創造性と精神疾患は遺伝的にリンクしている?

6/17/2015

精神医学

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天才と狂気

イタリアの精神科医チェーザレ・ロンブローゾ(1835-1909)が『天才と狂気(Genio e follia)』という本で天賦の才能と精神疾患の関係を論じたのは、1864年のことだった。ロンブローゾは、処刑された囚人の遺体を解剖して頭蓋骨などを測定し、「犯罪者には固有の身体的特徴がある」「犯罪者は、原始人の遺伝的特徴が再現された、いわゆる先祖返りだ」などと主張した。骨相学と同じく、現代では妥当性はないと見なされている。しかし「天才と狂気」になんとなく関係がありそうだという印象には、ロンブローゾの研究が影響を与えていると思われる。「犯罪人類学の父」チェーザレ・ロンブローゾとは何者か?


もちろん、ロンブローゾ以前にも同じような発想はあっただろう。古代ギリシャでは、狂気は神々からのメッセージでもあった。

創造性と精神疾患の間の遺伝的なリンク

実際のところはどうなのだろう?
New study claims to find genetic link between creativity and mental illness|theguardian
「創造性と精神疾患の間の遺伝的なリンクが発見されたという新しい研究」という記事では、創造的な人は双極性障害および統合失調症のリスクを高める遺伝子を25%多くもっていると紹介されている(ただし根拠に乏しいとの批判もある)。

分裂病親和者


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こういう話を聞くと、昔読んだ中井久夫の『分裂病と人類』という本を思い出した。中井は、分裂病親和者と執着気質者という人類の二つのタイプを仮定し、それぞれが社会にどのような役回りを果たしたかを論じていた(分裂病は今では「統合失調症」と呼ばれているが、本書に従ってここでは以前の名称を使う)。

分裂病親和者は、わずかな兆候にも敏感に反応する先取り的なかまえをもった人だ。五感から得られるわずかな兆候を察知する能力で、狩猟社会において獲物や危険な動物の気配を察知することに役立ったという。敏感なだけに、環境の変化に俊敏に対応することができるというわけだ。

中井と同じく、狩猟採集民の兆候的な知の在り方に注目したイタリアの歴史家、カルロ・ギンズブルグはこんなふうに書いていた。
人は何千年もの間、狩人だった。そしていくたびも獲物を追跡するうちに、泥に刻まれた足跡や、折れた枝、糞の散らばりぐあい、一房の体毛、からまりあった羽毛、かすかに残る臭いなどから、獲物の姿や動きを推測することを学んだ。人は絹糸のように微細な痕跡を嗅ぎつけ、記録し、解釈し、分類することを覚えた。人は密林のしげみや、罠でいっぱいの林間の空き地で、こうした複雑な精神作業を一瞬のうちに行えるようになったのである。『神話・寓意・徴候』、竹山博英訳、せりか書房、1988年、p.189
執着気質型の人々は、農耕民の感覚に近い。狩猟採集民の時間間隔は、現在中心的だが、農耕社会の時間は過去から未来へと流れている。一年後の見通しを立てて、こつこつと確実に仕事をすることが農業には必要だろう。狩猟採集民が獲物を気前よく分配するのに対して、農耕民は作物を未来のために貯蔵する。

前者は変化や先取といった特徴を持ち、後者は維持、統合といった性質を担っている。

といったところまで書いて、後、なにか思いついたら書き足そう。

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