャブを体験しやすいなんて話を聴いたことがありますが、実際はどうなんでしょう?

Déjà vu experiences in patients with schizophrenia

という論文によると、
The patients with schizophrenia had déjà vu experiences less frequently (53.1%) than did the nonclinical subjects (76.2%). 
とのことなので、統合失調症だからデジャヴが多いというわけではなく、むしろその体験は少ないと言えます。
一方で、
 However, the experiences of the patients tended to be longer and more monotonous. The patients often felt alert, oppressed, and disturbed by the experiences. They appeared to have the experiences under unpleasant mental or physical states. 
統合失調症者のデジャヴはより長く、単調に続き、油断できない感覚や、圧倒され、動揺させられるような体験となりやすいようです。
また、てんかんなどの脳の病気によっても、デジャヴが起こりやすくなることがあるそうです。

解離性障害や離人症などは、ストレスと関連して症状が悪化することがあるので、デジャヴで悩んでいるときも、ひょっとしたらストレスが大きい状況にあるのかもしれません。

デジャヴはなぜ起こるか?

デジャヴという現象はなぜ起こるのでしょうか?

日本心理学会の「心理学ふしぎふしぎ」というコーナーにまさにその問いに対する回答があったので、紹介します。

Q14.デジャビュ現象はなぜ起こるのですか? | 心理学ふしぎふしぎ
デジャビュの起こる原因の1つは,記憶における類似性認知メカニズムの働きです。たとえば,私たちが,ある経験をする(たとえば場所を訪れる)ときには,類似した過去経験が自動的に想起されます。そのとき,現在の経験と過去経験の類似性が高いほど,既知感が高まります(未知感は逆です)。ここで,デジャビュ現象は,とても強い既知感があっても,(エピソード記憶や関連知識などに基づいて,たとえば「この地方,この場所に来たことはない」と)未経験であることを認識している点がポイントです。
こんな記憶のメカニズムが、デジャヴを引き起こしているようです。

そういえばトム・クルーズ主演の次の映画も、デジャヴっぽいテーマといえなくもないです。

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