スキップしてメイン コンテンツに移動

うわさを信じちゃいけないよ! 火星人の襲来、あるいは群衆、パニック、デマの社会心理学


わたしたちは、実社会でもネットでも、毎日たくさんの「うわさ」に触れている。
「情報」だと思っていても、その実、それはうわさに過ぎないことだって、多々あるだろう。
真贋定かではないうわさに影響されて右往左往して慌てたり、間違った判断を下すことだってある。

「うわさ」って何だろう?

社会心理学では、うわさや流言と、デマは次のように区別されている。
「うわさ(流言)とは、情報が客観的事実かどうかを検証されることなく伝達されていくこと」だ。
一方、デマ(demagogue)は、意図的に情報が歪曲されたり、捏造されたりすることを意味している。

いずれも、社会的な緊張や不安が高まっていて、同時に情報が不足しているような状況で、広がりやすい。

心理学者のオールポートは、流言やデマの強さ(R)は、重要性(i)×曖昧さ(a)に比例すると考えた。

公式にすると、

Rumor=importance×ambiguity

ということになる。

その人たちにとって重要で、かつ曖昧であるほど、うわさは広がりやすい。

東日本大震災のとき、原発と放射能に関してたくさんの情報が広がったのも、こうした理由から説明できるだろう。
(放射能は、目に見えずに曖昧であるにも関わらず、私たちの命に関わる重要な事柄だ。真実かどうかは、社会心理学では検証できないけれど)

オールポートは、地下鉄で黒人の男と白人の男が言い争っている絵を呈示し、伝言ゲーム的に伝達してもらう実験を行なった。
絵では、白人の手にナイフ(カミソリ?)が握られているのだが、伝達されるうちにいつのまにか黒人の手にナイフがあったことに変化していたという。
うわさが広がる(伝達される)うちに、情報の歪曲が生じるという例証として取り上げられることのある実験だ。
Allport and Postman (1947)
こうした結果については、オールポート自身の偏見などが反映された実験ではないかという批判もある。

「火星人襲来」によるパニック(オーソン・ウェルズによるラジオ放送)


1938年、アメリカのあるラジオ局で、「火星人の襲来」というラジオドラマが放送された。

原作は、H.G.ウェルズの『宇宙戦争』で、2005年にはトム・クルーズ主演の映画も公開された。

さて、1938年のラジオ番組のナレーターは、当時23歳だったオーソン・ウェルズ(最近では、英語教材の『家出のドリッピー』のナレーションもしている)。
音楽の放送を突然中止して、火星人たちがアメリカを襲来したという「臨時ニュース」を流したため、多くの人々が本当の話だと信じてパニックに陥ったという事件だ。

心理学で「うわさ」や「デマ」がテーマになるときに、しばしば言及される出来事である。

多くの人々が車で逃げ出そうとしたため、大渋滞が引き起こされ、「火星人に殺される」と自殺しようとした人まで出たらしい。
結局、100万人近い人々がパニックに巻き込まれた。

この事件の後、真実を知った大衆は怒ってラジオ局に押し寄せて、オーソン・ウェルズはあやうく殺されそうになったらしい。

ラジオ番組も命がけだ。

コメント

このブログの人気の投稿

果物に例える恋愛心理テスト「フルーツバスケット」で本音がわかる?

簡単な恋愛心理テスト「フルーツバスケット」 「フルーツバスケット」という簡単でおもしろい心理テストのことを聞きました。 「心理テスト」というよりは「心理ゲーム」と呼んだ方がいいですね。 こんなゲームです。 【問】 あなたの目の前に、フルーツバスケットがあります。バスケットには、リンゴ、バナナ、ぶどう、みかん、イチゴ、キウイが入っています。5種類のフルーツを、それぞれ身近な異性にあてはめてみてください。 リンゴ= バナナ= ぶどう= みかん= イチゴ= キウイ= さて、いかがでしょう? 何人かにあらかじめ聞いておくと、後で比べられて楽しいです。

数唱と語音整列の乖離は何を意味しているか?

WAISの数唱と語音整列について、この二つに乖離があったらどう解釈されるんだろうかと思って調べてみたメモ。どちらも作動記憶(ワーキングメモリー)に含まれる下位検査だが、いくらか性質が違う。両者の相関は、中程度くらいだったと思う。 数唱 vs 語音整列 Digit span versus letter number sequencing とある海外の掲示板(?)でのやりとり。 一方が他方よりも高得点だった場合、どんな風に説明できるかな? どっちも順番に配列することが含まれているし、ほとんどの人が順序を操作するために聴覚的記憶を使ってると思う。けど、4点以上の乖離(discrepancy)があった場合は? 実施したばかりのアセスメントを詳しく考えてみると、言葉の受容と表出が明らかに難しいケースだったけど、視空間スキルと処理速度はまったく問題なく保たれていた。-Miriam という問題提起に対するスレッドのようだ。 私も以前に何度か同じようなパターンに出会ったことがあって似たようなことを考えたことがあるけど、ぜんぜん専門外だったから。あなたももう考えてるだろうけど、語音整列はたぶんより複雑な課題だと思う。というのも、数唱のように単に数字を扱うんじゃなくって、(文字と数字という)二種類の情報を使ってそれを切り替えながら作業しなきゃいけないから。被験者が教示を理解して、すべてをすっかり頭に入れることができたという手応えはありましたか? これ(語音整列)を実行するにはいくつかの操作が必要だし、呈示されたものすべてを受け取るには言語受容スキルが特に障壁となるかもしれません。他の下位検査にもこの仮説が当てはまるならば意味をなさないかもしれませんが・・・もっと知識のある人ならいい意見が出せるかも。-Butterfly22 私も同じように考えていました。数唱よりも語音整列の方がいいスコアを示しているような同様のアセスメント事例がおかしいのはなんでかなって。-Miriam 数唱が高くて語音整列が低い場合は、並べ替えなどの操作が入ると難しいのかなと推測できるけど、逆の場合はなんだろう。 数唱は基本的にはワーキングメモリーのタスクだけど、語音整列は、上の人が言ってるみたいに、もっと複雑だ。より心的に柔軟でないといけないし、情報の保存/再生の能力だけでなくて...

イヤーワームになる曲トップ9、そして対処法(頭から離れない曲)

止まらないメロディーの正体とは?イヤーワーム現象を科学する 1. イヤーワームとは?耳に残る音楽の正体 頭の中で特定の曲が何度も繰り返される現象を「イヤーワーム」と呼びます(ディラン効果とも。ボブ・ディランの「風に吹かれて」もイヤーワームが生じやすい曲として知られています)。この言葉は、英語の「earworm(耳の虫)」に由来し、まるで耳に虫が入り込んで音楽を流しているかのような感覚にたとえられています。イヤーワームは、特に集中が必要な時や眠る前に起こりやすく、勉強中や仕事中に困った経験がある人も多いでしょう。 頭のなかである曲が延々と流れ続けて止まらなくなる現象を「イヤーワーム」と言います。 「耳の虫」という意味で、まるで耳に虫がもぐりこんで音楽を流しているみたいに体験されることからそう呼ばれています。 強迫性障害や統合失調症の症状として見られることもありますし、健康な人だってしばしば体験します。脳のバグみたいなもんでしょうか。勉強中や仕事中など、何かに集中しなくてはならないときに、イヤーワームが気になって仕方がないということもあります。受験生でイヤーワームに取り憑かれて困っているという人の話を聞いたことがあります。確かに困りますよね。 Psychologists Identify Key Characteristics Of Earworms 「心理学者たちが見つけたイヤーワームの本質的特徴」 という記事が、アメリカ心理学会のサイトに掲載されていました。 イヤーワームを生じさせやすい曲として、たとえばレディ・ガガのBad Romanceが挙げられていました。 2. イヤーワームが起こりやすい人とその原因 イヤーワームは健康な人にも頻繁に起こりますが、強迫性障害や統合失調症などの精神疾患と関連する場合もあります。脳が「バグ」を起こしたかのように、無意識にメロディーがリピートされてしまうのです。心理学的には、音楽の反復やリズムが脳に影響を及ぼし、メロディーが意識に残り続けることが指摘されています​ Hiroshima University Repository 。 3. 科学的に解明されたイヤーワームを引き起こす音楽の特徴 アメリカ心理学会の研究によると、イヤーワームを引き起こしやすい曲にはいくつかの共通点があります。それは以下の3...