阿部泰尚『いじめと探偵』幻冬舎新書、二〇一三
読了。

そうか、学校での「いじめ」に探偵さんが介入するような時代になったのか、と驚いて手に取って読んだのだった。
この本で取り上げられている「いじめ」は、恐喝暴行その他の犯罪といって差し支えのない行為だ。
使いっ走り、カツアゲ、万引きの強要、度重なる暴力、そしてクラスメイトによる集団レイプまで、いじめはさまざまだが、ほとんどの被害生徒は、いじめを必死に隠し周囲に相談しない。仮に子供が告白し、親が学校に相談しても、多くの学校は調査すらしない。そればかりか「証拠を持ってこい」と言う。そこで調査、尾行、録音・録画に秀でた探偵の出番となる。いじめ調査の第一人者が、実際に体験した具体的な事例を挙げて、証拠の集め方、学校や加害生徒の親との交渉法や解決法を伝授。いじめという社会の病巣に斬り込む。
筆者は、いじめ調査を通じて「今、一部の家庭や教育現場が、いじめ問題に対して機能不全に陥っている」ということを強く感じると言う。

教師でもなく、カウンセラーでもなく、探偵に依頼せざるをえない現実があるということだ。

実際に探偵に依頼するかどうかはともかく、「探偵ならこういう手段を取る」というふだん馴染みのない視点を得ることができたのがよかった。

教師も親も、カウンセラーも、どうしても「ソフト」なかたちでランディングさせようとしがちだけれど、それでは追いつかない事態には、「タフでなければ生きていけない」というのも必要なのだろう。