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過敏性腸症候群(IBS)とトラウマー腸と脳の深い関係

英語の手習いを兼ねて、海外の臨床心理学・精神医学関連記事を読んでいます。 Gut-Brain Connection Shown in IBS Patients with Childhood Trauma |PsychCentral 「小児期のトラウマを持つ過敏性腸症候群(IBS)患者に見られる内臓−脳の関係」 過敏性腸症候群( irritable bowel syndrome :IBS )の患者の腸内細菌と脳の感覚処理をする部位が双方向に関連し合っていることが明らかになったという研究の紹介記事です。 ええと、脳で苦しみを感じるサインは、腸内細菌の構成内容に影響を与えて、その結果、腸の化学的な作用が脳の構造にインパクトを与えると。 特に、過敏性腸症候群において、人生初期のトラウマ体験が、腸内細菌の構成内容の変化と脳の構造的機能的変化に関連していることが判明したそうです。 つまり、子供時代の心的外傷体験が腸内細菌の状態や脳に影響を与えているということでしょうか。 腸内細菌の変化が脳の感覚処理の部位にフィードバックされ、腸刺激への感受性を変えてしまう、つまり過敏性腸症候群を導いてしまうということが示唆されています。 調査対象となった過敏性腸症候群の患者たちは、腸内細菌の状態が健康な人と変わらない群と、異なる群に分類することができました。 後者の方が、より人生初期のトラウマ体験を持っていて、過敏性腸症候群の症状も長期間に渡っていることが明らかになりました。また両群では脳の構造も異なっていたとのこと。

長時間暴露療法VSクライエント中心療法:心的外傷後ストレス障害の思春期患者に対する治療同盟

PTSDの早期介入の効果ー長時間暴露療法と認知療法

心的外傷後成長と心的外傷後ストレス、その違いはどこで生じるか?

恐怖を克服するための戦術的呼吸と事後報告会

グロスマンとクリステンセンによる『 「戦争」の心理学:人間における戦闘のメカニズム 』から、「戦術的呼吸法と事後報告会」に関する覚書。 「戦術的呼吸法、事後報告会のメカニズム―記憶と感情を切り離す」という章(第二十一章)。 本書で何度も言及されている「戦術的呼吸法(Tactical breathing)」と、銃撃戦などの高度なストレス状況の後で行われる「事後報告会」について書かれている。 まず、戦闘(に限らず高いストレス状況)が終わった後の生理的反応について説明される。 戦闘後の生理的反応 直後に見られる反応 身体の震え、発汗、寒気、吐き気、過呼吸、めまい、のぞの渇き、強い尿意、下痢、胃の不調、神経過敏など その夜 睡眠障害や悪夢 その後、数日間 何度も思い出す、ああすればよかったとくよくよする、間違ったことをしたように感じて自信を失う、怒り、悲しみ、無力感、不安、疲労、自意識過剰や妄想、気分の高揚と罪悪感、無感覚や他人とのあいだに距離を感じること、注意力や記憶力が損なわれる こうした症状の一部、あるいは全部が表れることもあるし、表れないこともある。いずれも、まったく正常な反応である。 事後報告会 たぶん、Debriefingが原語。 「危機的事件後の健忘」について言及されている。 集団で、事後報告会をすることで、「記憶の再構築」が起こる。ほかの参加者からの情報で、自分の記憶を作り直したり、足りない部分を埋める。恐ろしい事件の後で、正常な生活を取り戻すことを助けてくれる。 苦しみの共有は苦しみの割り算であり、人は抱え込んだ秘密のぶんだけ病むのである。事後報告会は、互いに助け合ってトラウマ的事件を乗り越えるために人々が集まり、秘密を打ち明け、苦しみを共有するチャンスだ。p.528 事後報告会を行う目的は、記憶と感情を切り離し、別々に分けることで、その事件を思い出しても交感神経系の興奮が起きないようにすることだ。 この、ディブリーフィングという手法は、日本には阪神・淡路大震災の後、海外から支援に訪れた精神科医やサイコロジストによって導入された。ところがその後、ディブリーフィングの有効性に疑問を示す研究結果がいくつも示されている。 災害や事件の後に、心理的なディブリーフィングを行なうことで、かえって...

『「戦争」の心理学:人間における戦闘のメカニズム』(デーヴ・グロスマン&ローレン・W・クリステンセン、二見書房)

『 「戦争」の心理学:人間における戦闘のメカニズム 』(デーヴ・グロスマン&ローレン・W・クリステンセン著、安原和見訳、二見書房、二〇〇八年) 読了。 マッチョな本だと思う。 訳者あとがきにも記されているように、グロスマンの前著『戦争における「人殺し」の心理学』では、「兵士は(意外と)人を殺せない」ということがテーマになっていた。 第二次世界大戦時には、わずか15〜20%の兵士しか、敵に向かって発砲していなかったのである。 それくらい、人は本来、他人を攻撃することをためらう生きものなのだ。 戦争を指揮している偉い人はそれでは困るので、なんとかして発砲率を上げようとした。 行動主義の心理学などを応用した訓練が行なわれた結果、ベトナムでは発砲率は90%を超えるまでとなった。 「よかった、これで我が軍の兵士たちは勇敢に戦うことができる」 と政治家や軍の将校は思ったかもしれない。 けれども、発砲率の上昇(つまり、兵士がより多くの敵を殺せるようになること)は、深刻な副作用をもたらし、兵士の(PTSDをはじめとした)精神的な失調が増えることとなった。 第二次世界大戦と朝鮮戦争では、戦闘によって命を落とした兵士よりも、精神的外傷のために前線を脱落した兵士の方が多かった。第二次世界大戦でも、50万人を超える兵士が精神衰弱のために脱落したといわれている。 戦闘が昼も夜も続く状況に何ヶ月もさらされるというのは、20世紀に特有の現象で(それまでは夜戦はめったになかった)、そのために精神的なダメージが大きくなったのだという。たとえば、ノルマンディ上陸作戦では「後方」というものが存在せず、絶え間ない戦闘が2ヶ月間続いた。戦闘が60日〜90日昼夜続くと、兵士の98%がメンタルに壊れてしまうのだという。 グロスマンの関心は「人を殺しても精神を病まない兵士を育てるにはどうしたらいいか」というところに向く。 本書では、まず、戦闘という極度のストレス状態で、人間の心と身体にどんな反応が生じるのかということが詳しく論じられている。 生理的覚醒・興奮の度合いは、心拍数の増加や運動能力の低下などと関連して、「白の状態」「黄の状態」「赤の状態」「灰の状態」「黒の状態」と名づけられている。 心拍数が1分間に115回〜145回になる「赤の状態」は...

心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療にマインドフルネスは効果があるのか? 

心的外傷後ストレス障害の症状へのマインドフルネスに基づいた治療的介入の研究概観:システマティック・レビュー An Overview of the Research on Mindfulness-Based Interventions for Treating Symptoms of Posttraumatic Stress Disorder: A Systematic Review Kirsty Banks, Emily Newman and Jannat Saleem Article first published online: 20 JUL 2015, Journal of Clinical Psychology

『PTSDとトラウマの心理療法-心身統合アプローチの理論と実践』(バベット・ロスチャイルド)

バベット・ロスチャイルド『 PTSDとトラウマの心理療法-心身統合アプローチの理論と実践 』久保隆司訳、創元社、2009年 を読んだ。絶版らしいのはもったいないので、ぜひ再販してほしい。 PTSD(外傷後ストレス障害)やトラウマと呼ばれる症状が、心因性だけではなく身体の症状ももつ病気であることは、現場の臨床家にはよく知られている事実である。しかしこれまで、伝統的な言葉による心理療法と身体に働きかける心理療法の二つを統合するようなアプローチは、ほとんど紹介されてこなかった。本書は、そうした心身両面からのアプローチと、さらに理論と臨床実践を巧みに結びつけることで、トラウマを抱えるクライエントを援助するためのヒントを数多く提供する。 伝統的な心理療法は、Talking cure(お話療法)と呼ばれていたことからもわかるように、言語化することや知ることに重点が置かれていた。しかし、トラウマに関連する症状は、なかなか言語化するのが難しいばかりか、言葉にしようとするとフラッシュバックの引き金となって、トラウマの再体験につながってしまうことさえある。 トラウマやPTSDに関連する症状は、大きく次の3つに分けることができる。 (1)多様な感覚器官における出来事の再体験(flashback) (2)トラウマを思い出させるものの回避 (3)自律神経系における慢性的な過覚醒状態 (1)と(2)は、身体と深く結びついた症状だといえる。トラウマは心理生理的な体験であり、「増大した覚醒(arousal)」が持続するのがその症状の中心にある。心理的な支援においては、生理的なレベルの過覚醒を抑えつつ、感覚表現が統合される必要がある。 トラウマを抱えたクライエントにとって、これらの身体的感覚がまさに制御できない非常に強い感情を生み出している混乱の核であるとするならば、私たちの療法は、クライエントが自分自身の身体から逃げ出すことなくそこに留まり、自らの身体感覚を理解できるよう手助けするものでなければなりません。べセル・ヴァンダーコーク 未解決のトラウマは、自律神経系の過覚醒によって心身に大きな圧力がかかった状態に例えられる。蒸気でいっぱいの圧力釜のようなものだ。下手に開けると爆発してしまう。少しずつ、空気を抜いて圧力を下げていかなくてはいけない。そのために重要な...

PTSDは加齢を早める

恐怖で白髪になる? 子どもの頃に、エドガー・アラン・ポーの『メエルシュトレエムに呑まれて』(1841年)という小説を読んだことがある。漁師の兄弟が、海に出てメエルシュトレエムと呼ばれている巨大な渦巻きに巻き込まれるというストーリーだった。 大渦にとれられた船はぐるぐると回転しながらしだいに渦の真ん中に引き込まれていく。死を覚悟した漁師だが、よくよく渦とのみこまれていくたくさんのものを観察していると、次のようなことに気づいた。体積が大きいものや球状のものは早く渦の中心に落下するが、円柱状のものは飲み込まれるのに時間がかかるようなのだ。 彼は兄にそれを伝えて脱出しようとするが、兄は恐怖で錯乱しており、船を離れることはできなかった。漁師は自分を円柱状の樽にしばりつけて海に飛び込む。船はすぐに飲み込まれてしまったが、樽と漁師は飲み込まれずに、渦が消えるまでもちこたえることができた。 漁師はこのように言う。「恐ろしさに髪は真っ白になり、まるで老人のように変わってしまって、助けてくれた漁師たちはだれも私だとわからなかった」(ストーリーと挿絵は Wikipedia より)。 この小説を読んだときに、恐怖によって髪が真っ白になったり、皺だらけになるなんてことがあるのかと不思議に思った記憶がある。 PTSDが加齢を速める PTSD Tied to Accelerated Aging |Psyche Central という記事では、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が、加齢を速めているという研究が紹介されていた。 6つの研究で明らかになったのは、PTSDの人々は白血球のテロメア(telomere)の長さが減少しているということだという。テロメアとは、染色体の末端部にある細胞分裂に関わる構造で、細胞分裂を繰り返すと短くなる。だから、細胞の寿命に関係してるのだそう。 Telomere また、C反応性蛋白(C-reactive protein)と腫瘍壊死因子 α (tumor necrosis factor alpha)のような炎症誘発マーカーの増大とPTSDが関連していることも研究で明らかになったという。 よく分からない用語が出てきたので調べてみる。C反応性蛋白というのは、体内で炎症反応や組織の破壊が起きているときに血中に現れるタンパ...

児童虐待の時効見直し=性的被害対象、成人時まで停止

児童虐待の時効見直し=性的被害対象、成人時まで停止 というニュースを読んだ。虐待サバイバーの訴訟が、時効により却下されたことなどへの異議を受けてのことだと思う。  厚生労働省によると、2013年度に全国の児童相談所に寄せられた相談件数のうち、性的虐待は全体の2.1%にとどまる。性的虐待の実態に詳しい寺町東子弁護士によると、幼い被害者が虐待の意味を理解するのは早くて思春期以降。加害者が親や兄弟、親族の場合、相談相手もいないことから、表面化していない虐待もあるという。  さらに成人後、虐待を原因とする心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを発症しても、既に民事で損害賠償請求権が消滅する除斥期間(20年)、刑事で公訴時効(強制わいせつ罪7年)の期間がそれぞれ経過していれば、被害者が「泣き寝入り」するしかないケースもある。 幼少期〜児童期の虐待体験は、子どもの心と脳に大きな影響を与える。青年や成人になってからも、精神的な問題やパーソナリティ、対人関係の問題などの要因となりうる。  これまでの研究では、子ども時代の虐待やトラウマは、青年や成人になってからも、抑うつや不安障害、非行や犯罪などの行動化を引き起こすリスクファクターであることが示唆されている。 多くの被虐待児は大人になれば逃れられ、自由になれるという希望にしがみついている。しかし強要的コントロールという環境の中で形成された人格は成人の生活によく適応できない。児童虐待経験者は基本的信頼、自立およびイニシアティヴに基本的な問題を積み残したままである。児童虐待経験者は自己管理、認知と記憶、自己規定および安定した人間関係を形成する能力に大きな欠陥があるというハンディキャップを負って、自立と親密関係とを確立するという成人期初期の仕事に近づく。児童虐待経験者は依然その児童期に囚われている人である。新しい人生を築こうとすると外傷に再会してしまう。 ジュディス・ハーマン『 心的外傷と回復 』みすず書房、1999年、172頁 3歳から8歳まで叔父から受けた性的虐待。札幌高裁は「魂の殺人」の主張を容れ被害者の請求、大半を認める という去年の記事では、1994年9月の判決について報告されている。 地裁判決が民法の形式的な解釈に留まっていた一方で、高裁判決は真に保護すべきもの、つまり被害者の人権を考慮し、...