『コミュニケイションのレッスン 聞く・話す・交渉する』(鴻上尚史、大和書房)を読んでいるところ。舞台演出家の立場から、コミュニケイションのスキルを向上させるためのヒントを教えてくれる。コミュニケーションじゃなくって、「コミュニケイション」と書いてあるのはなんでか気になるけれど、個人的には後者の方がなんとなく「ちょっと昔の街中の会話」を表しているような印象があって好ましい。

Rick&Brenda Beerhorst

「世間」と「社会」

興味深かったのは、「世間」と「社会」という二つの視点の区別だ。

「世間様に顔向けできない」なんてセリフは最近言わなくなったと思うけど、「みんなが持ってるから(僕もプレステ欲しい)」という子は今も多そうだ。「世間」と「社会」って、似たような言葉だけど、何が違うんだろう? それって、どんなふうにコミュニケイションに影響してるのかな。


「世間」とは、自分と利害や人間関係のある人たちとのつながりで、「社会」とは今もこれからも関係がないだろう人たちを指している。

欧米ではすべてが「社会」だが、日本人は「世間」と「社会」という二つのまったく違った世界を生きている、というのが著者の主張。

電車の中で平気で化粧をするのも、席をなかなかゆずらないのも、自分とは関係のない「社会」のことだからだ。日本人は、「世間」のつきあいは濃厚だが、「社会」とのつきあい方は得意ではないんだという。

日本的な「世間」は、もともとは村落共同体に由来しており、「年功序列」や「終身雇用」を重視する日本企業に受け継がれてきたのだが、現代の日本ではこの「世間」が中途半端に壊れてきている。だからといって「社会」とのつきあい方をちゃんと学んでいないので、コミュニケイションが難しいのだろう。

コミュニケイションの方法

コミュニケイションは「聞く」「話す」「交渉する」の3つから成り立っていて、聞き方、話し方、交渉の仕方についてそれぞれ具体的なコツが紹介されている。

ちゃんと「聞く」ためには、深くリラックスした身体であることが必要、という意見にはとても同意。重心を下げる、お腹(丹田)を相手に向ける、適度な距離を保つ、相手と呼吸を合わせる、といったコツが挙げられていた。

「うなづく」「繰り返す」「言いかえる」といったあたりは、カウンセリングのロールプレイ実習などでもよく行われますね。

シタシキナカニ衣食住

話題に困ったときや、話題を作る質問としては、「シタシキナカニ衣食住」を考えるといいという。
  •  は趣味。スポーツや映画、小説、テレビ番組など。
  •  は旅。最近どこに行ったか、どこに行きたいかなど。
  •  は仕事。どんなお仕事ですか。
  •  は気候。お天気の話ですね。
  • ナ は仲間、友達について。こんな面白いやつがいる、という話。
  •  は家族。両親や子供の話。
  • ニ はニュースの話。近頃のニュースについて。
  •  ファッションについて。
  •  昨日何食べたとか、好きな食べ物はとか。
  • 住 住んでる場所や家のことなど。昔住んでいた場所のことで盛り上がることってありますね。
「雑談が苦手」「何を話していいか分からない」という相談はよくあるので、「シタシキナカニ衣食住、です!」と言えると、説得力がありそうでいいかもしれないと思った。

後半はこれから読むところです。

より親密なコミュニケイションを試みるときには、
クリスマスに試してみよう。親密になるための36の質問
などをご参照ください。