スキップしてメイン コンテンツに移動

心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療にマインドフルネスは効果があるのか? 

心的外傷後ストレス障害の症状へのマインドフルネスに基づいた治療的介入の研究概観:システマティック・レビュー
An Overview of the Research on Mindfulness-Based Interventions for Treating Symptoms of Posttraumatic Stress Disorder: A Systematic Review

Kirsty Banks, Emily Newman and Jannat Saleem
Article first published online: 20 JUL 2015, Journal of Clinical Psychology




心的外傷後ストレス障害(PTSD)とマインドフルネスに基づいたアプローチ

アブストラクトだけ読んだ。心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療に、マインドフルネスに基づいたアプローチを用いた既存の研究を体系的に評価しようと試みているとのこと。第一の目的は、PTSD症状や関連する心理的障害にこのアプローチが効果があるかどうかということ。第二の目的は、このアプローチを行なったときの、(治療からの)脱落率と副作用、リソースの影響、そして長期的な効果について調べることだという。

Nickolai Kashirin

結論

さまざまなデータベースから、該当する論文を探し、基準に合致する12の研究が検討された。多くの研究が、方法論的な厳格さを欠いていたものの、大多数はPTSD症状の改善に肯定的な結果を示していた。特に、回避症状を減らすことに効果があったという。

今後、よりしっかりとデザインされた研究が必要となるだろうが、PTSD症状の治療にマインドフルネスに基づいたアプローチを使用することは有望だろうとのとりあえずの根拠は認められたといえる。

という結論。

あれ、脱落率や副作用については、アブストラクトには記されていなかった。行動記録や睡眠記録だって毎日つけることのできる人は少ないのに、日々瞑想を行なうというのはちょっとハードル高いので、ドロップアウト率はけっこう多いのではないかなと想像する。

【英単語】
attrition rate:脱落率、ドロップアウト率
adverse effects:副作用
resource implications:「リソースの影響」としてみたけど、なんて訳すんだろう。

*追記
Factors Associated with Attrition from Mindfulness-Based Cognitive Therapy in Patients with a History of Suicidal Depression
という論文(読んだのアブストラクトだけです)では、33人がマインドフルネスベイスド認知療法に取り組んだが10名がドロップアウトしたとのこと。そして、ドロップアウトしやすい人は、認知的反応性(cognitive reactivity:ネガティブな気分のときに活性化される情報処理バイアス、といった意味合いらしい。ネガティブ思考ってこと?)のレベルが高い、くよくよしたり、抑うつを反芻するといった傾向が見られたという。要するによりうつっぽい人の方がドロップアウトする割合も高いという実も蓋もない話だ。逆説的に、最後までクラスに残っていれば、この人たちは得るものも大きいのだって。

コメント

このブログの人気の投稿

果物に例える恋愛心理テスト「フルーツバスケット」で本音がわかる?

簡単な恋愛心理テスト「フルーツバスケット」 「フルーツバスケット」という簡単でおもしろい心理テストのことを聞きました。 「心理テスト」というよりは「心理ゲーム」と呼んだ方がいいですね。 こんなゲームです。 【問】 あなたの目の前に、フルーツバスケットがあります。バスケットには、リンゴ、バナナ、ぶどう、みかん、イチゴ、キウイが入っています。5種類のフルーツを、それぞれ身近な異性にあてはめてみてください。 リンゴ= バナナ= ぶどう= みかん= イチゴ= キウイ= さて、いかがでしょう? 何人かにあらかじめ聞いておくと、後で比べられて楽しいです。

数唱と語音整列の乖離は何を意味しているか?

WAISの数唱と語音整列について、この二つに乖離があったらどう解釈されるんだろうかと思って調べてみたメモ。どちらも作動記憶(ワーキングメモリー)に含まれる下位検査だが、いくらか性質が違う。両者の相関は、中程度くらいだったと思う。 数唱 vs 語音整列 Digit span versus letter number sequencing とある海外の掲示板(?)でのやりとり。 一方が他方よりも高得点だった場合、どんな風に説明できるかな? どっちも順番に配列することが含まれているし、ほとんどの人が順序を操作するために聴覚的記憶を使ってると思う。けど、4点以上の乖離(discrepancy)があった場合は? 実施したばかりのアセスメントを詳しく考えてみると、言葉の受容と表出が明らかに難しいケースだったけど、視空間スキルと処理速度はまったく問題なく保たれていた。-Miriam という問題提起に対するスレッドのようだ。 私も以前に何度か同じようなパターンに出会ったことがあって似たようなことを考えたことがあるけど、ぜんぜん専門外だったから。あなたももう考えてるだろうけど、語音整列はたぶんより複雑な課題だと思う。というのも、数唱のように単に数字を扱うんじゃなくって、(文字と数字という)二種類の情報を使ってそれを切り替えながら作業しなきゃいけないから。被験者が教示を理解して、すべてをすっかり頭に入れることができたという手応えはありましたか? これ(語音整列)を実行するにはいくつかの操作が必要だし、呈示されたものすべてを受け取るには言語受容スキルが特に障壁となるかもしれません。他の下位検査にもこの仮説が当てはまるならば意味をなさないかもしれませんが・・・もっと知識のある人ならいい意見が出せるかも。-Butterfly22 私も同じように考えていました。数唱よりも語音整列の方がいいスコアを示しているような同様のアセスメント事例がおかしいのはなんでかなって。-Miriam 数唱が高くて語音整列が低い場合は、並べ替えなどの操作が入ると難しいのかなと推測できるけど、逆の場合はなんだろう。 数唱は基本的にはワーキングメモリーのタスクだけど、語音整列は、上の人が言ってるみたいに、もっと複雑だ。より心的に柔軟でないといけないし、情報の保存/再生の能力だけでなくて...

イヤーワームになる曲トップ9、そして対処法(頭から離れない曲)

止まらないメロディーの正体とは?イヤーワーム現象を科学する 1. イヤーワームとは?耳に残る音楽の正体 頭の中で特定の曲が何度も繰り返される現象を「イヤーワーム」と呼びます(ディラン効果とも。ボブ・ディランの「風に吹かれて」もイヤーワームが生じやすい曲として知られています)。この言葉は、英語の「earworm(耳の虫)」に由来し、まるで耳に虫が入り込んで音楽を流しているかのような感覚にたとえられています。イヤーワームは、特に集中が必要な時や眠る前に起こりやすく、勉強中や仕事中に困った経験がある人も多いでしょう。 頭のなかである曲が延々と流れ続けて止まらなくなる現象を「イヤーワーム」と言います。 「耳の虫」という意味で、まるで耳に虫がもぐりこんで音楽を流しているみたいに体験されることからそう呼ばれています。 強迫性障害や統合失調症の症状として見られることもありますし、健康な人だってしばしば体験します。脳のバグみたいなもんでしょうか。勉強中や仕事中など、何かに集中しなくてはならないときに、イヤーワームが気になって仕方がないということもあります。受験生でイヤーワームに取り憑かれて困っているという人の話を聞いたことがあります。確かに困りますよね。 Psychologists Identify Key Characteristics Of Earworms 「心理学者たちが見つけたイヤーワームの本質的特徴」 という記事が、アメリカ心理学会のサイトに掲載されていました。 イヤーワームを生じさせやすい曲として、たとえばレディ・ガガのBad Romanceが挙げられていました。 2. イヤーワームが起こりやすい人とその原因 イヤーワームは健康な人にも頻繁に起こりますが、強迫性障害や統合失調症などの精神疾患と関連する場合もあります。脳が「バグ」を起こしたかのように、無意識にメロディーがリピートされてしまうのです。心理学的には、音楽の反復やリズムが脳に影響を及ぼし、メロディーが意識に残り続けることが指摘されています​ Hiroshima University Repository 。 3. 科学的に解明されたイヤーワームを引き起こす音楽の特徴 アメリカ心理学会の研究によると、イヤーワームを引き起こしやすい曲にはいくつかの共通点があります。それは以下の3...