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パニックや不安障害を擬音語・擬態語を使って克服する(内部感覚エクスポージャー)


パニック障害について調べていたら面白い論文を見つけた。

不安障害治療における行動療法でオノマトペがなぜ有用か? 内部感覚エクスポージャーにオノマトペを用いた実践報告|人工知能学会論文誌

なぜに人工知能学会で不安障害の行動療法が取り上げられたのかも興味深い(「オノマトペの利活用」という特集らしい)。




オノマトペというのは、「わいわい」とか「ぺちゃくちゃ」「げっそり」といったような、擬音語、擬態語(擬声語、擬情語なんてのもある)のことで、人やものの状況だとか雰囲気、心情などを音を用いて表現する言葉のことだ。

日本語は、他の言語と比べてもとくにこのオノマトペが多いという。

この論文では、不安障害の行動療法で「内部感覚エクスポージャー」を行なう際に、オノマトペを使うといいということが論じられている。

行動療法では、不安障害やパニック発作は次のふたつのメカニズムで起こっていると考えられている。

ひとつは、刺激と不安・恐怖反応が結びついてしまうということ。たとえば、電車の事故を体験した後、電車の急ブレーキの音と心臓ドキドキがつながってしまうようなことが例にあげられるだろう。犬に噛まれた後、犬のワンワンという声を聞くたびにびくびくして冷や汗が出るという例でもいい。

もうひとつのメカニズムは、「不安・恐怖反応が引き起こす内部感覚そのものを積極的もしくは消極的に体験しないようになること」だ。

先の例で言えば、電車に乗らなくなるとか(そうしれば電車の急ブレーキの音やドキドキを体験しなくてすむ)、犬がいそうなところに近づかないといった行動だろう。

これが極端になると、まったく電車に乗れないとか、外に出れない(犬がいるかもしれないから)ということになって、生活に大きな不便が生じてしまう。

行動療法では、患者さんが避けている恐怖や不安を感じる対象(例えば電車や犬)に敢えて近づいて、ドキドキやびくびくといった内部感覚を生じさせ、避けなくてもそうした反応はだんだん減っていくということを体感してもらう。エクスポージャー(暴露)法と呼ばれているアプローチだ。

内部感覚の変化に対する不安や恐怖に介入を行なうのが「内部感覚エクスポージャー」で、パニック障害だけじゃなく、PTSDや離人症などにも有効だという。
この身体反応・内部感覚を表現する方法としてオノマ トペが役立つ.オノマトペは,擬情語として快感・不快 感の状態を表現する副詞の機能を有している.オノマトペの持つこの機能は,患者が気づきづらい感情(例えば 「不安」や「苦しみ」)に随伴する内部感覚(「動悸」や「吐き気」)に注目を向けやすくなり,より患者の体験に沿った感覚でその体験を表現することが可能となる.また,治療の標的となる内部感覚を絞りやすくなり,エクスポージャー療法をより精鋭にすることが可能になる. 
のだって。

具体的な方法については、事例が紹介されていて分かりやすかった。パニック障害と強迫性障害のケース。

エクスポージャーは、下手にやればかえって不安にさせたり、再外傷体験となったりする危険もあるが、オノマトペを使うことで、フォーカシングっぽい繊細さが加わるのだろう。より、侵襲的ではなく、患者さんの実感に添ったアプローチになると思う。

「内部感覚エクスポージャー」を具体的にどうするのかということについては、

INTEROCEPTIVE EXPOSURE | Psychology Tools

を見ると、「ストローで呼吸する」とか「階段の上り下り」「回転する椅子の上でぐるぐる回る」「頭を振る」といった行動をして、息苦しさや動悸などの内部感覚を賦活するようだ。

回転椅子でぐるぐる回すって、大昔の精神病院で行なわれていたとどこかで読んだ記憶があるぞ。

the rotating chair

参考ページ追記。
患者から学ぶ行動療法@第34回行動療法学会 シンポジウムアブストラクト



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