私たちの生活と切り離せないSNS

スマホとソーシャルメディア(SNS)は、もはや私たちの日々の暮らし、そして子どもたちの世界と切り離せない存在になっています。友だちとのコミュニケーションや情報収集に欠かせませんが、一方で「使いすぎは良くない」と感じている親御さんも多いのではないでしょうか。

これまで、SNSが若者の心の健康(メンタルヘルス)に与える影響については多く議論されてきました。しかし、アメリカの公共ラジオ局NPRが最近報じた最新の研究は、SNSが「認知機能」、つまり子どもたちの学習や記憶といった「頭の働き」にも影響を及ぼしている可能性を示唆しています。

今日は、その研究を参照しながら、SNSが若者の脳と「深く考える力」にどのような変化をもたらしているのか、そして私たちがどう対応すべきかを見ていきましょう。


1. 最新研究が示す「SNSと学習能力の関連」

NPRの記事によると、大規模な追跡調査の結果、SNSの使用時間が増加した10代のグループは、使用時間が少ないグループに比べて、思春期の初期段階で実施された読解力、語彙力、記憶力に関するテストのスコアが低いことがわかりました。

この研究は、数千人の子どもたちを長期にわたって観察し、彼らのSNS利用パターンと認知能力の発達を比較したものです。専門家たちも、学校現場から聞こえてくる「子どもたちが以前ほどうまく集中できなくなった」という声と、この研究結果が一致していると指摘しています。

この記事が重要視しているのは、これまでの議論が精神衛生に集中しがちだったのに対し、「学習そのものへの影響」を理解することの必要性です。特に学校でのスマホ利用制限の議論が世界中で高まっている今、この研究は具体的な対策を講じる上での重要な根拠となり得るからです。

2. なぜ、情報処理の「質」が変わってしまうのか

SNSの利用が認知機能に影響を与える背景には、SNSのコンテンツが持つ独特の性質が関係しています。

短い刺激の連続に慣れる脳

SNSのフィードは、短い動画やテキストが次々と流れ、ユーザーはそれを高速でスクロールします。脳は、新しい刺激が次々と入ってくる状態に慣れてしまい、情報を「流し読み」する習慣がついてしまいます。

しかし、長い本や複雑なテキストを読む際には、情報をじっくりと保持し、複数の概念を関連付けて深く理解する「深層読解」という能力が必要です。SNSで訓練された脳は、情報を「流し読み」し、すぐに次の刺激へ移ることに慣れてしまい、その結果、長期的な記憶形成や集中力の持続が難しくなる可能性があるのです。

また、10代の脳は、衝動的な行動を抑制する前頭前野がまだ発達途上にあり、SNSで得られる即時的な報酬(「いいね」など)に強く反応しやすい特性があります。この点については、NPRの別の動画(Teens are known for making bad decisions. But it's not entirely their fault. Here's why.)でも、10代の衝動的な決断の背景にある脳科学的な理由が解説されており、SNSの利用がその特性と絡み合い、習慣化を加速させている側面も示唆されます。

3. 親や教育者が今日からできる具体的な対応策

この研究結果は、私たちに「デジタル機器との付き合い方」を見直すきっかけを与えてくれました。大切なのは、SNSと健全に共存するための「使い方」を教えることです。

  • 「集中時間」を確保するルール: 勉強中はもちろん、家族の食事中や就寝前など、スマホを手の届かない別の場所に置く時間を明確に決めましょう。脳がSNSの刺激から解放され、より長く集中する練習になります。

  • 「目的」を意識させる対話: 単に「スマホは体に悪いからダメ」と言うのではなく、「集中力を高めるための脳のトレーニングだよ」と、なぜ制限が必要なのかを子どもに伝え、自己管理の意識を促します。

  • オフライン活動への誘導: SNSに費やされがちな時間を、本を読む、スポーツをする、自然の中で過ごすなど、集中力を必要とするオフラインの活動に置き換えるよう促しましょう。

この研究結果は、私たち大人が、子どもたちの発達段階に合わせてデジタル利用の境界線を引くことの重要性を教えてくれます。

まとめ:賢く利用するために

SNSは、現代を生きる上で必要なスキルも提供してくれますが、その代償として「深く考える力」や「集中力」が削がれてしまうなら、それは大きな損失です。

子どもたちが情報社会を賢く生き抜き、同時に学びを深めていけるよう、大人が導いていく責任があると言えるでしょう。




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