スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

5月, 2015の投稿を表示しています

シェイピングゲーム

シェイピング・ゲームというのは、犬やイルカなどの動物をしつけるときの手法をもちいて、言葉を使わずに誰かにある行動を教えるというものだ。 B.F.スキナーの行動分析がベースにあるので、スキナリアン・ゲームとも呼ばれている。スキナーは1970年代のタイム誌で、「20世紀でもっとも影響力のあった心理学者」に選ばれた人物だ。 シェイピングとは、行動を形づくるといった意味で、トレーナーが動物にやらせたい行動に向けて、少しずつ強化していく方法。 シェイピングについて学ぶために、トレーナー役と動物役に別れて、実際に行なってみた(100人くらいでやったから、なかなか騒がしかったけれども)。 4、5人で組んでもらい、動物役を1人選ぶ。 動物役はしばらく部屋の外に出てもらい、その間にトレーナー役の人たちで、目標とする行動と合図(拍手など)を決めてもらう。 できるだけ普段しないような、少し複雑な行動がいい。たとえば、椅子の上に登って万歳するとか、スマホを口でくわえてみるといった行動。 動物役に入ってもらい、少し離れたところからスタート。 言葉を使わずに、合図だけで行動を導いていく。トレーナー役は、動物役が少しでも目標行動に近い公道をしたら、合図をして強化していく。 制限時間を3分くらいに設定しておくのがちょうどよいようだった。 終わったら、動物役、トレーナー役いっしょにふりかえり。 動物役を交代して、もう一回試みてもいい。

ガルの骨相学

ギリシャ時代、心は脳の実質ではなく、脳室の中にあると考えられていた。ヨーロッパの医学に大きな影響を与えた医師ガレノスは、脳室に動物精気が貯蔵されていて、それが神経の孔を通って身体中をめぐると想定していたようだ。

『エレファント・ソング』

もうじき公開される映画『エレファント・ソング』、観てみたいので覚書代わりに。グザヴィエ・ドラン主演。 マイケルは美しい青年だった。14歳のときオペラ歌手である母が目の前で自殺し、その後、現在に至るまで精神病院に入院している。彼は病院で一番の問題児とされており、ゾウにまつわるあらゆることに異常なまでの執着を示していた。ある日、彼の担当医であるローレンスが失踪した。手がかりを知るのはマイケルだけ。マイケルのことをよく知る看護師長のピーターソンは「マイケルは茶化すだけで真実を話さない」と助言するが、院長のグリーンは彼に事情を聞くことを試みる。すると、話をする代わりに、と彼は条件を提示した。 1、僕のカルテを読まないこと。 2、ご褒美にチョコレートをくれることを約束すること。 3、看護師長をこの件から外すこと。 グリーンは条件を飲むが、マイケルはゾウやオペラについての無駄話で、話をそらすばかり。 「母を殺した」「ローレンス医師から性的虐待を受けていた」など、嘘か本当かわからないようなことをほのめかす。いつしかグリーンはマイケルの巧妙な罠に取り込まれていった…。 公式サイト エレファント・ソング 「 失踪した精神科医と、愛を渇望した青年との関係を描いた心理劇」とのことだけど、ここでいう心理劇はサイコドラマではなくて、 psychological mind gameということ。

利き手と発達障害、統合失調症

利き手と精神疾患の関連 右利き、左利きの違いは180万年くらい前からあった そうだけれど、 両手利きについて調べていて、次のような記事を見つけた。 左利きはADHDや統合失調症のリスクが高い |THE WALL STREET JOURNAL Kalle Gustafsson 以前は左利きの子どもが矯正されるようなこともあったが、最近ではそういうことはあまり行われなくなったので、自然な利き手の割合が推測できるようになったという。左利きの人の割合は全体の約10%、両利きの人は1%とのことだ。利き手の違いには、遺伝よりも子宮内の状態などの環境因の影響が大きいと考えられている。

統合型 HTP に表れる抑うつの心理特徴

[PDF]   統合型 HTP に表れる抑うつの心理特徴― ロールシャッハ テストのうつ病指標と 対処力不全指標からの検討― 浅野正 - 人間科学研究 (Bulletin of Human Science), 2015 The aim of the present study was to examine personality traits related to depression evident in synthetic house-tree-person (S-HTP) drawings by analyzing the association between S- HTP and the Rorschach Depression Index (DEPI) and the Coping Deficit Index (CDI ). A   ... Scholar アラートにひっかかってメールが届いたので読んでみた。 統合型HTPにおける遠近感の乏しさや統合性 の欠如などの抑うつを示す描画特徴には、対象者のパーソナリティ傾向としての、対人的活動の支障や社会生活に対処する能力の欠損が反映されて いると考えられる。そして、そのパーソナリティ の問題が抑うつ症状を引き起こすことがあると推測できる。   抑うつとつながりのあるパーソナリティ傾向の中でも、対処力不全指標に示されるような対人関係の機能不全や社会生活に対処する能力の欠損は、絵の描き方の中に表れやすいが、情緒面での脆さや悲観主義的な認知特徴は、対象者の性格傾向としてそれがあったとしても、描画の中に表現されにくいと考えられる。 のだそう。 3つのアイテムをうまく統合して一枚に収めてね、という課題にうまく対処できないということは、人間関係や社会生活での対処能力の乏しさとも関連しているだろうということ。 上の絵はゴッホの「夜の白い家」という作品。これくらい上手に家と木と人を描けても、現実生活はうまくいかないという例もなくはない。

びっくりするようなボディアート

たまたま見つけてしまったので。 日本人のアーティストの作品で、フォトショップなどの画像加工を使わずに直接、身体に描きこんだものらしい。 ボディスティッチ(手などに直接針と糸で刺繍をすること)みたいで、見ているとむずむずしてくる。 New Non-Photoshopped Body Art by Chooo-san こちらは寄生獣みたいですね。 Unbelievable Non-Photoshopped Body Modifications にはもっと怖いのがたくさん。

EDBs(感情駆動行動)とさかさま行動

不安とうつの統一プロトコル 「不安とうつの統一プロトコル ワークブック」 のハンドアウトを「診断と治療社」のサイトからダウンロードして読むことができる(マインドフルネスエクササイズのmp3ファイルも)。 不安とうつの統一プロトコル ワークブック http://www.shindan.co.jp/books/index.php?menu=05 EDBs(感情駆動行動) 行動:回避と感情駆動行動[行動]に取り組みます。 ここでは、嫌な気持ちになるのを恐れるばかりについつい状況や活動を避けてしまうこと(回避)や、感情につられて衝動的にとってしまう行動(感情駆動行動)をふりかえります。こうした行動が自分をさらに苦しめていないか、別の行動ができないかを考え、練習します。 感情障害への統一プロトコル |認知行動療法センター ワークブックと上記のページで、EDBs(感情駆動行動)という言葉が出てきた。 Emotion Driven Behaviors の略で、「感情にドライブされた行動」といったくらいの意味合いらしい。 恐怖を感じると逃げ出すとか、怒って攻撃するといったように、感情は特定の行動へと人間を駆り立てる。 こうした感情駆動行動(EDBs)は、役に立つこともあるが、場合によってはかえって生活に支障を来すことがある。自動車事故の後、しばらく怖くて自動車に乗れないのはあるいは適応的かもしれないが、いつまでたっても車のそばに行けなかったり、あるいは外出そのものにも恐怖を感じて引きこもるようになると、かえって困ったことになるだろう。 こうしたとき、「感情がそうさせようとするのとはまったく反対の行動をする」ことで、役に立たないEDBsの悪循環から抜け出すことができるのだそうだ。 広場が怖いから引きこもるんじゃなくって、あえて人ごみに出てみるといったこと。エクスポージャー的な意味合いもあると思われる。 わざとさかさまの行動をしてみるということで、自動的/機械的な反応をしないで意識的に反応を選ぶのがポイントのようだ。

『フォーカシングとともに(1)体験過程との出会い』

ニール・フリードマン『フォーカシングとともに(1)体験過程との出会い』日笠摩子訳、コスモス・ライブラリー、2004 フォーカシングとともに〈1〉体験過程との出会い 2004/1 ニール フリードマン 、  Neil Friedman 読んだので以下メモ書き。 初期のフロイトは、精神分析のプロセスを知的な理解と捉えていた。抑圧された記憶を早期して、意識的に理解することで、症状が解消されると考えていたのだ。しかし、トラウマについてただ知的に理解するだけでは治療が進まないことに気がつき、治療における体験性に注目するようになったという。精神分析における治療の体験性とは、抵抗と転移である。『快感原則の彼岸』ではフロイトはこう書いている。 抑圧された材料を今現在の体験として繰り返さなくてはいけない。・・・患者は、自分の忘れた人生の一部を再体験しなくてはならない。(引用は『フォーカシングとともに』から) フロイトは心理療法に体験性が重要であることに気がついていたが、それでもまだ認知的な側面を重視していたとフリードマンは言う。 その後、ランク、フェレンツィ、ライヒといったフロイトの後継者たちが、体験性をより重視した精神分析を実践しはじめた。また、フロム–ライヒマンやハリー・スタック・サリヴァンは治療者と患者が体験する対人関係そのものに治療的な力があることを強調した。 ロジャーズとジェンドリンが心理療法に関して行なった仕事は、次の3つの時期に分けられている。 第一期は、非指示的心理療法の時期。セラピストは、助言や自身の意見、感情の表現を避ける方がいいとされた。 第二期は、反射の時期。カウンセラーはクライエントの身になり、クライエントの感情に寄り添う。 ジェンドリンが登場し、第三期の体験的心理療法の時期になる。セラピストはもはや中立的な存在ではない。 今日ではクライエント中心のセラピストは『純粋性 genuiness』をセラピーの第一条件とし、セラピストの表現性と自発性がセラピーの主要用件となった(ジェンドリン)。 (セラピーでは)私は本物でなくてはならない。私が透明であり真実な人間であるとき、そしてそれがクライエントにも伝わるときにのみ、クライエントは自分の中の真実を発見することができる(ロジャー...

短期動機づけ面接が禁煙を助ける

Brief Motivational Interview May Help People Quit Smoking | PsychCentral 「短期動機づけ面接が禁煙を助ける」という記事。 動機づけ面接とは、クライエントのなかにある矛盾に目を向けて明らかにすることで、クライエントがそれを解消する方向に向かうように援助していくアプローチ。『動機づけ面接法ー基礎・実践編』だけ以前読んだ記憶がある。 Photograph by Lewis Hine, 1910 研究では、53名の喫煙者(一年以上に渡って一日10本以上の煙草を吸い、やめる気がない人たち)にそれぞれ20分、動機づけ面接を受けてもらった。対照群と比べると、動機づけ面接の方が効果があったとのことだが、実際にどれくらいの人がやめたのかは記されていなかった。 以下、動機づけ面接に関するブックリスト。原井先生の本を読んでみたい。 動機づけ面接法―基礎・実践編 2007/6 ウイリアム・R. ミラー 、  ステファン ロルニック クライアントがアンビバレントな状態にあるとき、あなたはどう援助しますか?なぜ人は変わることができるのでしょうか?その答えが…本書の中にあります。依存症の治療に革命をもたらし、精神科を越えてあらゆる領域で応用されている画期的面接法!世界標準の技法となった「Motivational Interviewing」の邦訳、ついに刊行。 動機づけ面接法 実践入門 「あらゆる医療現場で応用するために」 2010/5/20 ステファン・ロルニック 、  ウィリアム・R・ミラー 動機づけ面接トレーナーの中でも卓越した経験と実績を誇る著者の経験に基づき、動機づけ面接を確実に身につけるための練習法を詳しく紹介。 動機づけ面接を身につける 一人でもできるエクササイズ集 2013/11/20 デイビッド・B・ローゼングレン、  原井 宏明 動機づけ面接法 応用編 2012/9/4 ウイリアム・R・ミラー、  ステファン・ロルニック 様々な対象(思春期青年期、カップル、重複障害...

あなたの幸せを見つけるヒントになる7つの名言

幸福に関する7つの思慮深い言葉—どれが本当に正しいの? 7 Wise Happiness Quotes — But Which Ones Are Really True? | PSYBLOG ということで、いくつかの引用が掲載されていた。 引用部分だけ孫引きしてみる。 “There is an unspeakable dawn in happy old age.” – Victor Hugo 「幸せな老年にはいいしれない黎明がさす」ビクトル・ユゴー そんな老年期を迎えたいものです。 “Choose a job you love, and you will never have to work a day in your life.” ― Confucius 「あなたの愛することを仕事に選びなさい。そうすれば、一生労働しなくてもいい」孔子 “Happiness quite unshared can scarcely be called happiness; it has no taste.” ― Charlotte Brontë 「まったく分かち合われなかった幸福は、ほとんど幸福と呼ぶことはできない。そんなの味もそっけもない」シャーロット・ブロンテ “Money may not buy happiness, but I’d rather cry in a Jaguar than on a bus.” — Françoise Sagan 「お金で幸福は買えないでしょう。けど泣くならバスじゃなくってジャガーの中がいいわ」フランソワーズ・サガン そういうもんでしょうか。よく分からん。 “Happy girls are the prettiest.” ― Audrey Hepburn 「幸せな娘がいちばん可愛いのよ」オードリー・ヘップバーン 彼女がそういうならその通りなのだ。 “To keep the body in good health is a duty… otherwise we shall not be able to keep our mind strong and clear.” – Buddha 「身体を健康に保つように勤めよ・・・でなければ心を強く明晰にしておくことはできないだろう」仏陀 ...

暗い日曜日、あるいは音楽が人の感情に与える影響

自殺をまねく「暗い日曜日」 Gloomy Sunday(暗い日曜日)曲は1933年にハンガリーで発表された ヤーヴォル・ラースロー作詞、シェレッシュ・レジェー作曲の歌だ。薄曇りの日曜日、恋人を失った女性が嘆いて自殺を決意するといった内容の曲で、あまりに暗くて、この歌を聴くと自殺者が出ると有名になってしまった。この曲のレコードを抱いてドナウ川に飛び込んだ人だとか、歌詞を引用して遺書にした人がいたらしい。 この曲を聴いて、世界中で数百人が自殺したとも、いやいやそれは都市伝説だとも言われている。第二次世界大戦前の暗い世相が影響したとも考えられるが、ハンガリー政府によって放送禁止になったそうなので、やはりこの曲が人の感情に与える影響が大きかったのだろう。 国の自殺率順リスト を見ると、人口10万人あたりの自殺者数でハンガリーは11位となかなか高い(ちなみに日本も13位)。 音楽と古典的条件付け 先日、古典的 (レスポンデント) 条件付けについて話をする機会があった。メトロノームの音を聞いただけで涎を出すようになった例のパブロフの犬の話である。そのなかで、失恋したときによく流れていた音楽をあらためて聞くと、そのときのせつない気分がよみがえるよね、といった話が出た。 「失恋」はたいていの人にとってつらいので、これは無条件刺激だろう。悲しみという身体と感情の反応が無条件反応となる。音楽が厳密な意味で中性刺激といえるかどうか分からないが、同時期に流れていることが多いと、条件づけられていくのだろう。 音楽と癒し ちなみに「世界一癒される音楽」として科学的に認定されたのは、マルコニ・ユニオン作曲のWeightless(無重力)という曲だそう。眠れない夜にもよさそう。 Weightlessは2011年に the British Academy of Sound Therapyとのコラボレーションで作成された。 the Mindlab institutionの科学者の研究では、この曲を聴かせることで、不安が65%減少し、脈拍も35%下がったという。 『 こころを癒す音楽 』 (こころライブラリー) 北山 修 (編)、2005年

ローリーズストーリーキューブス

ネットでRory's Story Cubes(ローリーズストーリーキューブス)というおもちゃを見かけた。 即興でストーリーを創作して楽しむ、ポケットサイズのお話サイコロです。このゲームでは競ったり勝敗を決めたりすることはありません。お一人でもたくさんでも、子どもも大人もお楽しみ頂けます。 9つのサイコロのそれぞれの面にイラストが描いてあるとのことなので、54種類のイメージの組み合わせからストーリーを考えることになる。 TAT( 絵画統覚検査)に似ているかもしれない。 なかなか頭を使いそうな遊びですね。 公式サイトは、 Rory's Story Cubes(ローリーズストーリーキューブス) ついでに思い出したのでメモ。 SOCIAL COGNITION AND OBJECT RELATIONS SCALE - GLOBAL RATING METHOD (SCORS-G) TRAINING MANUAL Mark J. Hilsenroth, Michelle Stein, & Janet Pinsker TATで語られた物語から、被験者の対象関係を読み取ろうとするスケール。 *Complexity of representation of people 人物表現の細やかさ 1=自己中心的で、思考や感情の、もしくは自己と他者の特質の混乱が見られる。 3=人物のパーソナリティや内的な状態は、比較的単純な方法で、良いと悪いに分裂して表現されるなど、ごくわずかしか推敲されていない。 5=自己や他者の表現はステレオタイプで独創性を欠いているものの、良い特徴と悪い特徴のどちらもを統合することができていて、他者への影響に気づいている。 7=心の状態に十分意識が向いており、自己や他者への洞察があり、かなり細かな違いに気がついてそれを示すことができる。 こんな感じだった。

面白心理テストMMPI-C(開発中)で子供の性格がピタリと当たる

何年か前にネットで見つけて適当に訳してみた子ども版のMMPI(という心理テスト)の開発版、という名目の冗談。 もともとのページが行方不明なのです。 --- MMPI C 質問項目 ご存知かもしれませんが、 MMPI の子ども向けバージョンの開発が試みられています。以下に挙げるのは、検討中の質問項目とスコアリング案です。 Taro Taylor

JOEY ALEXANDERくん(10歳)

ううむ。すごい。 JOEY ALEXANDERくんという10歳のジャズピアニストだそう。 10年、という年月について、あれこれ考えさせられた。 演奏が終わったあとのトークはかわいらしいです。最後までぜひ。

試行錯誤と洞察の違いに迫るーマシュマロチャレンジをやってみる?

ソーンダイクの猫の問題箱=試行錯誤 アメリカの心理学者エドワード・ソーンダイク(1874-1949)は、動物の学習行動を実験するために「猫の問題箱」を作成して実験したことで知られている。猫の問題箱とは、猫を閉じ込める檻のようなもので、中の紐を引っ張らないと扉が開かない仕組みになっている。閉じ込められた猫は、外にでようとあれこれ試みる。偶然、紐を引っ張ると外に出て餌を食べることができるのである。 ソーンダイクによると、猫の行動は何かの見通しをもったものではなく、試行錯誤にすぎないという。 Thorndike’s Puzzle-Box 横軸が試行回数(猫が箱に閉じ込められる回数)で、縦軸が脱出までにかかった時間となる。回数を重ねると脱出時間は短くはなるが、それでもたまに時間がかかっている。 ソーンダイクはこうした学習を、試行錯誤学習と呼んだ。刺激状況(S)と反応(R)の結びつきが強められる(あるいは弱められる)ことで学習が起こるのである。これは、後の行動主義の考え方の基礎となっていく。 ケーラーによるチンパンジーの洞察学習=ひらめき ドイツの心理学者ウォルフガング・ケーラー(1887-1967)は、チンパンジーを使った実験を通じて、類人猿は試行錯誤ではなく洞察学習をすることを発見した。 下の写真を見ると、チンパンジーの手の届かないところに、バナナが吊り下げられている。どうしたかというと、片隅にあった箱をいくつか重ねてよじ登り、バナナを手に入れたのだ。これは試行錯誤によってできたことではなくて、チンパンジーは箱を重ねると手が届くと「はっとひらめいた」わけだ。 Memoir Wolfgang Köhler より Memoir Wolfgang Köhler(ウォルフガング・ケーラーの思い出)というページを読むと、心理学の実験に類人猿を使った最初の研究者の一人がケーラーだそうだ(それまでは、犬や猫、鳩、ラットなどが用いられた)。 マシュマロチャレンジ 先日、ひさしぶりにグループでマシュマロチャレンジをしてもらう機会があった。マシュマロチャレンジとは、スパゲッティの乾麺と90センチのテープ、一つのマシュマロを使って、できるだけ高いタワーを建てることを目標にして行う、チームビルディングの手法だ。詳しくは、下記のTEDのレクチャー...

うつ病と双極性障害の人々は、悲哀を違ったように感じている

うつ病と双極性障害の人々は、悲哀を違ったように感じている People with Depression and Bipolar Disorder Feel Sadness Differently うつ病も双極性障害(そううつ病)も、どちらも極度の悲しみや絶望を体験する時期がある。そのときはどちらの病気か区別するのが難しいほど似ているが、fMRIで調べると、どうやら悲哀の体験の在り方が違うらしいという記事。かなりはっきりとした差異が認められるので、鑑別に役に立つのではないかということらしい。 抑うつ的でない状態のときは、双極性障害の患者は(うつ病患者と比較すると)、感情調節に関わる背外側前頭前皮質(Dorsolateral Prefrontal Cortex)の活動増加を示す。 逆に、抑うつ状態のときには、双極性障害の患者は、前帯状皮質(Anterior cingulate cortex) の活動が低下するという(下の赤色の部分)。これは、脳の認知と感情の部位をつなぐハブのような役割をしているところとのこと。

『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

マイケル・キートンが、彼自身を重ねることができるような、ブロードウェイでの成功を願う初老の男を演じている。 リーガン・トムソンはかつてヒーロー映画の「バードマン」役でスターになった。しかしその後は作品に恵まれず、結婚生活も破綻し、気づけばぱっとしない初老の男になっていた。 再起を決意したリーガンは、無謀にもブロードウェイの舞台で芸術的な作品を作って認められようとする。 レイモンド・カーヴァーの「愛について語るときに我々の語ること」を舞台化しようとしたのだ。 けれどもそうは話はうまく進まず、実力派俳優のマイクの身勝手さに振り回され、娘のサムともぎくしゃくしてくる。 「パパ現実を見て、しがみつくのは 無視されるのが怖いのよ」 娘からこう言われても何も言い返せない。 やっとのことでこぎつけたプレビュー講演も、マイクの暴走やリーガンの失敗でさんざんな目に合う。 追いつめられたリーガンは、現実と幻想のはざまで「バードマン」の声を聴くようになる。バードマンは、いわばリーガンのオルターエゴであり、かつての栄光を象徴している。しかしブロードウェイで評価されたいリーガンにとっては、バードマンは安っぽい通俗的なヒーローでもあり、自分とは認めがたい存在でもあるようだ。リーガンにとっての本当のあこがれは、レイモンド・カーヴァーなのだろう。 リーガンは、うまくいかないときには「超能力」を使って部屋の中の物をひっくりかえして鬱憤をはらす(友人の視点から見れば、単に部屋でかんしゃくを起こして暴れているだけなのだが)。「超能力」はリーガンの子どもっぽい万能感を表しているように見える。 バードマンの声に抵抗しながらも、リーガンは半分、バードマンに同一化しているわけだ。 「映画スターの栄光を思い出せ」 「お前はバードマンだ。お前は神だ」 といったバードマンの声で、リーガンはついに・・・ といったストーリーの映画。 あたかもノーカットで撮影しているように見えるカメラワークが、独特の浮遊感を表現していて、リーガンの幻想を際立たせていた。

PTSDは加齢を早める

恐怖で白髪になる? 子どもの頃に、エドガー・アラン・ポーの『メエルシュトレエムに呑まれて』(1841年)という小説を読んだことがある。漁師の兄弟が、海に出てメエルシュトレエムと呼ばれている巨大な渦巻きに巻き込まれるというストーリーだった。 大渦にとれられた船はぐるぐると回転しながらしだいに渦の真ん中に引き込まれていく。死を覚悟した漁師だが、よくよく渦とのみこまれていくたくさんのものを観察していると、次のようなことに気づいた。体積が大きいものや球状のものは早く渦の中心に落下するが、円柱状のものは飲み込まれるのに時間がかかるようなのだ。 彼は兄にそれを伝えて脱出しようとするが、兄は恐怖で錯乱しており、船を離れることはできなかった。漁師は自分を円柱状の樽にしばりつけて海に飛び込む。船はすぐに飲み込まれてしまったが、樽と漁師は飲み込まれずに、渦が消えるまでもちこたえることができた。 漁師はこのように言う。「恐ろしさに髪は真っ白になり、まるで老人のように変わってしまって、助けてくれた漁師たちはだれも私だとわからなかった」(ストーリーと挿絵は Wikipedia より)。 この小説を読んだときに、恐怖によって髪が真っ白になったり、皺だらけになるなんてことがあるのかと不思議に思った記憶がある。 PTSDが加齢を速める PTSD Tied to Accelerated Aging |Psyche Central という記事では、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が、加齢を速めているという研究が紹介されていた。 6つの研究で明らかになったのは、PTSDの人々は白血球のテロメア(telomere)の長さが減少しているということだという。テロメアとは、染色体の末端部にある細胞分裂に関わる構造で、細胞分裂を繰り返すと短くなる。だから、細胞の寿命に関係してるのだそう。 Telomere また、C反応性蛋白(C-reactive protein)と腫瘍壊死因子 α (tumor necrosis factor alpha)のような炎症誘発マーカーの増大とPTSDが関連していることも研究で明らかになったという。 よく分からない用語が出てきたので調べてみる。C反応性蛋白というのは、体内で炎症反応や組織の破壊が起きているときに血中に現れるタンパ...

Bloggerの編集ボタンを消す

Bloggerのブログパーツについている編集ボタンを消す方法。 編集画面から「テンプレート」へ。 「HTMLの編集」から、.xmlファイルの編集に入る。 CTL+Fで検索窓が出てくるので、下記を探しては消す。  <b:include name='quickedit'/> 以上、覚え書き。

児童虐待の時効見直し=性的被害対象、成人時まで停止

児童虐待の時効見直し=性的被害対象、成人時まで停止 というニュースを読んだ。虐待サバイバーの訴訟が、時効により却下されたことなどへの異議を受けてのことだと思う。  厚生労働省によると、2013年度に全国の児童相談所に寄せられた相談件数のうち、性的虐待は全体の2.1%にとどまる。性的虐待の実態に詳しい寺町東子弁護士によると、幼い被害者が虐待の意味を理解するのは早くて思春期以降。加害者が親や兄弟、親族の場合、相談相手もいないことから、表面化していない虐待もあるという。  さらに成人後、虐待を原因とする心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを発症しても、既に民事で損害賠償請求権が消滅する除斥期間(20年)、刑事で公訴時効(強制わいせつ罪7年)の期間がそれぞれ経過していれば、被害者が「泣き寝入り」するしかないケースもある。 幼少期〜児童期の虐待体験は、子どもの心と脳に大きな影響を与える。青年や成人になってからも、精神的な問題やパーソナリティ、対人関係の問題などの要因となりうる。  これまでの研究では、子ども時代の虐待やトラウマは、青年や成人になってからも、抑うつや不安障害、非行や犯罪などの行動化を引き起こすリスクファクターであることが示唆されている。 多くの被虐待児は大人になれば逃れられ、自由になれるという希望にしがみついている。しかし強要的コントロールという環境の中で形成された人格は成人の生活によく適応できない。児童虐待経験者は基本的信頼、自立およびイニシアティヴに基本的な問題を積み残したままである。児童虐待経験者は自己管理、認知と記憶、自己規定および安定した人間関係を形成する能力に大きな欠陥があるというハンディキャップを負って、自立と親密関係とを確立するという成人期初期の仕事に近づく。児童虐待経験者は依然その児童期に囚われている人である。新しい人生を築こうとすると外傷に再会してしまう。 ジュディス・ハーマン『 心的外傷と回復 』みすず書房、1999年、172頁 3歳から8歳まで叔父から受けた性的虐待。札幌高裁は「魂の殺人」の主張を容れ被害者の請求、大半を認める という去年の記事では、1994年9月の判決について報告されている。 地裁判決が民法の形式的な解釈に留まっていた一方で、高裁判決は真に保護すべきもの、つまり被害者の人権を考慮し、...

『子どもの将来は「寝室」で決まる』

篠田有子『 子どもの将来は「寝室」で決まる 』光文社新書、2009 を読んだ。 著者は20年にわたって、日本の家族がどう寝ているのかを5000件以上も調査してきた。その結果、寝かたの違いが、子どもの発達や親子関係、きょうだい仲に決定的な影響をおよぼしていることが分かったという。 「寝る子は育つ」というが、この研究が明らかにしたのは「こころの育ちは寝かた次第」ということなのだ。 「頭のよくなる寝かた」「生きる力が育つ寝かた」などが提案されている。ほんまか。 家族の寝かた 家族の寝かたに関する研究は1960年代、アメリカの人類学者コーディルとプラースらが東京や京都で行なった調査が始まりらしい。家族が同じ部屋で寝ることはコ・スリーピング(co-sleeping)と呼ばれ、文化人類学者によって研究されてきたのである。 彼らは、日本の家族323世帯の就寝形態の実態をライフサイクルの視点からから分析して、「日本の家族は他に空き部屋があるのにかたまって親子同室に寝るコ・スリーピング(co-sleeping)の習慣があり、日本人は、幼い時は両親と児童・少年期はきょうだいと共寝をし、独りで寝ることは、青年期と伴侶と死別した老年期のみである」と指摘した。彼らはさらに「コ・スリーピングの習慣は、家族成員間の情緒パターン(emotional patterns)に関連し、同時に文化間の相違を反映すると思われる」と述べ、日本の家族には欧米のような夫婦関係中心ではなく親子一体性という文化的な規範があると論じた[1]。 彼らが1966年『精神医学』“Psychiatry”に発表した「誰が誰と寝るか?日本の都市家族における親子の関わり」“Who Sleeps by Whom? Parent-Child Involvement in Urban Japanese Families.”という論文は、幼児といえども夫婦の寝室で寝せないアメリカ社会ではかなりの反響を呼んだ。[ Wikipedia ]  幼少期から個室のベッドで寝るのが一般的な欧米社会から見れば、「川の字で寝る」ような習慣はかなり驚きだったようだ。『スポック博士の育児書』では、添い寝は子どもの独立心を育たなくしてしまうと主張されていた。 とはいえ、ヨーロッパでも中世では、家族や使用人などが同じひとつ...

最早期記憶はあなたが考えているより古いかもしれない

アブストラクトだけ読んだ。 Your earliest memory may be earlier than you think: Prospective studies of children’s dating of earliest childhood memories. By Wang, Qi; Peterson, Carole Developmental Psychology, Vol 50(6), Jun 2014, 1680-1686. 最早期記憶は考えられていたよりもずっと古いだろう:幼児期の最早期記憶を子どもがいつのこととみなすかについての前向き研究  最早期記憶は、おおよそ3.5歳くらいになると考えられてきたが、この調査研究ではより早期にさかのぼることができるのではないかということが示唆されている。 被験者となった子どもたちは最早期記憶についてインタビューされた。一年後、二年後にも同じインタビューを受けたが、後になるほど、同じ出来事の時期を遅く主張する傾向が見られたという。 古い記憶は、自分が思っている以上に幼少期の出来事なのかもしれない。

人狼ゲームと嘘の心理学、嘘のつき方と見破るコツ

ワンナイト人狼 連休中に旅行した夜に、子どもたちと「ワンナイト人狼」というゲームをした。ご存知の方も多いだろうけれど、参加者の中に何名か「人狼」が紛れ込んでいるので、皆で話合って誰が人狼かを当てる、という遊びである。専用のカードなども売られているが、トランプで十分代用できるし、なんだったら適当な紙に手書きで「狼」などと書いて使っても問題ない。

なにも書かれていない論文

最短の学術論文 というブログ記事を読んだ。 本文にまったく文字が書かれていないのが、心理学者のデニス・アッパーが書いた “The unsuccessful self-treatment of a case of ‘writer’s block’” 「”書くことができない”ケースの自己治療の失敗」 という論文だそう。 pdfファイル で読んでみると、ほんとになにも書かれていなかった。 JOURNAL OF APPLIED BEHAVIOR ANALYSIS 1974, 7, 497 NUMBER 3 (FALL 1974) と出典があるので、本当に掲載されたらしい。 査読者のコメント。 COMMENTS BY REVIEWER A I have studied this manuscript very carefully with lemon juice and X-rays and have not detected a single flaw in either design or writing style. I suggest it be published without revision. Clearly it is the most concise manuscript I have ever seen-yet it contains sufficient detail to allow other investigators to replicate Dr. Upper's failure. In comparison with the other manuscripts I get from you containing all that complicated detail, this one was a pleasure to examine. Surely we can find a place for this paper in the Journal-perhaps on the edge of a blank page. 「わたしはこの論文を、レモンジュースやX線をもちいて慎重に調べたが、デザインもライティングスタイルにもいささかの欠点も見つからなかった。修正なしで公刊するよう勧める。明らかにこ...