映画を観ている被験者の脳をfMRIで測定することで、初発エピソードの精神病患者であっても、コントロール群とは情報処理の方法が異なっていることが分かったという。

両群に同じ刺激を提示するために、被験者はティム・バートンの『アリス・イン・ワンダーランド』を視聴させられたんだって。

Psychotic patients distinguished from controls while watching movie Alice in Wonderland | European College of Neuropsychopharmacology


fMRIはこれまで慢性期の精神病患者に用いられて、その脳の活動の違いなどが研究されてきた。しかし、初期の精神病における脳の活動パターンの違いを見るのはより難しい。器質的な変化といった「ハードウェア」の違いがないだけに、より微妙なところを見分ける必要があるんだという。

さらに、微妙な違いを見分けるために、患者とコントロール群に同じ刺激を提示しなくてはならない。その刺激は、現実の生活状況と同じく、豊かな情報を含んでいるべきだろう。

ということで、フィンランドの研究者たちは『アリス・イン・ワンダーランド』を見てもらおうと思いついたらしい。

3テスラMRIという装置を使って、46名の精神病の初回エピソードの患者(ただ一度だけの精神病を体験したという意味)と、32名の健康なコントロール群に映画を観てもらい、脳の活動を測定した。


すると、脳の楔前部(けつぜんぶ、英: Precuneus)の活動が大きく異なっていることが分かったという。

左大脳半球の内側面。オレンジ色の所が楔前部。

楔前部は、記憶や視空間意識、自己意識といった意識の諸相と関連している部位だそうだ。研究者によると、この部位は自己やエピソード記憶に関する情報を統合するセントラルハブとしての機能をもっていて、精神病患者の情報処理においても重要な役割を担っている。また、脳の活動の違いで80%の正確さで、精神病かどうかを判定できたとのこと。
今後、早期のスクリーニングや正しい診断に活用される可能性があるだろう。


それにしてもなぜ『アリス』だったんだろう。

いやまあ、わかるような気もしますが。