『スタンフォード監獄実験』再び映画化、3作のトレイラーを見比べてみる
心理学史上もっとも有名な実験の一つである「スタンフォード監獄実験」が再び映画化された。三作のトレイラーを見比べて、「悪の心理学」を学ぶ。被験者へのその後の影響は?
ジンバルドーはよりリアルな状況で実験を行なうために、パトカーを用いて囚人を逮捕して指紋を採取し、脱衣させてシラミ駆除剤まで散布したという。そして、番号のついたスモックを着用させた。囚人役はこれ以降、名前ではなく番号で呼ばれることになる。足首には鎖まで巻かれていた。
看守役は警棒を持ち、表情が読まれないようにサングラスを着用した。
時間が経過すると、ジンバルドーが期待したように、看守役はより看守らしく、囚人役はより囚人らしくふるまうようになっていった。看守役は自ら囚人役に罰則を与えはじめ、反抗的な囚人を独房に監禁したり、バケツへの排便を強要するようになった。
これはかなわないと囚人役のひとりが実験の中止を求めたが、ジンバルドーは実験を続行した。精神的に錯乱する囚人が出たり、看守が囚人に暴力をふるうようなことまで起こってきたため、経過を目撃した牧師が家族に連絡し、弁護士を通じて実験の中止が要求された。当初2週間の予定だった実験は6日間で中止されたという。
ジンバルドー自身が、実験がつくり出した異様な雰囲気に飲み込まれてしまい、冷静に状況を判断することができなかったのだと後に語っている。
この実験は、人間の良心や道徳心というものが、状況によって容易く変質してしまうということを証明したという意味で、人々に大きな衝撃を与えた。
今回で、たぶん3度目の映画化だ。
The Stanford Prison Experiment Trailer 1 (2015) Ezra Miller Thriller Movie HD [Official Trailer]
公式サイト
ついでにこれまでの2作のトレイラーも観てみよう。
一つ目は、『es[エス]』(原題は、"Das Experiment")。『エス』というのは日本語のタイトルだが、これは精神分析用語で、無意識下の欲求や本能的エネルギーを表す言葉だ。
続いては、2010年にリメイクされた『The Experiment』。
映画公開に伴って、特集記事などがちらほら目に入ってくる。
The Stanford Prison Experiment A Closer Look at Zimbardo's Infamous Prison Study
こちらには、実験から40年経ってのふりかえりが。
2011年に「Stanford Alumni Magazine」がスタンフォード監獄実験の40周年特集を組んだそうで、ジンバルドーや、実験への参加者へのインタビューが行なわれた。
囚人役として参加していたリチャード・ヤッコさんは、現在、公立校の教師をしている。彼は実験についてこのような洞察を述べた。
「こういう話は昔のことだろう」と思われるかもしれない。
けれども、同じようなことは現代でも意外と身近なところで行なわれている。
次の記事を参照してほしい。
服従から感染へ:Facebookの感情操作実験と「スタンフォード監獄実験」「ミルグラムの服従実験」
スタンフォード監獄実験
「スタンフォード監獄実験」とは、スタンフォード大学で1971年にフィリップ・ジンバルドーの指揮のもとに行なわれた心理学実験である。普通の人々が、ある役割を与えられると、それに合わせて行動も変化するということを証明しようとして実施された。スタンフォード大学の地下実験室が監獄に改造され、新聞広告等で21人の被験者が集められた。そして、11人を看守役に、10人を受刑者役に分け、2週間に渡って、それぞれの役割を演じてもらおうという計画だった。実験が始まると、ジンバルドーが当初想定していたこと以上のことが起こったのだった。いったい何が起こったのだろう?ジンバルドーはよりリアルな状況で実験を行なうために、パトカーを用いて囚人を逮捕して指紋を採取し、脱衣させてシラミ駆除剤まで散布したという。そして、番号のついたスモックを着用させた。囚人役はこれ以降、名前ではなく番号で呼ばれることになる。足首には鎖まで巻かれていた。
看守役は警棒を持ち、表情が読まれないようにサングラスを着用した。
時間が経過すると、ジンバルドーが期待したように、看守役はより看守らしく、囚人役はより囚人らしくふるまうようになっていった。看守役は自ら囚人役に罰則を与えはじめ、反抗的な囚人を独房に監禁したり、バケツへの排便を強要するようになった。
これはかなわないと囚人役のひとりが実験の中止を求めたが、ジンバルドーは実験を続行した。精神的に錯乱する囚人が出たり、看守が囚人に暴力をふるうようなことまで起こってきたため、経過を目撃した牧師が家族に連絡し、弁護士を通じて実験の中止が要求された。当初2週間の予定だった実験は6日間で中止されたという。
ジンバルドー自身が、実験がつくり出した異様な雰囲気に飲み込まれてしまい、冷静に状況を判断することができなかったのだと後に語っている。
この実験は、人間の良心や道徳心というものが、状況によって容易く変質してしまうということを証明したという意味で、人々に大きな衝撃を与えた。
映画になった心理学実験
これまで『es[エス]』 (2001)、『エクスペリメント』(2010)などの映画が製作されている。後者は、esのリメイク版だったと思う。今回で、たぶん3度目の映画化だ。
The Stanford Prison Experiment Trailer 1 (2015) Ezra Miller Thriller Movie HD [Official Trailer]
公式サイト
ついでにこれまでの2作のトレイラーも観てみよう。
一つ目は、『es[エス]』(原題は、"Das Experiment")。『エス』というのは日本語のタイトルだが、これは精神分析用語で、無意識下の欲求や本能的エネルギーを表す言葉だ。
続いては、2010年にリメイクされた『The Experiment』。
ジンバルドーと悪の心理学
次の動画はTEDでジンバルドー自身がスタンフォード監獄実験と「ルシファー効果」と彼が名づけた現象について語っている。「悪の心理学」というタイトル。イラクのアブグレイブ刑務所で行われていたという虐待などにも触れられている。スタンフォード監獄実験:40年後
追記。映画公開に伴って、特集記事などがちらほら目に入ってくる。
The Stanford Prison Experiment A Closer Look at Zimbardo's Infamous Prison Study
こちらには、実験から40年経ってのふりかえりが。
2011年に「Stanford Alumni Magazine」がスタンフォード監獄実験の40周年特集を組んだそうで、ジンバルドーや、実験への参加者へのインタビューが行なわれた。
囚人役として参加していたリチャード・ヤッコさんは、現在、公立校の教師をしている。彼は実験についてこのような洞察を述べた。
この実験で興味深いと思うのは、もし社会があなたに何かの役割を割り振ったとしたら、その役割性格を当たり前のものと思い込むのかどうかってことなんだ。私はオークランド市内の高校で教えている。子どもたちはこのような実験に行って恐ろしい出来事を見る必要なんてない。けれど、同僚や私をがっかりさせるのは、せっかく子どもたちにたくさんの素晴らしい機会があるのに、私たちがサポートしているのに、なぜ彼らはそれを利用しないんだろうってことだ。どうして学校を中退するんだろう? 準備もせずに学校に来るんだろう? 監獄実験がその理由を示してくれていると思う。彼らは、社会によって与えられた役割に落っこちてしまったんだ。
スタンフォード監獄実験に参加したことは、私が生徒たちと共有できることだ。この実験は私が10代のころの人生の中の一週間にすぎないけれど、今でもここにある。40年経った今でも、この実験は社会に十分なインパクトを与える何かを持っているし、興味深い物だ。人生を決めるような決定的な瞬間になるようなことに踏み込もうとしているってことは、そのときには決して分からないものなんだ。
「こういう話は昔のことだろう」と思われるかもしれない。
けれども、同じようなことは現代でも意外と身近なところで行なわれている。
次の記事を参照してほしい。
服従から感染へ:Facebookの感情操作実験と「スタンフォード監獄実験」「ミルグラムの服従実験」
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