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『解明される宗教–進化論的アプローチ』

解明される宗教


ダニエル・C・デネットの『解明される宗教–進化論的アプローチ』を図書館で手に取ってみた。
宗教がどのように発展してきたかを論じている本らしい。ななめ読みでいくつかメモを取ったので、忘れないうちに書き記しておく。

原題は、
"Breaking the Spell: Religion as a Natural Phenomenon"
(呪文を破る:自然現象としての宗教)

デネットは神が実在しているかどうかは問わず、宗教を自然現象としてとらえ、科学のまな板のうえにのせようと試みている。それによって宗教という呪文を破ろう、というのである(たぶん)。
世界中で多くの人々がなんらかの宗教を信じていて、ほとんどの人が自分や周りの人たちの幸せを願っているし、世界が良くなることを期待しているにもかかわらず、宗教的な理由でテロが起こるのはなぜだろうか(オウム真理教の事件や、911が取り上げられている)。


私たちは月に顔を、雲に軍隊を発見する。もし経験や反省によって訂正されないなら、自然の性向から、私たちを傷つけたり喜ばしたりするすべてのものに悪意と善意を帰する。デヴィッド・ヒューム『宗教の自然史』
というヒュームの言葉が引用されていた。相貌的知覚やアニミズム的感性が、宗教の根源にあるということだ。ジャスティン・バレットという人がHADDと名付けた「行為主体を過敏に探知する装置」が、ヒトの場合、他の動物よりも進化しており、それによって目に見えない超自然的な存在をイメージすることができるようになったという。

行為主体を過敏に探知する装置

「行為主体を過敏に探知する装置」とは、
世界の中に存在する他の何ものかを
・世界についての一定の信念
・明確な欲求
・これらの信念と欲求を考慮して合理的なことをするという十分な常識とを備えた
行為主体
として取り扱う
ということを表している。心理学でいう「心の理論」を連想するが、デネットさんは心の理論という用語を使うことには慎重な態度を取っているようだ。
神々を人間が信じることの根底には、敏感に反応する本能がある。それは、動く複雑なものには必ず―確信や欲求や他の精神状態といった―内的作動因(agency)があるとみなす傾向である。
動きがあればどこにでも行為主体(agency)を探すという私たちの過敏な傾向性によって生み出された偽りの警告が、宗教という真珠が育つための[核になる]刺激物である。
物理的な動きだけでなく、私たちの人生にしばしば起こる不思議な出来事や偶然にも、私たちは行為主体を探してしまう。
「こんな偶然が起こるなんて、いったい誰のはからいだろう」
というわけだ。

ハイダーらの実験

このあたりを読んで、フリッツ・ハイダーらによって行われた社会心理学の実験を連想した。

Experimental study of apparent behavior. Fritz Heider & Marianne Simmel. 1944



Fritz Heider and Marianne Simmel
The American Journal of Psychology
Vol. 57, No. 2 (Apr., 1944), pp. 243-259
ハイダーは、ゲシュタルト学派の心理学者で、社会心理学にゲシュタルト心理学の視点を持ち込んだことや人間関係の「バランス理論」などで知られている。

この動画を被験者に見せて、そのあとで何を見たかを描写してもらうと、ほとんどの人が丸や三角といった図形を、あたかも人間であるかのように表現する。それぞれの図形が、意図や欲求、感情などをもって行動していると捉えるのである。

たとえば、大きな三角はジャイアンみたいないじめっこに見えたかもしれない。

小さな三角と丸はカップルなのか、あるいは丸を助けようとしているのが小さな三角なのか。



次の動画は、デネットが
Breaking the Spell - Religion as a Natural Phenomenon
というテーマで講演をしているところ。

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