愛と慈しみの瞑想が脳を変える

公開日: 4/29/2015 瞑想


 Loving kindness meditation は、日本語では「慈悲の瞑想」と訳されている。愛と慈しみの瞑想といった意味合いで、仏教のメッタ(metta)瞑想からきており、メッタという言葉がパーリ語で「慈悲の心」を表す言葉。

気持ちがすさんでたり、とげとげしているときにしてみるといいのだが、脳にもポジティブな変化をもたらすらしい。


慈悲の瞑想と脳の変化

研究では、慈悲の瞑想は他者の感情を知る神経系の反応の変化や脳の情動プロセス領域の活動性の変化と関連していることが示されている(Lee, et al. 2012)。また、近年の研究では、慈悲の瞑想により、「目から心を読むテスト」(Reading the Mind in the Eyes Test)で他者の感情を読み取り、共感する能力が非常に向上することが発見された (Mascaro, et al. 2013)。機能的核磁気共鳴断層画像法(MRI) を用いた研究では、思いやりの訓練によって、利他行動および社会意識と情動調律に関連した脳部位の活動性の変化がともに増加することが発見された(Weng, et al, 2013)。また、メッタ瞑想は抑うつ状態の人の脳波図(引きこもりと関連する前頭野α波の不均衡)を改善することが示されている(Barnhofer, et al. 2010)。
Change Your Brain With Kindness | Psychology Today

慈悲の瞑想を実践する

現在、日本でよく知られている慈悲の瞑想は、スマナサーラ長老の著作などで紹介されることの多いテーラワーダ仏教系のやり方だろう。
慈悲の冥想Mettâ Bhâvanâ
音声ファイルも聞くことができる。

Psychology Todayで紹介されている Loving kindness meditation は、宗教的な色合いがより少ないようだ。

ゆったりと目を閉じて座って、リラックスするまで何度か深く呼吸をする。まず自分自身が安全で快適な空間にいることをイメージして、その人の目を見つめながら、2〜3回次のように唱える。
May I have joy.
May I have happiness.
May I be free from suffering.
私によろこびがありますように。
私が幸せでありますように。
私が苦しみから開放されますように。
続いて、大切な人が暖かい日の光の下にいることをイメージして同じように唱える。
May you have joy.
May you have happiness.
May you be free from suffering.
あなたによろこびがありますように。
あなたが幸せでありますように。
あなたが苦しみから開放されますように。
この後は、あなたにとって「中立的」(好きでも嫌いでもない)人をイメージして同じように唱える。あなたの「苦手な人」「敵対している人」をイメージしてみる、といった手順。

幸せの習慣

生化学者から僧侶になったマチュー・リシャールは、幸せとは何か、どうすれば幸せになれるかということを語っている。「幸せの習慣」。


慈悲の瞑想に取り組むべき18の科学的根拠

18 Science-Based Reasons to Try Loving-Kindness Meditation Today!
という記事には、タイトル通り科学的な研究で確かめられた効用が18も記載されている。

ポジティブな感情が増え、ネガティブな感情やストレス反応は減る。頭痛や慢性痛、PTSD、統合失調症スペクトラム障害などさまざまな病気を改善する。脳の共感や感情プロセスが活性化し、灰白質が増加する。共感性や社会的つながりも豊かにしてくれる。自己肯定感も増す。などなど、さまざまな効果が確かめられており、しかもそれは10分以下の少しの実践であってもいいし、長期に渡ってポジティブ感情を保ってくれるのだという。

科学的な根拠が示されることで、宗教的だからと拒否されることが少なくなり、間口も広がるが、他方では「マインドフルネスの西洋化とお金」で取り上げたような懸念も出てくるだろう。

あれこれ効能を語るよりも、「坐禅をするとどんな効果がありますか」と問われて「何もない」と答えたお坊さんの方がかっこいいぞ、と思ったり思わなかったり。

鉄道自殺予防にホームドアや青色照明灯は効果的か?

公開日: 4/27/2015 自殺 精神医学

鉄道自殺について。
正式には「移動中の物体の前への飛び込み又は横臥による恋の自傷及び自殺」と分類されるらしい。この場合、鉄道以外の物体、たとえば自動車とか飛行機(に飛び込むのは難しいだろうけれど)なども含まれている。



日本全国における鉄道自殺の件数は平均で年間600~700件。過去20年間では減少傾向がみられる。男性よりも女性に鉄道自殺の割合が高い。また、年齢別にみると男女とも10代の自殺に占める鉄道自殺の割合が高い。

首都圏の一件当たりの自殺による影響額は、平均値が8900万円、中央値が7700万円とのことだが、これは下限の推定額であり、実際の経済的コストはより高額になるだろうとのこと。

統計的な分析によると可動式ホームドアの設置によって自殺件数が76%減少している。可動式ホーム柵よりはフルタイプのホームドアの方が自殺防止効果が高いが、コストもかかる。

青色照明灯の設置後は、自殺者数は平均して約74%下がるという。ただしこれはホームに設置された場合で、踏切での青色照明灯の効果は検証されていない。また、夕方から夜間の自殺は全体の14%にとどまる(青色灯の効果は夜間のみ)。

松林哲也、澤田康幸、上田路子 「鉄道自殺の現状と予防策」、精神科治療学 30(3);381-386, 2015

歴史上初めての鉄道自殺は、1852年のことだという。商用鉄道が開通したのは1825年のイギリスとのことだから、四半世紀は鉄道自殺を思いついた人はいなかったということなのだろう。(Railway suicide in England and Wales, 1850-1949.

もうずいぶん前のことだが、ホームで人が飛び込む瞬間に居合わせたことがある。目撃者だったので、鉄道警察で調書を取られた。飛び込んだ年配の女性は最後に煙草を一服していた。自分もすぐ隣でたばこを吸ったので、その人と目があったときに「なんだかずいぶん虚ろな感じだ」と思ったのを覚えている。

*追記
人身事故多発の新小岩駅、対策が怖すぎると話題!ただしホームドアは設置しない模様
というTogetterを読んだ。
人身事故(自殺)が多発するとそのうわさや報道でさらなる事故をまねき、「名所」化してしまうという悪循環。

世界の自殺率

公開日: 4/26/2015 自殺 精神医学

WHOのサイトを見ていたら、世界の自殺率を比較した図がわかりやすかった。



世界では毎年80万人もの人が自殺で亡くなっており、自殺企図はそれ以上になる。したがって、何百万人もの人々が自殺による死別の影響を受けている。また、2012年の統計では15歳から29歳の若者の死因の二番目が自殺だという。このマップでは日本の自殺率は高く、日本の自殺対策白書を見ると、若者の死因のトップが自殺となっている。

日本の自殺者数は平成25年は2万7,283人ということだが、失踪や不審死などがカウントされていないために本当はずっと多いとも言われている。

「ウェルテル効果」と「パパゲーノ効果」から読み解く自殺と報道の関係

公開日: 4/26/2015 自殺 精神医学

先月のドイツのジャーマンウイングスの墜落事故は、副操縦士が意図的に行った、いわば自殺行為だといいます。宗教的・政治的なテロリズムではなく、個人が多くの人々を巻き込んで自殺したことは非常にショッキングな事件でした。

太刀川弘和「自殺予防とメディア-ウェルテル効果とパパゲーノ効果」、精神科治療学 30(3) ; 369-374, 2015


では自殺とメディア報道について、ウェルテル効果とパパゲーノ効果という二つの現象が紹介されていました。

ウェルテル効果、パパゲーノ効果とは何でしょうか?


ウェルテル効果


ウェルテル効果(Werther effect)とは、有名人や新奇な方法による自殺事件がメディアで報じられた後、似たような自殺が生じるという現象です。

ゲーテの『若きウェルテルの悩み』がベストセラーになった後、失恋した若者が自殺を図る事例が増えたことに由来しています。ウェルテルと同じ方法で自殺をする人が続いたため、いくつかの国で発禁処分となったのです。

ウェルテルの自殺は、「褐色の長靴と黄色のベスト、青色のジャケット」を着て、ピストルを使うという方法でした。

フィリップスという社会学者が、1974年から1967年までのアメリカの自殺統計を、ニューヨークタイムズの一面に掲載された自殺と比較して、報道が自殺率に影響することを証明しました。

フィリップスの調査では、
  1. 自殺率は報道の後に上がり、その前には上がっていない。
  2. 自殺が大きく報道されればされるほど自殺率が上がる。
  3. 自殺の記事が手に入りやすい地域ほど自殺率が上がる。
といったことが明らかにされています。

日本でも、アイドル歌手の岡田有希子やX JAPANのhideの自殺の後、ファンの後追い自殺が数多く起こりました。

少しふるい事例では、太宰治の入水自殺のときにも、後追いで死んだ人が何人もいたそうです。

パパゲーノ効果

ウェルテル効果とは逆の現象は「パパゲーノ効果(Papageno effect)」と呼ばれています。

報道の中でしっかりと自殺予防をしていくことで、自殺を防ぐ可能性も高まるといったことを表す言葉です。

また、自殺念慮を持った人が危機を乗り越えた、といった内容の報道も自殺予防効果があるのです。

パパゲーノとは、モーツァルトの『魔笛』に登場する人物です。愛する女性を失ったことに悲観して自殺しようとしたが、3人の童子の助けで思いとどまったというエピソードがあります。

関連するところを抜き書きしてみます。
この木の飾りとなってやれ、
ぼくはこの場で首をくくる。
だって、ぼくの人生、不幸だらけ。
おやすみなさい、暗いこの世!
ぼくに意地悪したこの世・・・
カワイ子ちゃんと結び付けてくれなかったけど、
それも終わりさ、ぼくは死ぬ・・・
女の子たち、ぼくを思ってよ。
万が一、一人でも、
首くくるこのぼくを哀れと思えば、
今度ばかりは中止するけど!
オペラ対訳プロジェクトより

パパゲーノさんはわりと軽い感じの人のようで、オペラの台詞を読むと「誰か止めてよ」と言っているようにも読めますね。

死ぬと言っててもどうせ本気じゃないだろう、というニュアンスがありそうで、自殺予防にパパゲーノの名前を冠するのがはたしてほんとうに適切なのだろうかという疑問がなくもないです。

WHOによる自殺報道に関するガイドライン

自殺予防メディア関係者のための手引き(日本語版第2版) [pdf]
には、次のように記載されているます。

何をするべきか

・事実の公表に際しては、保健専門家と密接に連動すること。
・自殺は「既遂」と言及すること。「成功」とは言わない。
・直接関係のあるデータのみ取り上げ、それを第1面ではなく中ほどのページの
中でとりあげること。
・自殺以外の問題解決のための選択肢を強調すること。
・支援組織の連絡先や地域の社会資源について情報提供をすること。
・危険を示す指標と警告信号を公表すること。

してはいけないこと

・写真や遺書を公表しないこと。
・使われた自殺手段の特異的で詳細な部分については報道をしないこと。
・自殺に単純な理由を付与しないこと。
・自殺を美化したり、扇情的に取り上げたりしないこと。
・宗教的、あるいは文化的な固定観念をステレオタイプに用いないこと。
・責任の所在を割り付けたりしないこと。 
最後の、「責任の所在を割り付けたりしないこと」というのはよく分からないですが、「自殺を責めない」ということだと思われます。


サリーとアンの課題(心の理論)

公開日: 4/26/2015 心理学 精神医学 発達障害


心の理論(Theory of Mind)とは、ヒトや類人猿などが、他者の意図や目的、信念、知識などを推測する心の働きを指す。もともとはチンパンジーのあざむき行動の研究から始まった。

自閉症スペクトラムの子どもは、定型発達や他の障害(たとえばダウン症)などと比べて、この心の理論の発達が遅い。統合失調症などの精神疾患によっても、こうした心的機能が障害されることがある。

マインドフルネスの西洋化とお金

公開日: 4/24/2015 瞑想

The Long Marriage of Mindfulness and Money | THE NEW YORKER
マインドフルネスとお金の長くて親密な関係


Googleがマインドフル瞑想を取り入れているということは知られるようになったが、このごろではウォールストリートの人々まで瞑想に励んでいるようだ。
上座部仏教から取り入れられたマインドフル瞑想は、しばらく前にヨガがもてはやされていたような位置に入り込んですっかり受け入れられてしまった。

記事では、マインドフルネスが、その潜在的な利点はあるにしても、実業界においてカルト化する危険について触れられている。アメリカの資本主義は、これまでもずっと東洋的のスピリチュアリティにロマンを感じてきた。で、結局ヒンズー教も仏教も自己啓発とか効率的なワークスタイルだとか、いわば「お金」の話に還元されてしまうという危険がつきまとっているということらしい。

私たちが今日知っているマインドフルネスは、西洋的な心理学のフレームワークに合うように、合理化、近代化され、セルフヘルプやビジネスのためのツールになったものだという。

近代化するのが必ずしも悪いとは思わないが、シンプルであんまりお金のかからない方がいいですね。

共感覚(シナスタジア)。どっちが「ブーバ」でどっちが「キキ」?

公開日: 4/24/2015 心理学

シナスタジア

Synesthesia(共感覚)というタイトルの映像を見た。



TERRI TIMELYというアートユニットの作品らしい。

ちょっと面白いですね。

共感覚(シナスタジア)とは、ある刺激に対して通常の知覚とは異なった感覚が生じるような特殊な知覚現象を指している。たとえば文字に色を感じる、形に味を感じるといったもので、たんなる比喩ではなくて当人にとってはとても生々しくリアルに体験されるものだという。

次はTEDの「火曜日の色はなに? 共感覚を探求する」という講演。




ブーバキキ効果

脳科学者のラマチャンドランは、共感覚者たちの知覚が記憶や推論ではないことを実験的に確かめた。

左右の図形、どっちが「ブーバ」でどっちが「キキ」? というよく知られた図形。


数字に色を見る人たち 共感覚から脳を探る(V. S. ラマチャンドラン)[pdf]


ときどき、聞こえてくるものを視覚映像や味覚に変換してみたり、見えるものを音で表したりしてみると脳にいい刺激が与えられるかもしれない。



ADHDの子どもは身体で学ぶ

公開日: 4/23/2015 心理学 発達障害

新しい研究によれば、ADHDの子どもに何かを学ばせたいときには、その子たちにもじもじさせなきゃいけないらしいのです。足をバタバタブラブラさせたり、椅子をガタゴトさせる動きは、ADHDの子どもが情報を思い出したり複雑な認知的課題を実行する際に不可欠なのだそう。


Kids with ADHD must squirm to learn, study says

何十年ものあいだ親や教師は落ち着きのないADHDの子どもたちに「じっと座って集中しなさい!」とイライラしながらどなってきた。しかし研究によれば、じっとさせるのはかえって逆効果なのだという。

元ネタの論文はこちら。

Dustin E. Sarver, Mark D. Rapport, Michael J. Kofler, Joseph S. Raiker, Lauren M. Friedman. Hyperactivity in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder (ADHD): Impairing Deficit or Compensatory Behavior? Journal of Abnormal Child Psychology, 2015; DOI: 10.1007/s10802-015-0011-1

過剰な粗大運動(多動性)は、ADHDの中核的な診断特徴で、学習を妨げるものだと考えられてきた。しかしながら、最近の見解では多動性はADHDの子どもの神経認知機能を促進する補償的な働きをもっていると考えられるようになってきたという。この研究では、ADHDと定型発達の子どもたちのワーキングメモリーが活動性のレベルとどれくらい関係しているかということが調査された。

ADHDの子どもたちは、多動が目立つときほど学習効果が高いという結果だったそうだ。逆に定型発達の子どもたちは、もじもじしているときはそれほど学習しなかったという。ADHDの人たちは、身体を動かして覚えたり学んだりする、ということなのだろう。

以前にADHDは狩人の子孫だという説を読んだことがあるけれども、こういうタイプの人たちは、まずは手や身体を動かして、それから考えようという傾向をもっているのだと思われる。

自分をふりかえってみても、確かに何か考えるときには、必ずうろうろしている。その方が神経が集中できるようだし、学び方とか仕事の仕方も「削ってシンプルに」というのではなく(それは苦手)、まずは「ごちゃごちゃっとなんでも放り込む」必要がある。身体をうろうろどたばたさせていると、しぜんとお鍋がかき混ぜられて落ちつくところに落ちついていくという感じです。

描く瞑想? アートセラピーゼンタングル

公開日: 4/20/2015 アートセラピー

ゼンタングル(Zentangle)というアートワークの方法。



先日、書店でたまたまこのゼンタングルの本が何冊か並んでいるのを見て、一冊買ってみた。

なかなか面白そう。



Zentangleというサイトによると、
The Zentangle Method is an easy-to-learn, relaxing, and fun way to create beautiful images by drawing structured patterns.
Almost anyone can use it to create beautiful images. It increases focus and creativity, provides artistic satisfaction along with an increased sense of personal well being.
簡単に覚えられて、楽しくて、リラックスしながら美しいイメージをつくることができる方法だと説明されている。集中力や創造性を増して、健康でハッピーな感覚をもたらしてくれるんだという。瞑想的な効果があるらしい。描く瞑想と言ってもよい。

zenは禅からきてるのかな。tangleは、もつれるとかからみあうといった意味合い。禅的にからみあうということか。
しかしどっちかというと禅というよりは密教系のごちゃごちゃ感がある。

以前、アウトサイダーアート系のワークショップに参加したときに、こんなふうに単純な幾何学模様をたくさん繰り返し描いていくというワークをしたことがある。
臨床場面では「常同的行為」などと言われるけれども、たしかに同じことを繰り返していると生理的に安心するものだと感じた。マンダラっぽいところもある。

長電話しているときに、気がつくとメモ帳にこんな図柄を描いていることもある。

ユングがマンダラとか夢のイメージなどを描いていたときも、こんな感じだったんだろうか。


認知症スクリーニング検査 The Rapid Dementia Screening Test日本語版

公開日: 4/20/2015 心理テスト

認知症のスクリーニング検査である The Rapid Dementia Screening Test日本語版について調べた。
一般的にはHDS-RやMMSEが用いられることが多いが、より短時間で実施でき、より日常生活場面に近い課題であるため、被験者からの受け入れがよいといった特徴をもっているよう。



認知症スクリーニング検査 the Rapid Dementia Screening Test日本語版の有用性
http://www.daiwa-grp.jp/dsh/results/32/pdf/04.pdf
によると、
短時間で施行できる
患者の負担にならず受け入れやすい
採点が簡単
文化、言語、教育にあまり影響を受けない
評者間信頼性および再検査信頼性が高い
併存妥当性および予測妥当性が高い
という理想的な認知症スクリーニング検査として開発されたとのこと。MMSEとの相関は0.7と高い。

実際の問題は次の通り。

The Rapid Dementia Screening Test日本語版

問1 スーパーやコンビニで売っているものの名前をできるだけたくさん挙げてください。(制限時間1分)

問2 次のアラビア数字を漢数字に、漢数字をアラビア数字に変換してください。
・269
・4051
・六百八十一
・二千二十七

数字についてはいくつかのバージョンがあるようだ。問題は outlandos d'amour というブログの記事を参考にさせてもらった。

採点

問1 14以上   8点
11~13  6点
8~10 4点
5~7 2点
4以下 0点

問2 各1点

判定

上記論文によると、
カットオフポイントを7/8 に設定したとき,感度73.3,特異性88.2,有効度81.5 であり,スクリーニング検査として一定の有用性があると考えられた。
とのことだった。7点以下の場合には認知機能の低下が疑われる。4点以下のとき、陽性的中率はほぼ100%となり認知症が強く疑われるとのことらしい。

スーパーマーケット課題については、健常者群の平均は17.3±6.6、認知症群の平均は8.4±5.3とのこと。

保健事業に参加する地域在住高齢者へ行った認知症スクリーニング検査(RDST-J)の実態とその関連要因
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/pmph/shinshu-kouei/zassi2011_5_2/zasshi_5_2_97.pdf

という研究では、RDST-Jを用いて地域在住高齢者の認知機能の実態 とその関連要因について検討を行っている。
自立度の高い高齢者においても加齢や歩行速度の低下、日常生活機能の低下が認知機能と関連しており、特に年齢が75歳以上、男性、知的能動性が低い者において、認知機能低下のリスクが高い可能性が示唆された。
知的能動性とは、新聞や本などを積極的に読むかどうか、といったことを表している。一般的には、高齢者では社会的役割や知的能動性がまず低下し、続いて電話や洗濯、買い物などの日常的動作、最後に着衣やトイレなどの基本的な動作の順で生活機能が低下してくる。できるだけ知的な活動や社会的役割を担っていた方がいいということだろう。

老研式活動能力指標は以下参照。
http://www.chiba.med.or.jp/personnel/nursing/download/text2012_12.pdf

フェレンツィの『臨床日記』をめぐって

公開日: 4/19/2015 心理学 精神分析

The American Journal of Psychoanalysis
Volume 75, Issue 1 (March 2015)
Second Special Issue: Sincerity and Freedom London Conference Inspired by Ferenczi's Clinical Diary
http://www.palgrave-journals.com/ajp/journal/v75/n1/index.html

ということで、フェレンツィの『臨床日記』が特集されているようだ。

(Ferenczi Sándor, 1873-1933)

タイトルとアブストラクトだけナナメヨミして読んだつもりになってみようという趣旨のメモ。

DECODING FERENCZI’S CLINICAL DIARY: BIOGRAPHICAL NOTES

B William Brennan
『臨床日記』には、多くの暗号や略語が使われている。“Dm.”がクララ・トンプソンを、“RN”がエリザベス・セバンを指すことなどは明らかになっているが、ほとんどは秘密のままとなっている。そのあたりを探ってみよう、というストーリーらしい。

THWARTING THE PSYCHOANALYTIC DETECTIVES: DEFENDING THE SEVERN LEGACY

Christopher Fortune
1993年に『Sandor Ferencziの遺産』という本が出版されたそう。その本では“RN”の事例でフェレンツィが行なったラディカルな実験が取り上げられている。この本の出版から20年経った今、RNは精神分析史で最も重要な患者の一人でありつづけている。というわけで論文の著者はRNについて「探偵」のようにいろいろ調べたということのよう。エリザベス・セバンの娘さんにも会ったと。

このあたりで、『臨床日記』を本棚から探してぱらぱらめくってみた。読み返すのはずいぶんひさしぶりだ。

症例(R.N)は「進行性分裂病」と記されている。幼少期の性的虐待のケースだった。
生きていたくないという願望をもっとも内奥にもちながら、暗示の影響でふつうの学童としての存在が続いていく。この状態で、精神活動が半分鈍ったまま進んだ。言い換えるならば、自分本来の性向と感情が完全に抑圧されたままの人工的な二重生活である。p.11
解離的な状態で、学童期を過ごしたということのよう。「進行性分裂病」という診断がどのような病態を指しているのかは不明だが、この時代「ラテントの分裂病」などと呼ばれていたのが境界例水準の患者だったようなので、おそらくこの症例(R.N)もそうではないかと推測される。次のくだりを読んでも。
R.Nは双方向的な分析を要求した。分析家が患者を殺し、苦しめる傾向――私にはそれがあると彼女は受け取っているのだが――から身を守る唯一の方法だと考えたからである。はじめは私の側に強い抵抗があった。そんなことをしたら患者は分析状況をぶち壊してしまうだろう。投影の働きにもとづいている自らの分析を台無しにして、自分自身ではなく私を分析することになってしまうだろう。だが驚くべきことに事態はこれとはちがった経過をたどった。分析家側がとった態度によって、アナリザンドはそれまで(分析家の感じやすさに配慮して)言うのを控えていたことすべてを、もはや礼儀を気にしたり気遣ったりすることなく伝えることができ、以後の「正しい」分析セッションンのなかで、それまで抑えつけられてきた感情のすべてが日の目を見るようになった。患者がいちばん強い印象を受けたのはもちろん、個人的反感および身体的反感をもっていたのを私が認め、それまで過剰な好意的態度を取っていたと告白したことである。p.15
フェレンツィに相互分析を要求して、実際にそういう関係になっていった事例が“RN”だった。それは確かに“精神分析史で最も重要な患者の一人”だろう。セラピストの「自己開示」というテーマのいきついたところに「双方向的な分析」があるのかもしれない。

後の方のページをめくると、「三時間近く続いた相互分析のあと、激しい頭痛が襲った」なんて書かれていた。まあ、大変だったろうなフェレンツィさん。

後、興味を惹かれたタイトルだけメモしておく。

BECOMING A PETER PAN: OMNIPOTENCE, DEPENDENCY AND THE FERENCZIAN CHILD
ピーターパンになる:万能感、依存心、フェレンツィ的子ども

KLEIN, FERENCZI AND THE CLINICAL DIARY
クライン、フェレンツィと臨床日記

フェレンツィはクラインの分析家でした。5年くらいだったそう。フェレンツィがクラインに与えたであろう影響は、次の3つ。ひとつは、母子関係における生々しい初期の感情。次に分析的関係における自由と権威について。最後は転移と逆転移感情をどう使うかということ。

LACAN AND FERENCZI: PARADOXICAL KINSHIP?
ラカンとフェレンツィ:パラドキシカルな類似性

ラカンは最初はフェレンツィを買っていたらしい。

THE JUNG-FERENCZI DOSSIER
ユングとフェレンツィの一件書類

ユングが精神分析から離れた後も、いくつか手紙のやりとりはあったのだと。

『臨床日記』をもう一度丁寧に読み返してみたいと思った。

近代以前の心理学

公開日: 4/19/2015 心理学

“心理学には長い過去があるが、その歴史はきわめて短い”
ヘルマン・エビングハウス

古代ギリシャの哲学者たちは、「プシュケー」(psyche)についてさまざまな考察を行なった。プシュケーとは、「魂」という意味の言葉で、Psychology(心理学)は、psycheとlogos(言葉、論理)から成り立っている。

ヒポクラテス「聖なる病いではなく、脳の病気」

ヒポクラテス(B.C.460頃–370頃。ずいぶん長生きだ)は、医学を迷信や呪術と区別し、観察や臨床を重視する経験科学としての医学の礎を築いた。ソクラテスとほぼ同時代の人物である。医師の倫理について述べた「ヒポクラテスの誓い」は、現代の医療倫理にも通じるものだ。

ヒポクラテス以前に、てんかんは「聖なる病い」と考えられてきた。てんかん発作は神々からのメッセージだととらえられてきたのである。その他の病気も、だいたい「神々の怒り」の表れと考えられることが多かった。特に精神的な病いは、「神聖病」と考えられていた。ヒポクラテスは「てんかんは脳の病気」と見なした。また、世転びや悲しみ、不安、考える、見る、聞くといった感情や五感の働き、さらには狂気なども「脳」に由来すると考えていたという。非常に合理的で、現代にも通じる脳理解をしていたといえる。

環境と健康の関係についても、合理的な視点を持っていた。
健康にとってよい風とよくない風については上述した。私は次に水について ─ 病気をおこす水,健康に大変よい水,そして水がもたらす害について ─ 述べてみたい。水の健康に及ぼす影響は非常に大きいからである。(ヒポクラテス「空気・水・場所について」)

プラトンの魂の三分説

プラトン(B.C.427-347。同じく長寿)は『国家』のなかで人間の魂を3つに区分した。

  • 理知(ロゴス)
  • 気概(テュモス)
  • 欲望(エピテュメーテース)

の3つである。


気概(テュモス)とは、困難に立ち向かう意思や勇気を表す言葉だ。プラトンは、この魂の三分説を、社会にも当てはめた。社会において理性を司るのが哲人、気概を司るのが武人、欲望を司るのが経済活動に従事する庶民だという。

心を3つに分けるというアイデアは、たとえば知情意とか、フロイトの「自我、超自我、エス」などにも共通している。

アリストテレス『魂について』

アリストテレス(B.C.384-322)は『魂について』(霊魂論などとも訳されている)で、心を「人間的心」「動物的心」「植物的心」に区分した。やはり三階建てモデルである。


英訳版は、Internet Classics Archiveで読むことができる。
“On the Soul”By Aristotle,Written 350 B.C.E 

植物的心は、栄養摂取と生殖を司っている。自律神経系のことを植物神経系と呼ぶこともあるのは、アリストテレスのこの分類に由来しているという。消化や呼吸、生殖、循環、分泌といった自律的な働きである。

動物的心は、感覚と運動を担っている。

人間的心とは理性のことで、理解することや意思などを意味している。

ガレノスの四体液説

四体液説は、医学の祖ヒポクラテス(B.C.468-377)に由来している。ヒポクラテスは人間の身体は、血液、粘液、黒胆汁、黄胆汁の四つの体液から成ると考えた。この四つは、それぞれ風、水、地、火という四大元素の表れである。また、熱、冷、乾、湿という性質とも関連している。ガレノス(A.D.131-199)は、これらの四つの体液のバランスによって人間の気質が別れると考えた。




Bloggerでサイトマップを作ってウェブマスターツールに登録する

公開日: 4/19/2015 ブログ

Bloggerでサイトマップを作ってウェブマスターツールに登録する手順の備忘録。


サイトマップ作成

http://***.blogspot.jp/sitemap.xml
ルートURLの後ろに/sitemap.xmlをつけるとサイトマップができる。
***には個別のアドレスが入る。

googleのウェブマスターツールに登録する

http://www.google.com/webmasters/
からログイン。

(1)右上の「サイトを追加」で、サイトを追加。
このときは、
http://***.blogspot.jp/
を入れる。

(2)所有者の確認
Bloggerの場合はgoogle analyticsのトラッキングコードを登録しておけばいいようだ。

(3)ダッシュボードからsitemapを送信
http://***.blogspot.jp/sitemap.xml
を登録する。

Google ウェブマスター ツール 登録マニュアルを参考にした。



振り込め詐欺、高次脳機能、騙されやすさ

公開日: 4/18/2015 心理学

振り込め詐欺の被害額

2014年の振り込め詐欺の被害は、174億円にも昇ったのだそうだ(金融商品に関連した詐欺なども含んだ特殊詐欺の総額は559億円)。

特殊詐欺、昨年559億円=5年連続増、最悪を更新-高齢者79%・警察庁

なんであんなにたくさんの高齢者が、いとも簡単に騙されてしまうのだろうか?

心理学研究にこのテーマに関連した論文が掲載されていたのでぱらぱらと読んでみた。
中高年者における高次脳機能,信頼感と騙されやすさの関連
高次脳機能とは、知覚や記憶、学習、思考、判断といった認知過程を遂行するための心(あるいは脳)の機能を意味している。

「思考」や「判断」が低下していたら、それだけ騙される可能性も高まるだろうし、「記憶」や「学習」が衰えていると、「これは例のオレオレ詐欺だ」と思いつきにくいかもしれない。



高次脳機能と信頼感、騙されやすさの関係

論文では3つの課題が挙げられている。
  1. 中高年者における高次脳機能と騙されやすさとの関連
  2. 高齢者の信頼感と騙されやすさとの関連
  3. 中高年者の高次脳機能と信頼感との関連

高次脳機能はNU-CAB( Nagoya University Cognitive Assessment Battery)という神経心理学的検査を使ったとのこと。信頼感の査定には、成人版信頼感尺度(天貝,1997)という尺度が用いられている。

それぞれ、次のような結果。
年齢や高次脳機能と騙された経験や騙されやすさに関する自己評価に有意な相関関係はみられなかった。それゆえ,年齢や高次脳機能と騙されやすさとの直接的な関連性は低いと考えられる。 
信頼感の下位尺度のうち不信の高さと騙された経験や,騙されやすさの自己評定の高さは正の相関関係にあることが示された。また,騙された経験がある人はそうでない人よりも不信が強く,自らを騙されやすいと感じている人はそうでない人よりも不信が強かった。
他者信頼が高いほど高次脳機能課題の成績も良好で,不信が高いほど高次脳機能課題の成績も悪いことが示された。
高齢だから騙されやすい、というわけではないけれども、高次脳機能が低下していると、他者との関係がうまくいかずに不信感を抱きやすいということだろうか。

ウィルヘルム・ヴント『心理学入門』1

公開日: 4/18/2015 心理学

AN INTRODUCTION TO PSYCHOLOGY

BY
WILHELM WUNDT
PROFESSOR OF PHILOSOPHY IN THE UNIVERSITY OF LEIPSIC

http://www.gutenberg.org/files/46677/46677-h/46677-h.htm

の序文を読んでみた。Project Gutenbergから。


『心理学入門』

ウィルヘルム・ヴント
ライプツィヒ大学哲学教授

著者による序文

この心理学入門が意図しているのは、心理学の科学的あるいは哲学的概念について議論することではないし、心理学の研究とその結果を概観することでもない。この小さな本で試みるのは、現代の実験心理学の基礎となる原則的な考え方を読者に紹介するということだ。テーマを徹底的に研究するために必要な多くの事実や方法については除外しよう。実験的な方法と結果についての言及をまったく省くのは、現代では不可能だ。しかし、私たちは新しい心理学の基礎的な原理を理解するために、最も重要な結果のごくいくつかを考察する必要があるだろう。この心理学の方法の特徴を知るためには、実験の参照をすべて省略することは不可能だろうが、こうした実験を実施するために依拠しているいくぶん複雑な実験器具のことをこまごま述べることはやめておこう。新しい心理学についてより全体を知りたい読者には私の『心理学概要』を紹介しよう。そこにはテーマに関して必要な参考文献も含まれている。

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以下は章ごとのタイトルと概要だけ。

CHAPTER I
CONSCIOUSNESS AND ATTENTION

意識と注意

心理学とは意識過程の記述である-メトロノーム-意識のリズミカルな傾向-意識の範囲-意識の閾値-固着点と意識野-注意の焦点-注意の範囲-理解と統覚


CHAPTER II
THE ELEMENTS OF CONSCIOUSNESS

意識の要素

心的要素と合成-感覚と観念-記憶心象と知覚-感覚の質と強度-感情-感覚と感情の違い-感情の三つのペア-情動プロセス-感情と気分-意思プロセス-動機-本能、自発性、判別可能な行動-感情の質-感情と統覚


CHAPTER III
ASSOCIATION

連想

連想と統覚-音調の大きな音への融合-空間的時間的知覚-同化と異化-同じことの直接再生された形-複雑さ-対象の認識と認知-継時的連想-いわゆる「親しみの感情」-二次的観念-認知の情動プロセス-いわゆる忘却や想起という意識の状態-記憶連想


CHAPTER IV
APPERCEPTION

統覚

連想と比較した統覚的結合の一般的な特徴-集合観念とその分析-具体的・抽象的思考-発話と思考-理解と想像-未開人種の言語における発話の原初的形態の例-連想的結合からの統覚的結合の発展-思考の心理的問題を扱う上で、内省法が不十分な点-言語と人種の心理学


CHAPTER V
THE LAWS OF PSYCHICAL LIFE

心的生活の法則

心理的法と自然法の関係-心理・身体的個人-法の普遍的妥当性への疑問-創造的な合成の原理-終わりのヘテロゴニーの原理-条件関係の原理-コントラストを強調する原理-心理的・身体的観点-身体的価値と心理的価値の関係-身体的・心理的要素-魂の性質-神話的観点-「実体」仮説-心のアクチュアリティの原理

Bloggerの行間をあけるには

公開日: 4/18/2015 ブログ

Bloggerの行間が詰まりすぎて見にくいのでどうにかしたいと思ったのだけれど、ダッシュボードでは変更できないようだった。

ちょっと調べて解決したので、備忘録として残しておく。

Bloggerの行間をあけるには

ブログ管理画面から、テンプレートを選択。
「カスタマイズ」というボタンをクリックすると、
「Bloggerテンプレートデザイナー」に入ることができる。
「上級者向け」のところの
「カスタムCSSを追加」で、

.post-body {
 line-height: 1.7;
}

と記入して、「ブログに適用」を押す。
行間を1.7としたけれど、ここは適当に調整可能。

行間はフォントの70%(0.7文字分)くらいが読みやすいようだ。狭すぎると文字の圧迫感が強くなって読みにくい。開きすぎるとぼやけてしまう。

文字の間の間隔も、デフォルトではだいたいちょっと狭いようなので、心持ち広げると読みやすいのかもしれない。

読字障害(ディスレクシア)と読みやすさ

行間が詰まっていたり、文字のサイズが適切でなかったりすると、確かに文章が頭に入ってこない。読字障害(ディスレクシア)の人たちの目に写る文字の読みにくさを表現したものがあった。



神話的世界と魂の心理学

公開日: 4/17/2015 心理学


心理学史をざっくりと「魂から心へ」という流れで。

以下、覚書。

Lascauxの洞窟壁画

Lascauxの洞窟壁画は15,000年前の旧石器時代後期のクロマニョン人によって描かれたと考えられている。ヒトの心は「今・ここ」ではない「いつか・どこか」を思い浮かべる能力を発展させた。イメージする力や意味を考える能力によって、ヒトは世界を「二重に」捉えるようになったということができるだろう。物理的な環境世界と、それに重なる(あるいはそこから離れた)イメージの世界である。洞窟壁画もまた、ヒトの心が生み出したイメージ世界を表すために描かれたと考えられる。


点のラインとオオツノ鹿

有名なシャーマンと思われる男の絵。ラスコーの洞窟壁画で唯一の人間像だそうだ。鳥のようなとがった顔をした男は、バイソンの前に横たわっている。バイソンの身体には槍が貫通しており、腹からは腸がはみ出している。男は、狩りに失敗してバイソンに殺されたのだろうか。それとも、仕留めたバイソンのスピリットを天に送るための儀礼などを行っているのだろうか。男の隣にある鳥のついた棒は、何らかの儀礼に用いられたものと考えられているようだ。

ラスコーの洞窟壁画を紹介した動画。

ヒトは、どのような目的をもって洞窟壁画を描いたのか。また、その背景にはどんな世界観や動物観を持っていたのか。



という本に、このあたりのことが詳しく記されていた。芸術の起源とされているラスコーやアルタミラなどの洞窟壁画は、数万年前に突如誕生した。芸術はなぜ必要だったのか? 心のどんな機能が芸術として表現されたのか? 
訳者の港千尋さんと中沢新一さんの対談の記録には、こんなふうに書かれている。 
 『洞窟のなかの心』によれば、壁画は外界のスケッチではなく、脳の中のプロセス(過程)が外在化して岩の上に浮上したもの。そのため壁画には具象的な動物絵、抽象的な模様のほか、人間が動物に変容する図像が洞窟の奥でたびたび見られます。人間の心の深い層には、意識の変容によって人間が動物に生成変化してゆく領域があるそうで、洞窟と人間の心の対応関係が伺えますね。
『野生の科学』で「喩」と呼んでいる、二つの意味領域を重ねる心の構造も、人間の認識の根源的な過程であり、まさに洞窟壁画を描いた人達の中で起こっていたと考えられます。 
 港千尋×中沢新一対談 「ホモサピエンスの起源と未来を探る」

シャーマニズムと世界の仕組み

Yup'ik shaman exorcising evil spirits from a sick boy, Nushagak, Alaska, 1890s.[wikipedia]


アラスカのユピク族のシャーマンが、病気の少年から悪霊を追い出そうとしているところ、との説明がある。どうみてもお前のほうが悪霊だろう、とつっこみたくなるけれども、病いや苦しみといった目に見えない出来事を、演劇的に可視化して取扱い可能なものとするのもシャーマンの仕事だといえる。

シャーマンの治療は、物語を語る、歌や音楽を使う、演劇や儀礼を用いる、集団の力を活用する、といったさまざまな側面をもっている。
現代の心理療法では、精神分析や音楽療法、家族療法、サイコドラマなどはそれぞれ別の流儀ということになっているが、太古から行われていた心の治療は、すでに統合的アプローチだったのだろう。

神話的な世界においては、世界は「この世とあの世」「日常と非日常」「聖と俗」といったように二つの領域から構成されている。シャーマンは、この世とあの世を橋渡しするような役割をもっていた。
シャーマンの治療儀礼が果たす役割について、レヴィ=ストロースは次のように書いている。
治療は、したがって、はじめは感情的な言葉であたえられる状況を思考可能なものにし、肉体が耐えることを拒む苦痛を、精神にとっては受けいれうるものとすることにある。シャーマンの神話が客観的現実に照応しないということは、大したことではない。患者はその神話を信じており、それを信ずる社会の一員である。守護霊と悪霊、超自然的怪物と魔術的動物は、原住民の宇宙観を基礎づける緊密な体系の一部をなしている。患者はそれらを受けいれる。あるいは、より正確には、彼はそれらを疑ったこともない。患者が受けいれないのは、辻褄の合わない気まぐれな苦痛であり、こうした苦痛は、その体系と無縁な要素を構成するけれども、シャーマンは神話に訴えて、すべてが相互に関連しあう全体の中へ、これを置きもどすであろう。
レヴィ=ストロース『構造人類学』荒川幾男他訳、みすず書房、一九七二年
神話とは、物語のひとつだ。現代の心理療法には、ナラティブアプローチという流れがある。そもそも、心理療法の源流である精神分析は「お話療法」(talk therapy)と呼ばれていた。医学においても、「根拠に基づいた医療」を補う「ナラティブに基づいた医療」が重視されるようになってきた。

稲生物怪録絵巻

『稲生物怪録(いのうもののけろく、いのうぶっかいろく)』とは、江戸時代の中期(1749年)に、備後三次藩(現在の広島)の藩士だった稲生武太夫(幼名・平太郎)が体験した怪異をとりまとめた物語。肝試しによって妖怪の怒りをかってしまった16歳の平太郎のもとに、30日にわたってさまざまな化け物が出没するという話である。





このような化け物が毎日脅しにやってくるが、平太郎はどれも退け、最後には「魔王」から勇気をたたえらえて魔法の木槌を与えられる。この木槌があれば、困ったときにいつでも仲間となった妖怪を呼び出せるという、妖怪ウォッチのようなアイテムである。

以前、プシケーというユング心理学の雑誌で、老松先生というユング派の分析家が、この『稲生物怪録』を取り上げていた。平太郎の身に起こったような出来事は、現代であれば統合失調症のような心の病として取り扱われるだろうといった内容だったと記憶している。

精神医学の観点からすれば、幻覚や妄想といった急性精神病状態ということになるのだろうが、世界観が違えば、本人や周りのとらえ方や対処の仕方もまた異なってくる。どちらが正しいというものでもないのだろう。


やっぱり近代心理学に行く前に時間がなくなったので、続きはまた今度。

脳をハッキングして神と出会う。短編映画『The Brain Hack』

公開日: 4/03/2015 映画 心理学

viemoで興味深い短編映画を観たので紹介します。 brainhack 『The Brain Hack』というタイトルで、2人の大学生が脳をハックして神体験を誘発するという映像を開発した、というストーリーの20分ほどの短編映画です。 公式サイトは以下。 http://www.thebrainhack.com/
WINNER - Best Short - Best Music - Best Actor - The British Horror Film Festival WINNER - Best Director - Los Angeles Short Film Festival HONORABLE MENTION - Miami International Science Fiction Film Festival OFFICIAL SELECTION - London Sci-Fi Film Festival, Boston Science Fiction Film Festival, Big Apple Film Festival, LA Indie Film Fest, Minneapolis Underground Film Festival, British Shorts Berlin.
とたくさん賞を受賞しているみたいですね。 字幕が英語だったんで理解は適当ですが、映画科の学生と神経科学を専攻している学生が手を組んで、誰でも簡単に宗教的な体験を得ることのような映像作品を作ろうとします。 すると、謎の組織に狙われるようになり…統合失調症的な妄想なのか、と思わせつつも、最後まで観ると、なるほどというような仕掛けもあって楽しめます。 ただし、
**DANGER** View with extreme caution.
「危険。十分に注意して視聴してください」とのことです。 目がチカチカする場面がありますし、神さまが現れても大変かもしれないですしね。