図書館で借りてきた一般向けの本。

女性の当事者が書いた本はけっこう見るが、イラストつきでわかりやすくまとまっているのは意外と少ない気がする。

アスペルガー症候群についてはよく知られるようになったが、それはほとんどが男性のアスペルガーに関する情報で、女性の場合は悩みごとも対応法も異なる。


宮尾益知監修『女性のアスペルガー症候群』講談社、2015年

女性のアスペルガー症候群の悩み

女性のアスペルガー症候群に特有の悩みとして、
  • 「ガールズトーク」についていけない
  • 友達に嫌われても、理由がわからない
  • 「女の子らしくしなさい」と叱られる
  • 急に感情がダウンするときがある
  • 人にだまされ、性的な被害にあう
といったことが挙げられている。

男女の性差については、バロン=コーエンの「論理脳(男性)」と「共感脳(女性)」が紹介されていた。
理屈はどうあれ、男女に違いがあって、女性の発達障害の方が分かりにくいといった傾向はあると思われる。診断基準が男性中心に作られてきたということなのだろうけれど。

心身の症状

心身の症状として
  • 朝が苦手で、ベッドから起き上がれない
  • 自分の成長に戸惑い、体調を崩す
  • 怒られた記憶が何年も残り続ける
  • 感覚面のかたよりに苦しんでいる
  • こだわりの強さから摂食障害に
といったことが挙げられていた。ストレスが重なると二次障害が起きやすく、症状は男性と共通するところもある。女性は、胃腸の不調や貧血などが多いとのこと。また、摂食障害や境界性パーソナリティ障害、性同一性障害といったかたちで表れることもある。

診断と治療

発達障害とは、先天的な脳の機能障害で、脳機能になんらかのかたよりがあり、それが心理的・行動的な特性となって現れると定義されている。

アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム症(ASD)、ADHD(注意欠如・多動症)、学習障害といったものが含まれている。

自閉症スペクトラム症(ASD)は、女性よりも男性に多いと考えられている。実際に、女性のASDが少ないのか、診断基準が女性向きではないとか(そのために「典型例」とならない)、女性は男性と比べてコミュニケーション能力が高いことが多いので発見されにくいといった可能性も考えられる。

婦人科や内科では、心身症と誤診されやすいので、心療内科や精神科などで専門医にかかりましょうとのこと。

治療は、暮らし方や環境の調整が中心となる。
  • まわりの人の理解
  • わかりやすい伝え方
  • 生活しやすい環境
  • 本人の自己理解
が大切。

SST(ソーシャルスキルトレーニング)などで、社会生活をうまくおくるための技能を身につけたり、CBT(認知行動療法)で、思い込みや認知のゆがみを修正するといった専門的な治療も行なわれることがある。また、身体症状には、薬物療法なども用いられる。

誤解されやすさから、DVや性被害などを受けてトラウマに苦しむこともあるので、それへの対応や治療も必要となる。

といった内容です。

「今日からできる生活面の対策」が具体的で分かりやすい。

【関連図書】
アスパーガール
ルディ・シモン『アスパーガール

アスペルガーの女性がパートナーに知ってほしい22の心得



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