認知行動療法は詐欺で金の無駄? 長期的な治療効果に関する研究

3/27/2016

心理療法 認知行動療法

t f B! P L

認知行動療法は詐欺で金の無駄?

Is CBT a Scam & a Waste of Money?|PsychCentral

というタイトルに釣られてしまいました。

John M. Grohol博士によるエッセイ。

Oliver Jamesさんというイギリスのサイコロジストの主張が、MailOnlineというサイトで記事になっていて、それへの反論のようです。

'CBT is a scam and a waste of money': Popular talking therapy is not a long-term solution, says leading psychologistMailOnline
認知行動療法(CBT)は詐欺でお金の無駄:ポピュラーな対話療法は長期的な解決ではない、と指導的な心理学者が述べた。

Oliver Jamesさんの言ってるのは次のようなことらしいです。
  • Cognitive Behavioural Therapy (CBT) is the most popular talking therapy
  • Oliver James argues research shows it does not have a lasting benefit
  • After 5 to 20 sessions those with anxiety or depression appear to recover
  • 2 years later they are no different to those who had no treatment, he said
  • Says proponents have mis-sold CBT to the Government and policymakers  
  • He is calling on the Government to fund other types of treatment
  • Psychodynamic therapy focuses on root cause of problems, he said
ええと、上から、、
  • 認知行動療法(CBT)はもっともポピュラーな対話療法です。
  • オリバー・ジェームスが言うには、研究ではCBTは長期的な利益をもたらさないことが明らかになっています。
  • 5から20セッションの後、不安や抑うつはもとに戻ってしまうようです。
  • 2年後には、治療を受けなかった人たちと変わりはない、と彼は言いました。
  • 擁護者たちが、政府と政策立案者たちに、CBTを誤って売りつけたのだと言っています。
  • 彼は政府に別のタイプの治療を探すよう求めています。
  • 精神力動的な治療は、問題の原因の根本にフォーカスしている、と彼は言いました。
ということのようです。訳は適当。

ふむ。




John M. Grohol博士は次のように述べています。
それは本当だ。精神疾患に対する治療の実質的な効果はすべて、永遠に続くわけではない。精神科の薬物療法を受けていても、どんなタイプの心理療法をしていても、治療をやめた瞬間から、治療の効果はフェードし始めるだろう。
「だからと言って、治療を“詐欺”呼ばわりしてもいいのか?」とGrohol博士。
自分の主張に都合のいい研究結果をピックアップしてくることはできるだろうけれど、なるべく公平な治療成績に関する成績を見てみようではないか、ということのようでした。

認知行動療法は長期的な効果を持つか

Is CBT Effective Long-Term?

Grohol博士の見解では、この問いに対する答えは「イエス」だと。オリバー・ジェームスが参照している研究は適切なものだが、それに反対の結論を出している研究もたくさんある、とのことです。
Paykel, et al. (2005). Duration of relapse prevention after cognitive therapy in residual depression: follow-up of controlled trialPsychological Medicine, 35.

という研究では、うつ病をもつ158人の患者がランダムに二つのグループーー20週のCBTと医療マネジメントを受ける群と、臨床マネジメントだけの群(抗うつ薬はどちらも服用)ーーに分けられて、効果を測定されました。

研究者たちは、6年後までフォローアップで調査を続けました。
果たしてCBTは役に立ったのでしょうか?

調査では、治療の終結から4年〜6年後までの患者さんがフォローアップされました。
CBTの再発防止効果は、治療の終結後、弱まるとはいえしばらくの期間残っていました。終結後、その効果が完全に失われるのは、3年〜4年後だったとのことです。また、残遺症状の期間の減少も見られました。

つまりCBTは、時間が経過すると弱まるとはいえ、ちゃんと効果があるということですね。

でもGrohol博士は「ひとつだけの研究を信じちゃだめじゃない?」とも書いています。

もうひとつの研究が紹介されていました。
Fava, et al. (2004). Six-Year Outcome of Cognitive Behavior Therapy for Prevention of Recurrent Depression. American Journal of Psychiatry, 161.
認知行動療法の、うつ病の再発防止のための6年後の結果を調査した研究のようです。こちらはよりはっきりしたCBTの効果を主張していました。

6年後のフォローアップでは、認知行動療法の治療を受けた人たちの再発率は40%で、通常の臨床マネジメント群の90%と比べてずいぶん低かったとの結果です。

通常の治療での再発の多さのほうが目を惹きますね(厚生労働省の「こころの耳」というサイトでは、再発率60%と書かれていました)。

Grohol博士は、最後に次のように述べていました。

CBTの長期的な効果についての研究はまだ多くはない。CBTがうつ病のすべてを治療できるとか、誰にでも効果があると主張するべきではない。
しかし、CBTは「詐欺」や「時間の無駄」ではなく、多くのうつ病の人々を長期的に援助することができるということは、研究データによって示されている。

どんな治療でもそうですが、なんでも治す「魔法の杖」なんていうのはないし、だからといってすべてダメと白黒極端な結論を出すのも間違ってるということですね。

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