脳細胞を光で刺激、うつ改善=「楽しい記憶」再現、マウスで―理研

というニュースを読んだ。理研の利根川進博士の研究とのこと。17日付の英科学誌ネイチャーに論文が掲載されたという。
うつ状態にしたマウスの脳細胞を光で刺激して「楽しかった記憶」を人為的によみがえらせ、うつを改善する実験に、ノーベル医学生理学賞受賞者で、理化学研究所の利根川進博士らの研究チームが成功した。
ネズミの「トータルリコール」みたいな話です。オスとメスを一緒に過ごさせて「楽しい記憶」を与えて、脳の海馬という部位に特定の光で反応するたんぱく質を組み込んだらしい。その後、ストレスを与えて「うつ状態」にすると、マウスの意欲や努力などは減退する。しかし、「楽しい記憶」を与えたときに反応した神経細胞群に光を当てて活性化させると、意欲や努力が戻ったという実験。
by Kittychan2005
光で記憶を書き換える -「嫌な出来事の記憶」と「楽しい出来事の記憶」をスイッチさせることに成功-

という理研のプレスリリースを読んでみた(2014年の)。ポイントは、

  • 「嫌な出来事の記憶」「楽しい出来事の記憶」は海馬歯状回と扁桃体に保存される
  • 「嫌な出来事の記憶」を「楽しい出来事の記憶」に置き換えることができる
  •  海馬歯状回のシナプスの可塑性が記憶の書き換えに重要
ということだと。マウスを小部屋に入れて弱い電気ショックを与えると、「嫌な出来事の記憶」が生まれる。その際に活性化する海馬の神経細胞群に光感受性タンパク質でマーキングしておく。
この細胞群に光を照射すると、マウスは恐い記憶を思い出してすくむのだという。フラッシュバックのような体験をしているのかも。けれども、同じ光を当てながら、メスのマウス(かわいこちゃんに違いない)を部屋に入れて小一時間ほどいっしょに遊ばせてやると、今度は「楽しい出来事の記憶」が作られるんだという。

単に嫌な記憶が楽しい記憶に置き換えられたというのではなく、「この研究の最も重要な結論は、海馬から扁桃体への脳細胞のつながりの可塑性が、体験する出来事の記憶の情緒面の制御に重要な働きをしているということだ」とのこと。
馬から扁桃体への脳細胞のつながりの可塑性(外界からの刺激を受けて、柔軟かつ適応的に、機能や構造の変化を起こすこと)が、出来事の記憶の情緒面の生業に重要な働きをしていると考えられます。うつ病の患者には、嫌な出来事の記憶が蓄積し、楽しい出来事を思い出すことができないケースが見られますが、海馬と扁桃体のつながりの異常が1つの原因になっている可能性があります。今回の成果がうつ病患者の心理療法の開発につながることが期待されます。
その他のプレスリリースも後で読んでみよう。