PTSDにおける悪夢と自殺の関係

3/24/2016

ストレス トラウマ 睡眠 精神医学

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Nightmares and Suicide in Posttraumatic Stress Disorder: The Mediating Role of Defeat, Entrapment, and Hopelessness, Journal of Clinical Sleep Medicine, Volume: 12    Number: 03, 2016
「PTSDにおける悪夢と自殺:挫折とEntrapment、絶望の仲介的な役割」




Entrapmentは「わなにかけること」「陥れること」「だまされること」という意味があるけれど、なんと訳したらいいのでしょう。「陥れられた感じ」くらいかな。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っている人たちの自殺行動は、悪夢との関連が強いということが分かったとのことです。

これまでも悪夢は自殺行動と関連していることは知られていましたが、どんなメカニズムで両者が関わっているのかははっきりしませんでした。

研究では、トラウマとPTSDをもった人91人が対象となりました。
悪夢の頻度と激しさが、the Clinician-Administered PTSD Scaleの質問項目でレーティングされました。
同時に被験者たちは、自殺行動や絶望、挫折、陥れられた感じなどを測定する質問紙にも回答を求められました。

調査の結果、次のようなことが明らかになりました。

悪夢を体験している人のほうがそうでない人と比べてより多くの自殺行動が認められました。悪夢を体験している人々の62%が自殺を試みたのです(悪夢なしの人は20%)。

*Suicidal behaviorsは、自殺関連行動と訳されることが多いのかな。自殺未遂だけでなく、自傷行為なども含まれると思われます。

悪夢は直接的にも自殺行動と関わっていましたし、また、挫折や陥れられた感じ、絶望を通して間接的にも自殺につながっていました。また、これは不眠症やうつ病の併発とは独立していました。

ということで、臨床的には、トラウマを経験したクライエントと関わる際に、悪夢や、挫折・絶望などに注意を払うことが大切とのことです。

検索すると、ナショジオの自殺と睡眠という記事でも、悪夢と自殺の関連について紹介されていました。
これまで行われた数多くの疫学調査によって睡眠問題(特に不眠と悪夢)が希死念慮(死んでしまいたい、死んで楽になりたい気持ち)、自殺企図(実際に企てたが死に至らなかった)、自殺既遂(死に至った)のリスク増大に関連することが明らかにされている。1966-2011年に発表された睡眠問題と自殺リスクに関する39の論文(調査対象147,753名)をメタ解析した結果では、慢性不眠がある人では希死念慮、自殺企図、自殺既遂が生じるリスクが約2倍に、悪夢がある人では約1.7倍に上昇することが明らかにされている。
とのこと。不眠や悪夢は、脳内のセロトニン神経機能の低下によって誘発されやすいので、自殺行動を予測するサインとなりうるということです。


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