石井ゆかり、鏡リュウジ著『星占いのしくみ 運勢の「いい」「悪い」はどうやって決まるのか?』平凡社、2009年

読んだ。

占星術のことはナンにも知らないので、気になったところだけ付箋を貼ってみた。




星占いに登場する10個の天体は、神々の名前で呼ばれていて、それぞれ個性というか、意味合いがあるのだって。

:感情、子どものころの環境、母親や妻、女性性
太陽:意思、父、夫、基本的な生き方の土台
水星:言葉、知性、思考回路
金星:好き嫌い、恋愛傾向、趣味、得意分野、価値観、金銭
火星:意欲、情熱、攻撃性
木星:理想、財、価値観
土星:否定、制限、時間、権威
天王星:変化、革命、流行
海王星:夢、芸術、無意識、目に見えないもの
冥王星:隠された欲求、再生

を表しているらしい(適当に省略)。

プラネット=惑星という言葉は、ギリシャ語で「放浪者」を意味していて、北斗七星や白鳥座のような形を変えない恒星のあいだを行ったり来たりすることに由来している。

これらの星の位置を示した図がホロスコープなんだって。

ホロスコープとかアスペクトとか、なんとかかんとかいろいろ説明されていたけど、ぱらぱらと読んでみてどうも自分の関心はそのあたりにはなさそうだと思った(ややこしそうだし、めんどうそうだし)。

個人的には、第4章の「星占いの意味」というあたりが面白かった。

Venus of Laussel in Bordeaux museum

「いったい、星占いは、いつ、どのようにして生まれたのでしょうか」

との問いに対して、取り上げられているのが、「ローセルのヴィーナス」という新石器時代の壁画だった。

ふくよかな(垂乳根の)女性が、三日月形の牛の角のようなものを手に持っている。
そこには13の線が刻まれているという。
この壁画の女性は、おしりや乳房が強調されていることから、豊穣を祈って掘られた女神像だと考えられている。

13という数は、1年に月が公転する回数で、この女神が持っている角は、どうやら月のイメージともつながっているらしい。

占星術では、月は、「養育、母なるもの、女性、豊穣、乳房」を象徴しているという。

この女神の壁画は、占いの源流でもあるし、あるいは信仰や呪術、古代の天文学や暦の知識といったものを表していると考えられる。
その頃は、天文学の知識も呪術も占いも、渾然一体としていたのだろう。

続いて、象徴的思考の原理として「類似」が取り上げられていた。
形が似ていたり、期間が一致したり、タイミングが噛み合ったりするとき、人はそこに、無意識のうちに「つながり」を見いだします。類似しているものや接しているものをネットワーク化して意味づけし、そこから世界の解釈が生まれるわけです。似ているものは、同じ世界のものである。だから、似ているものは、同じ力を持っている。これが、人間の原初的世界観の、大前提です。p.129
雨乞いのために地面に水をまくとか、雷の音をまねて太鼓を叩くといったような、模倣によって目的を達成しようとする呪術もまた、類似の原理に基づいている。
臨床心理学で言えば、バウムテストで、根っこがしっかりしているとか、枝がのびのびしているとか縮こまっているといったことから描き手の安定感や、環境との関わり方を解釈しようとするのもまた、類似の原理によるものだろう(たぶん)。

16世紀末までの西欧文化においては、類似が地を構築する重要な役割を演じてきたというミシェル・フーコーの言葉も引用されていた。
テキストの釈義や解釈の大半を方向付けていたのも類似なら、象徴のはたらきを組織化し、目に見える物、目に見えぬ物の認識を可能にし、それらを消灯する技術の指針となっていたのもやはり類似である。(中略)大地は空を移し、人の顔が星に反映し、草はその茎の中に人間に役立つ秘密を宿していた。(『言葉と物』新潮社)
だからこそ、赤い火星は炎と類似していて、炎の熱さは人間の情熱や怒り、戦いと関連しているとみなされる。だから火星は、戦いや火、攻撃性、男性性といったものの象徴になる。

「占い」もまた、人間の心が潜在的に持っている「類似の認識」から発生している。星が表す天界と、地上の類似を見つけて、星の世界の秩序になぞらえて世界を捉えようとする試みが「占星術」ということになる。

「心理占星術」や、占星術とユング心理学の関連についての考察が興味深かった。