上手なメンタルクリニックの選び方を『うつの8割に薬は無意味 』 から紹介。

公開日: 7/21/2015 うつ病 精神医学

うつの8割に薬は無意味   (井原裕、朝日新書、2015年)を読んだ。最近よくある精神医療批判本かなと思ったが、以前に読んだ、井原先生の『生活習慣病としてのうつ病』がとてもよかったという記憶があるので手に取って購入した。


うつ病の拡大と向精神薬への批判

近年のうつ病概念の拡大によって、「悩める健康人」までが病気として医療の対象となっていったが、喧伝されているほどには抗うつ薬は効果がない。うつで休職中にハワイでサーフィンをするような「新型うつ」の増加の背景には、精神科医が安易に「3ヶ月の休職」といった診断書を出すことや、製薬会社の「心の風邪」などのキャンペーン、患者の「アブセンティイズム(サボりや怠けのこと)」なども影響しているだろうとのこと。
2012年には、日本うつ病学会もうつの大半を占めるという軽症うつ病については、「プラセボに対し確実に有効性を示し得る治療薬はほとんど存在しない」と宣言したという。




うつ病学会のガイドライン(pdf)を読んでみると、
 軽症うつ病の治療の基本は、患者背景や病態の理解に努め、指示的精神療法と心理教育を行なうことにある。この基礎的介入なしに、安易に薬物療法や体系化された精神療法を行なうことは、厳に慎まなければならない。
 現段階でプラセボに対し確実に有効性を示し得る治療法はほとんど存在しないが、基礎的介入の上で新規抗うつ薬を中心とした薬物療法、認知療法・認知行動療法などの体系化された精神療法、あるいは双方の併用が検討される。
とある。安易に体系化された精神療法を行なうことも、害を及ぼし得るという注意。

向精神薬への批判的な意見は、本書でも紹介されていたけれどNHKの番組などでも取り挙げられたことがあった。

クローズアップ現代「“薬漬け”になりたくない~向精神薬をのむ子ども~」(2012年)
 学校に通えない子どもの7割が精神科を受診。 さらに、その7割が向精神薬をのんでいました。
  「学校から医療へのハードルが低くなり過ぎ、危険だと感じる。」
  「これでは薬漬けになってしまうと、恐怖を感じている。」
などという不安が紹介されていた。

だからといってまるっきり薬は不要だとか、使うべきでないという意見も極端だろう。 著者もそのようには主張していない。薬を飲むことに意味はあるが、薬は万能ではない。どんな薬物にも、「抗パワハラ効果」「抗嫁姑葛藤効果」などはなく、貧困や失業、対人関係、家族関係といった問題を解決してくれるわけではない(当たり前のことですね)。

「必要な患者に、必要な薬を、必要な期間に限って処方する」という、これまたとっても当たり前のことが大事だとのこと。

また、最も重要なのは「人生の主役はあなた自身」で、うつからの回復に当たってもそれは同じだ、ということが述べられていた。

メンタルクリニックの選び方

街角の精神科や心療内科などのメンタルクリニックの数は、この10数年で大きく増えているという。確かに、JR沿線各駅にひとつふたつくらいずつクリニックができた。精神科医や心療内科医は、このごろ、ドラマの主人公になることも多いけれど(Dr.倫太郎、一話だけ見ました)、それだけ身近な存在になったということなのだろう。昔の映画などを見てると、精神科医というのは、なんだか妖しい変人のように描かれることが多かったと思うが(『カリガリ博士』とか。昔過ぎるか)、最近のドラマの精神科医はちょっと風変わりではあるけれど親身になってくれる頼りになる存在として表現されているような印象がある。

でも、『うつの8割に薬は無意味 』では、「精神科医にかかるのはいまやギャンブル」とまで書かれている。同業者にずいぶん辛口ではあるけれど、医者に丸投げするのではなく、自分の健康について患者さんもちゃんと責任を持った方がいいよ、というのはその通りなのだと思う。

下手なメンタルクリニックを選んで薬漬けになったりしないように、次のようなポイントが述べられていた。

もしそのクリニックの医者が、
  • 初診なのに薬を3種類以上出す
  • 処方した薬の説明をしない
  • 副作用の説明がない
  • 不調を訴えるたびに薬が増える、変更になる
  • 治療に関して疑問に思うことをたずねると機嫌が悪くなる
  • 薬を出すだけで、助言、指導、提案をしない
  • 症状ばかり尋ねて、生活を知ろうとしない
といった傾向があれば、「この医者は自分の健康を託すに値するか」と疑ってみる方がいいかもしれない、とのことだった。

規則正しい睡眠と生活習慣、断酒が重要

薬物療法が8割の人にそれほど効果がないのであれば、じゃあどうすればうつ病から回復するのだろう? 

というあたりをいくつか本書から引用。
うつ病に限らず、およそすべての疾患というのは、治療に専念すべき「いたわりの時期」と、努力してリハビリテーションに取り組む「きたえる時期」とがあります。
うつ病の人は「励ましてはいけない」と長く信じられてきたが、時期をみて励ましたり、背中を押すことも必要とのこと。うつだけじゃなくって、不登校の子にもこれは該当するだろう。
まずは何より、「健全な心は健全な体に宿る。健全な体は、規則的な生活習慣があってのこと」、それが基本中の基本です。
このあたり、「そんなこと言われても、なかなか・・・」とちょっと思わなくもないけれど、それはその通りなんでしょうね。規則的な生活習慣って、難しいよなあ。
生活習慣の基本をまとめると、①睡眠量。具体的には1日7時間、ないし1週間50時間の睡眠、②睡眠相の安定。具体的には平日と休日の起床時間を2時間以内に保つこと、③アルコールの制限。
あー、③のアルコールの制限が一番難しいや、と飲みながらこれを書いていて思う。このあたりの、動機づけの支援だとか、厳しくしつつも追い込まないとか、そういった緩急が、精神療法でいちばん大切なあたりなのかもしれない。

睡眠の調整のためのツールとして紹介されていた睡眠日誌は、たとえば
ヤマネ先生の睡眠日誌|スイミンネット
などが活用できそうだ。

後、いいなと思ったのは、
「心のケア」という場合、「若者には夢を、高齢者には思い出を」が原則です。若者には未来を語らせること、お年寄りには過去を語らせることが、そのまま精神療法になります。夢を語らせると、若者は誰もがはつらつとしてきます。思い出を語るお年よりは、皆いきいきと輝いていきます。
というところ。ついつい「また現実感のないことを言って」とか「また昔話ばっかり」と思うこともなくもないので、こうしたことを語ることが「そのまま精神療法になる」ということはちゃんと意識しておきたい。

というわけで、本日のオススメ本でした。


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