なにも書かれていない論文

5/03/2015

いろいろ 心理学

t f B! P L
最短の学術論文
というブログ記事を読んだ。

本文にまったく文字が書かれていないのが、心理学者のデニス・アッパーが書いた
“The unsuccessful self-treatment of a case of ‘writer’s block’”
「”書くことができない”ケースの自己治療の失敗」
という論文だそう。

pdfファイルで読んでみると、ほんとになにも書かれていなかった。

JOURNAL OF APPLIED BEHAVIOR ANALYSIS 1974, 7, 497 NUMBER 3 (FALL 1974)
と出典があるので、本当に掲載されたらしい。

査読者のコメント。
COMMENTS BY REVIEWER A I have studied this manuscript very carefully with lemon juice and X-rays and have not detected a single flaw in either design or writing style. I suggest it be published without revision. Clearly it is the most concise manuscript I have ever seen-yet it contains sufficient detail to allow other investigators to replicate Dr. Upper's failure. In comparison with the other manuscripts I get from you containing all that complicated detail, this one was a pleasure to examine. Surely we can find a place for this paper in the Journal-perhaps on the edge of a blank page.
「わたしはこの論文を、レモンジュースやX線をもちいて慎重に調べたが、デザインもライティングスタイルにもいささかの欠点も見つからなかった。修正なしで公刊するよう勧める。明らかにこれはいままで目にした中でもっとも簡潔な原稿だ。 そして他の研究者たちがアッパー博士の失敗を再現しうるだけの十分な内容を持っている。あなたから送られてくるこまごまと複雑なことが書かれた原稿とくらべると、この論文の査読はうれしいものだった。本論文は確かに学会誌に掲載されるべきだろう。たぶん白紙の端っこに」

この論文の追試まで報告されている。

GEOFFREY N. MOLLOY (1983) THE UNSUCCESSFUL SELF-TREATMENT OF A CASE OF "WRITER'S BLOCK": A REPLICATION. Perceptual and Motor Skills: Volume 57, Issue , pp. 566-566.

やはり本文にはなにも書かれていない。

次の追試は、ちょっと失敗したらしい。
BRUCE P. HERMANN (1984) UNSUCCESSFUL SELF-TREATMENT OF A CASE OF 'WRITER'S BLOCK': A PARTIAL FAILURE TO REPLICATE. Perceptual and Motor Skills: Volume 58, Issue , pp. 350-350.
少しだけ書きかけの本文がある。

メタアナリシスを試みたものまで。

Derrick C. Mclean and Benjamin R. Thomas (2014) UNSUCCESSFUL TREATMENTS OF “WRITER'S BLOCK”: A META-ANALYSIS. Psychological Reports: Volume 115, Issue , pp. 276-278.

こちらのページを見ると、Dr.Dennis Upperは35年の経験をもった認知行動療法をベースとしたサイコロジストだ。ユーモアを交えたカウンセリングをしてくれそう。

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