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『子どもの将来は「寝室」で決まる』

篠田有子『子どもの将来は「寝室」で決まる』光文社新書、2009
を読んだ。

著者は20年にわたって、日本の家族がどう寝ているのかを5000件以上も調査してきた。その結果、寝かたの違いが、子どもの発達や親子関係、きょうだい仲に決定的な影響をおよぼしていることが分かったという。
「寝る子は育つ」というが、この研究が明らかにしたのは「こころの育ちは寝かた次第」ということなのだ。
「頭のよくなる寝かた」「生きる力が育つ寝かた」などが提案されている。ほんまか。

家族の寝かた

家族の寝かたに関する研究は1960年代、アメリカの人類学者コーディルとプラースらが東京や京都で行なった調査が始まりらしい。家族が同じ部屋で寝ることはコ・スリーピング(co-sleeping)と呼ばれ、文化人類学者によって研究されてきたのである。
彼らは、日本の家族323世帯の就寝形態の実態をライフサイクルの視点からから分析して、「日本の家族は他に空き部屋があるのにかたまって親子同室に寝るコ・スリーピング(co-sleeping)の習慣があり、日本人は、幼い時は両親と児童・少年期はきょうだいと共寝をし、独りで寝ることは、青年期と伴侶と死別した老年期のみである」と指摘した。彼らはさらに「コ・スリーピングの習慣は、家族成員間の情緒パターン(emotional patterns)に関連し、同時に文化間の相違を反映すると思われる」と述べ、日本の家族には欧米のような夫婦関係中心ではなく親子一体性という文化的な規範があると論じた[1]。 彼らが1966年『精神医学』“Psychiatry”に発表した「誰が誰と寝るか?日本の都市家族における親子の関わり」“Who Sleeps by Whom? Parent-Child Involvement in Urban Japanese Families.”という論文は、幼児といえども夫婦の寝室で寝せないアメリカ社会ではかなりの反響を呼んだ。[Wikipedia]
 幼少期から個室のベッドで寝るのが一般的な欧米社会から見れば、「川の字で寝る」ような習慣はかなり驚きだったようだ。『スポック博士の育児書』では、添い寝は子どもの独立心を育たなくしてしまうと主張されていた。

とはいえ、ヨーロッパでも中世では、家族や使用人などが同じひとつの部屋で寝食を共にしていたそうだから、寝かたというのは時代や文化によってずいぶん変化するものなのだろう。現代の日本では、個室で寝るという形態もずいぶん多いと思われる。

寝かたと家族の特徴

家族の寝かたのパターンは、3人家族では6種以上、4人家族になると23種以上にもなるさまざまなかたちがあり(驚きだ)、「寝ている空間的位置関係は、家族の情緒的人間関係をあらわす」という。
「誰と誰が」寝ているか、そしてその「距離」はどれくらいか、ということでパターンが決まる。
「隣接寝」はひとつのふとんやベッドで寝る、もっとも親密な距離。
「分離寝」は、同室に寝てはいても、別々のふとんやベッドで寝るスタイル。
「別室寝」はその名の通り。

(1)母親中央型
母親が真ん中に、左右に父親と子どもが寝るというスタイル。幼児は情緒的に安定しやすく、社会性や自立心も育つという。

(2)子ども中央型
父親は育児に参加し、子どもへの働きかけも多い。子どもの情緒は安定するが、社会性や自立心は遅れがち。

(3)父親別室型
育児に無関心な父親と、母子密着の母親。情緒は安定せず、自立心も未熟。

(4)子ども別室型
厳しい父親と、早く子離れしようとする母親。情緒は安定しないが、自立心は強い。

なんていうパターンが挙げられていた。
ちょっと決めつけっぽい書き方なのが気になるが、あくまで「傾向」や「そういうこともあるかもしれない」くらいに読んでおくのがよさそうだ。


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