数唱と語音整列の乖離は何を意味しているか?
WAISの数唱と語音整列について、この二つに乖離があったらどう解釈されるんだろうかと思って調べてみたメモ。どちらも作動記憶(ワーキングメモリー)に含まれる下位検査だが、いくらか性質が違う。両者の相関は、中程度くらいだったと思う。
とある海外の掲示板(?)でのやりとり。
レザックというのはこれのことでしょうか。 一時期書店に寄り道して立ち読みを試みたけど、途中で挫折した記憶がある。24,000円もするんだ。
Does the letter number sequencing task measure anything more than digit span?
「語音整列課題は、数唱以上の何かを測定しているのか?」
では、語音整列は、読字水準や順唱/逆唱、計算、視空間学習、記号探しの成績などと関連していると論じられている。
Measuring Working Memory With Digit Span and the Letter-Number Sequencing Subtests From the WAIS-IV: Too Low Manipulation Load and Risk for Underestimating Modality Effects
「WAIS-Ⅳの下位検査である数唱と語音整列から、ワーキングメモリーを測定する:負荷が低すぎることと、モダリティ効果の過小評価について」
という論文も見つけた。アブストラクトをちょっと見ただけ。
【関連本】
数唱 vs 語音整列
Digit span versus letter number sequencingとある海外の掲示板(?)でのやりとり。
一方が他方よりも高得点だった場合、どんな風に説明できるかな? どっちも順番に配列することが含まれているし、ほとんどの人が順序を操作するために聴覚的記憶を使ってると思う。けど、4点以上の乖離(discrepancy)があった場合は? 実施したばかりのアセスメントを詳しく考えてみると、言葉の受容と表出が明らかに難しいケースだったけど、視空間スキルと処理速度はまったく問題なく保たれていた。-Miriamという問題提起に対するスレッドのようだ。
私も以前に何度か同じようなパターンに出会ったことがあって似たようなことを考えたことがあるけど、ぜんぜん専門外だったから。あなたももう考えてるだろうけど、語音整列はたぶんより複雑な課題だと思う。というのも、数唱のように単に数字を扱うんじゃなくって、(文字と数字という)二種類の情報を使ってそれを切り替えながら作業しなきゃいけないから。被験者が教示を理解して、すべてをすっかり頭に入れることができたという手応えはありましたか? これ(語音整列)を実行するにはいくつかの操作が必要だし、呈示されたものすべてを受け取るには言語受容スキルが特に障壁となるかもしれません。他の下位検査にもこの仮説が当てはまるならば意味をなさないかもしれませんが・・・もっと知識のある人ならいい意見が出せるかも。-Butterfly22
私も同じように考えていました。数唱よりも語音整列の方がいいスコアを示しているような同様のアセスメント事例がおかしいのはなんでかなって。-Miriam数唱が高くて語音整列が低い場合は、並べ替えなどの操作が入ると難しいのかなと推測できるけど、逆の場合はなんだろう。
数唱は基本的にはワーキングメモリーのタスクだけど、語音整列は、上の人が言ってるみたいに、もっと複雑だ。より心的に柔軟でないといけないし、情報の保存/再生の能力だけでなくて、保存し、操作し、再生するという能力が必要だ。だからおそらく、言葉の受容/表出の困難が、より簡単な数唱課題(それはせいぜい数列を反対にするだけだ)の難しさを押し上げることはないだろう。けれども語音整列は余分に認知的な負荷をかけるので、難しいのはもっとはっきりしているんじゃないかな。逆唱の方が成績が悪かったんじゃない?(順唱よりももうちょっと心的操作が要求されるから) 家に帰ってからレザックを見てみようか?-Gilly
レザックというのはこれのことでしょうか。 一時期書店に寄り道して立ち読みを試みたけど、途中で挫折した記憶がある。24,000円もするんだ。
とても興味深いね。数唱よりも語音整列がいいというのはかなり珍しいことだ。Gillyが言ったみたいに、順唱と逆唱に乖離はあったのかな? もし逆唱の方がかなり低いということだったら、語音整列と比べて逆唱は逐語的な記憶の符号化(verbatim memory encoding)により強く頼っているということから何か言えるかもしれない。 概して、語音整列はより自由度が高くて、文字/数を想起するときに頭の中でシークエンスを再現することができる。一方、数唱は数を完全に思い出さなきゃいけない。最初っから正しい順番でアタマに入れなきゃ、どっかにいっちゃうってことだ。 今思いついたことなんで役に立つか分からないけど、前にもそんなことがあったけどちゃんと考えられなかった。さっきの上級の解釈本(レザック)は役に立つし、さっき書いたようなアイデアはこの本の記憶からだと思うんだけど、もうコピーもないのではっきりしない。-BenJMan語音整列の方が、多様なアプローチを取る自由度はあるかもしれない。逆に言えば、短い時間のあいだに「こんな風にこの課題に取り組もう」という戦略を見つけなきゃいけない。
私の経験では、みんな語音整列の方が得意な傾向があって、考えらえれてるほどには難しい課題ではないんじゃないかって疑い始めてるんだ。思い出してほしいんだ。語音整列で中止されるには3回の失敗が必要だけど、数唱は2回だけだ。この二つの下位検査の比較について私が考えたようなことは、評価点に変換するにあたっても、ある程度は反映されるだろう。それに多くの人が数唱で幻惑されたり、注意力疲労を起こしたりする。どんな順番で課題を呈示するか、実際、別の機会に(数唱と語音整列を)行なったらどうなるだろう?きっと語音整列は数唱と比べてずっと成績のばらつきが見られるだろう。経験的には、数唱の方がよりしっかりとワーキングメモリーを測定できると思うよ。個人的な観察にすぎないけどね。-The Coneそうなのか? たしかに語音整列の方がコンディションによって成績にバラツキありそうだけど。このあたり、テキストを読めば信頼性についてちゃんと書いてあるはずだから読んでおこう。
参考までに、Coneが言ったことを繰り返すね。一見したところひどい課題に見えるけど、語音整列は実際のところずっと「直球」の課題だ。実際に課せられているのは情報を操作する必要があるという課題で、そこでは情報をリハーサルしたりもっと効果的に符号化するチャンスがある(学部時代の講義を思い出してるんだけど・・・)。アルファベット(日本語では50音)と数字の順序規則は、すべてにきっちりとした「順序」を与えてくれる。さらには、「数字」だけっていうのは数学嫌いの人を不安がらせるしね・・・ちょっと考えてみただけだけどさ・・・-Lowri数字だけじゃない方が楽なんじゃない?っていう意見らしい。
語音整列ってひどくげんなりするよね。どんなのでも並べ替えられたらよし、みたいな感じで(いつも困るんだ)、本当に嫌い。-Gillyやっぱり語音整列はひどいよという見解。
もう言われてるけど、数唱で数字を読み上げられたときにパニックになる人はけっこういるよね。これってけっこうパフォーマンスに影響してる。もし最初に体験してたら、次にはもっと安心してうまくやれるかもしれない。 別のアイデアもある。衝動的な人のなかには要求や教示が増すほどうまくやる人もときどきいる。課題が簡単そうだと(私の言ったことを繰り返して、とか)衝動的になる人はけっこういる。課題がもっと難しいと感じられたら(たとえば、教示が多いとか、複雑そうに聞こえるとか)、もっと注意深く、落ちついて答える人もいるだろう。もちろんみんなに当てはまるわけじゃないと思うけど、言っておく意味はあるかなと思って。-katz云々、というやりとりがあった。なんか訳間違ってる気がするけれど(終わりの方ははしょりました)。
聴覚的短期記憶と実行機能
数唱課題のなかの「順唱」は純粋に聴覚的短期記憶を反映していて、「逆唱」と「算数」は、実行機能がより影響しているらしいと聞くと(*)、語音整列も実行機能よりなんだろうなと考えられる。Does the letter number sequencing task measure anything more than digit span?
「語音整列課題は、数唱以上の何かを測定しているのか?」
では、語音整列は、読字水準や順唱/逆唱、計算、視空間学習、記号探しの成績などと関連していると論じられている。
Measuring Working Memory With Digit Span and the Letter-Number Sequencing Subtests From the WAIS-IV: Too Low Manipulation Load and Risk for Underestimating Modality Effects
「WAIS-Ⅳの下位検査である数唱と語音整列から、ワーキングメモリーを測定する:負荷が低すぎることと、モダリティ効果の過小評価について」
という論文も見つけた。アブストラクトをちょっと見ただけ。
【関連本】
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