ポリアモリー 複数の愛を生きる

深海菊絵『ポリアモリー 複数の愛を生きる』平凡社

を読んだ。

ポリアモリー(polyamory)とは、ギリシャ語の「複数」(poly)ラテン語の「愛」(amor)に由来する造語で、複数の人と同時に愛情関係をもつことを意味している。浮気や不倫とは違って、「誠実に」複数の相手と向き合うのがポリアモリーなのだという。

Start of polyamory contingent at San Francisco Pride 2004
Start of polyamory contingent at San Francisco Pride 2004

かつては「ノンモノガミー(非一夫一婦制)」とか「オープンマリッジ」と呼ばれていたが、90年代ごろから「ポリアモリー」という言葉が広がってきた。

本書の「はじめに」で次のような質問があった。YesかNoかで、正直に回答せよ、とのことだ。

  1. 交際相手がいるのに他の人を好きになったことがある。
  2. 夫や妻がいるのにデートしたいと思う相手が現れたことがある。
  3. すでにパートナー(恋人・配偶者)がいる人を好きになったことがある。
  4. じつは「浮気」をしたことがある。
  5. じつは「二股」をかけたことがある。
  6. じつは「不倫」したことがある。

あなたのポリアモリー度を測る心理テスト、になりそうですね。

江國香織の『きらきらひかる』という小説が取り上げられていた。そういえば、以前、読んだことがある。そのころは「ポリアモリー」という言葉は知らなかったけれど、恋人/夫婦関係にはいろいろなかたちがあるんだなあと思った記憶がある。

こんなストーリーだった。
親のすすめで、医師の男性・睦月と見合いをすることになった笑子。しかし、その席で2人は互いの秘密を告白してしまう。笑子はアルコール依存症であること、睦月は同性愛者であることを。初めは戸惑う2人だが、結婚を決めたのだった。2人なりに穏やかな生活を営むが、早く子供をと望む周囲の声に笑子は追いつめられていく。一方で笑子と、睦月の恋人・紺との間には「睦月を愛する者同士」としての奇妙な友情が育まれていく。3人の幸せと、現実との折り合いとの間で苦悩した結果、笑子は睦月の同僚の産婦人科医にある突飛な相談を持ちかける。[wikipedia]
映画化もされていて、豊川悦司が夫役を演じたのだって。

ポリアモリーの特徴

ポリアモリーにはつぎのような特徴があるという。

合意に基づくオープンな関係

モノガミー的な関係においては、パートナー以外の人との関係をわざわざ相手に告白する人は少ないだろう。そうした関係は「浮気」や「不倫」と呼ばれて、道徳的に非難されることになる。

ポリアモリーでは、「あなた以外に愛する人がいる(その可能性がある)」ことを率直にパートナーに伝えることからはじまる。

身体的・感情的に深く関わり合う持続的な関係

単に性的な関係を目的としているのではなく「感情的なつながり」が重視されている。また、「一夜限り」の関係ではなく、持続的な関係が目指されていて、複数のパートナーとともに生活して「家族」がつくられることもあるのだという。

所有しない愛

モノガミー的な関係はいわば排他的な愛を前提としている。ポリアモリーでは、「パートナーになる」ことと「所有すること」は異なると考えられている。

結婚制度に囚われない自らの意思と選択による愛

社会規範や婚姻制度を漫然と受け入れるのではなく、自らの意思と選択による愛情関係であるということも、ポリアモリーの大きな特徴。

焼きもちやいたりしないんだろうか、といった疑問は当然起こるが、ポリアモリー関係における「嫉妬」や「性」「家族」についても、インタビューに基づいて考察されていた。

The infinity heart is a widely used symbol of polyamory
The infinity heart is a widely used symbol of polyamory

*参考
複数人と同時に性愛関係を築く「ポリアモリー」とは? 浮気や不倫と異なる3つの理由