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ガルの骨相学

ギリシャ時代、心は脳の実質ではなく、脳室の中にあると考えられていた。ヨーロッパの医学に大きな影響を与えた医師ガレノスは、脳室に動物精気が貯蔵されていて、それが神経の孔を通って身体中をめぐると想定していたようだ。



ウィーンの医師ガルは、空っぽの脳室ではなく、脳そのものの方が大切なのだと考えた。ガルの創案した骨相学(phrenology)では、脳はさまざまな精神活動に対応するいくつもの部位の集まりで、その働きの違いが頭蓋の形に現れるとした。



脳は、色や言語、名誉、友情、芸術、殺人(!)、謙虚さ、高慢といった精神活動に対応した数十個の器官の集合体だと考えられた。

骨相学=フレノロジーとはフレン(心)の学という意味で、すなわち心理学を指す言葉だ。フレンには、横隔膜という意味もある。スキゾフレニア(統合失調症)とは、分裂した心ということになる。

(Franz Joseph Gall 1758年 - 1828年)
ガルは、幼少期から頭の形とその人の才能の関係に興味をもっており、暗記力の優れている子は、みんな眼が飛び出ているじゃないか、といったことに注目していたらしい。

ガル自身はこの学問を「cranioscopie」(脳蓋観察論)と呼んでいたが、シュプルツハイムという人が骨相学という言葉を広めて、大衆受けのよい「頭蓋骨占い」のような形にしてしまったようだ。

骨相学は、結婚の相性を調べるのに頭を測ったり、有名人の墓から頭蓋骨を盗む人が表れたり、というかたちで当時のヨーロッパ社会で流行した。そのうちどうもいかがわしいということになり、ガルは疑似科学を作った山師扱いされてしまった。

頭蓋骨の測定に用いられた装置(Psychograph)

しかし、ガルは錐体路系やそれが交差していることを見つけるなど、大脳生理学に大きな功績を残した人物でもある。骨相学は否定されたが、そのアイデアはのちの大脳局所論につながる。

"Phrenology and the Psycograph"

[参考文献]
山鳥 重『心は何でできているのか 脳科学から心の哲学へ』角川選書、2011年

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