自殺をまねく「暗い日曜日」

Gloomy Sunday(暗い日曜日)曲は1933年にハンガリーで発表されたヤーヴォル・ラースロー作詞、シェレッシュ・レジェー作曲の歌だ。薄曇りの日曜日、恋人を失った女性が嘆いて自殺を決意するといった内容の曲で、あまりに暗くて、この歌を聴くと自殺者が出ると有名になってしまった。この曲のレコードを抱いてドナウ川に飛び込んだ人だとか、歌詞を引用して遺書にした人がいたらしい。


この曲を聴いて、世界中で数百人が自殺したとも、いやいやそれは都市伝説だとも言われている。第二次世界大戦前の暗い世相が影響したとも考えられるが、ハンガリー政府によって放送禁止になったそうなので、やはりこの曲が人の感情に与える影響が大きかったのだろう。

国の自殺率順リストを見ると、人口10万人あたりの自殺者数でハンガリーは11位となかなか高い(ちなみに日本も13位)。

音楽と古典的条件付け

先日、古典的(レスポンデント)条件付けについて話をする機会があった。メトロノームの音を聞いただけで涎を出すようになった例のパブロフの犬の話である。そのなかで、失恋したときによく流れていた音楽をあらためて聞くと、そのときのせつない気分がよみがえるよね、といった話が出た。

「失恋」はたいていの人にとってつらいので、これは無条件刺激だろう。悲しみという身体と感情の反応が無条件反応となる。音楽が厳密な意味で中性刺激といえるかどうか分からないが、同時期に流れていることが多いと、条件づけられていくのだろう。

音楽と癒し

ちなみに「世界一癒される音楽」として科学的に認定されたのは、マルコニ・ユニオン作曲のWeightless(無重力)という曲だそう。眠れない夜にもよさそう。


Weightlessは2011年にthe British Academy of Sound Therapyとのコラボレーションで作成された。the Mindlab institutionの科学者の研究では、この曲を聴かせることで、不安が65%減少し、脈拍も35%下がったという。

こころを癒す音楽』 (こころライブラリー) 北山 修 (編)、2005年