猫投下作戦、あるいは風が吹けば桶屋が儲かる

9/27/2015

いろいろ 心理学

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『NLPカウンセリング・システムセラピー入門』という本を読んでいたら、「猫投下作戦」について書かれていて、面白かったので調べてみた。

なんとなく、スパイ大作戦、みたいで響きがいいじゃないですか。

ご存知の方もいるかもしれないが、これは1950年代に世界保健機関(WHO)がボルネオ島で実施したと伝えられる環境保全活動だったという。

こんなストーリーである。

1950年代初期、ボルネオ島でマラリアが流行したという。WHOは、殺虫剤のDDTを散布した。マラリア原虫を運ぶ蚊を撲滅するためだった。
その結果、マラリアの発生は減ったのだが、同時に、他の昆虫も駆除されてしまった。

引き続き、こんなことが起こったという。

ひとつは、ボルネオの住民の不眠症だ。
なぜか?
DDTによって、スズメバチがたくさん死んだ。
スズメバチは、屋根に住む毛虫を食べる習性があった。
そのスズメバチが減ったために、毛虫が大量発生して、屋根を食べまくった。
その当時のボルネオの屋根は、たぶん茅のようなものを敷いたものだったのだろう。
屋根がぼろぼろ落ちたり、風で飛んだりしたので、屋根にするためにWHOはトタンを配った。
ボルネオは熱帯地方で、雨期には激しい雨が降る。
トタンの屋根にスコールが落ちてくるので、住民は太鼓の下で暮らしているようなものだ。これではとても眠れない。
というわけで、不眠症が増えてしまったのだというストーリー。

もうひとつの話。

殺虫剤で死んだ蚊を、イモリが食べて死んでしまった。
毒だらけのイモリを猫たちが食べて、猫も死んでしまう。
その結果、ネズミが大量に増えてしまった。
すると、ネズミが媒介するチフスやペストなどが心配されるようになったのだ。
そこで、WHOは箱に猫を入れて、イギリス空軍の飛行機からパラシュートで空から投下するという作戦を考えだして、実行したんだと言われている。

ボルネオ島のお隣のバリ島では、お土産に「パラシュート猫」が売られているんだって。

出典www.artfesta.net

半分都市伝説みたいに尾ひれがついて、何万匹もの猫がパラシュートで空から降ってきたみたいな話になっているけれど、実際は20匹くらいだったらしい。

こういう話はあちこちにあるみたいだ。
「風が吹けば桶屋が儲かる」
というのも、同じようなストーリーだし、
「わらしべ長者」
なんてのも、構造は同じだ。

蝶々が羽ばたくと天気が変わるか、なんていうのは、バタフライ効果とか、カオス理論とか、複雑系といった分野と関係しているみたいだけれども、さっぱり分からない。

でも、「心」とか「人間関係」も、言ってみれば「猫投下作戦」みたいなところはあるんじゃないかと思うのである。

心も人間関係も、「Aが起これば常にBという結果になる」といったような、はっきりとした因果関係で動いているわけではない。

それこそ「猫投下作戦」のような、一見、関係ないようなことが影響しあっているのだと思う。

で、場当たり的な介入はたいがいいいことない、というのも共通しているようだ。

でも、このストーリーが広まったのは、「猫がパラシュートで降ってくる」という、なんとも言いがたいキュートさが要因だろう。



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