卒アル写真で将来はわかる 予知の心理学』(マシュー・ハーテンステイン著、森嶋マリ訳、文藝春秋、二〇一四年)

続き。

第4章「嘘をつく奴の顔はここが違う」

マーク・トゥエインはこう書いたそうだ。
誰もが嘘をつくーー毎日、毎時間、起きていても、寝ていても。夢みるときも、幸福の絶頂でも、悲嘆にくれながらも。『嘘術の崩壊』
私たちは、平均すると一日に二回(少なくとも一度は)、人生を通じておおよそ二万八〇〇〇回の嘘をつくことになるんだそうだ。

Netflixで『ライ・トゥ・ミー Lie to me』を見つけたので、なんとなく視聴しつつ、本を読み進める。このドラマは、表情に関する研究で有名な心理学者のポール・エクマンがモデルになっている。




なぜ嘘を見抜くのが苦手なのか?

一般的には、嘘かどうかを判断する正解率は50%くらいだそうだ。つまり当てずっぽうってわけ。私たちはなぜ嘘を見抜けないのか?

  • 知らないでいた方が幸せ
  • シグナルと雑音を区別できない
  • 進化のせい
  • 親のせい
  • たいていは回答が得られない

なんてことが書かれていた。

進化のせいって、なんだそれと思うが、知らないでいたほうが生きのびる可能性が高いなら、嘘に気がつきにくいように進化するってことだろうか。

目をそらすとか、そわそわするといった、通常、「嘘をついている手がかり」とみなされるようなしぐさも、実際のところ、たいした根拠にはならないんだそうだ。

科学的に嘘を見抜く手がかり

ポール・エクマンは、嘘に関して次のようなテーマで研究を行った。
重度のうつ病の症状を訴えていた患者が、気分が良く、もう自殺を考えることもないから、一日だけ帰宅を許可してほしいと言ったら、その患者の話がほんとうかどうか、どうしたらわかるか
メアリーという、うつ状態の女性の患者が、このようなことを訴えたのだそうだ。メアリーはそれまでも自殺しようとしたことがあったので、その危険性をアセスメントする必要があった。このときの会話が録画されていたので、エクマンは病院のスタッフが見落とした手がかりを確かめることができたのだという。

エクマンが12分間のメアリーの面接の動画を一コマずつ見直すと、医師が将来について尋ねたとき、一瞬だけ苦し気な表情がよぎった。

それは、わずかに12分の1秒で、メアリーはその感情を隠そうとしてすぐに微笑んだ。

他の被験者たちの表情も詳しく分析した結果、エクマンは、顔や声、話し方、ジェスチャーなどを分析すれば、90%の精度で嘘を見抜けるようになったのだという。

嘘を見抜くための手がかりは次のようなことだった。

微表情

唇が一瞬ぴくりと引きつるといったような、微細な表情の変化が嘘の手がかりとなる。エクマンは、警察関係者向けに、微表情を見分けるための訓練プログラムを開発したんだそうな。受けてみたいですね、この訓練。

信頼できる筋肉

顔には意図的に動かせない筋肉がある。
本当に悲しんでいるときには、眉のつけ根の下あたりが落ち窪んでいるんだって。じゃなければ、その人は「悲しいふり」をしていることがわかる。なぜなら、その部分の筋肉はどんなに努力しても意図的には収縮させられないから。

目のまわりの筋肉は、喜びに関する「信頼できる筋肉」だそうだ。
オリンピックのメダリストの表情を録画した動画を分析すると、金メダリストは本当に喜んでいるけれど、銀メダル、銅メダルをとった選手の表情には、悲しみのような感情も交じっているという。

他に挙げられていたのは、次のような特徴。

抑制された表情

本音を表す微表情を隠そうとして、別の表情(たいていは笑み)を浮かべる。

左右非対称な表情

顔の片側だけがより収縮しているような表情は、嘘のことが多い。ほんとうの感情が表れた表情は、左右対称なんだって。

感情を表すタイミング

作り笑いなどは、タイミングがずれてしまうので、奇妙さや不気味さを感じさせる。顔を引きつらせるように笑ったり、いつまでもムリに笑顔でいるのは、嘘の手がかりとなる。また、「目が死んでいる」と、取ってつけたような印象になる。

表情とそれ意外の態度

表情と、それ以外の態度(足を踏みならすとか、肩を怒らせるとか)が、ずれていると、そこで示された感情は本当ではないかもしれない。
昔、竹中直人が「笑いながら怒る人」という芸をしていたな、そういえば。

目は真実を表す?

生理学的には、嘘をついているときには、神経系が刺激されるので「瞳孔が開く」のだという。まばたきが多いと嘘をついている、といえるのかどうかは賛否両論あるとのこと。

声が高くなる?

嘘をつくときには、緊張しているので、いつもよりも声が高くなる。

ひとつ、ふたつの「嘘」の手がかりがあったとしても、相手が本当のことを言っていないという証拠にはならない。
複数の手がかりがあるかどうか、といったことに注目することで、嘘を見抜く精度が上がるのだという。

以上、『卒アル写真で将来はわかる 予知の心理学』から。

まあ、私は嘘なんてついたことないし、皆さんもつかない方がハッピーですよ、ほんと。