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近代以前の心理学

“心理学には長い過去があるが、その歴史はきわめて短い”
ヘルマン・エビングハウス

古代ギリシャの哲学者たちは、「プシュケー」(psyche)についてさまざまな考察を行なった。プシュケーとは、「魂」という意味の言葉で、Psychology(心理学)は、psycheとlogos(言葉、論理)から成り立っている。

ヒポクラテス「聖なる病いではなく、脳の病気」

ヒポクラテス(B.C.460頃–370頃。ずいぶん長生きだ)は、医学を迷信や呪術と区別し、観察や臨床を重視する経験科学としての医学の礎を築いた。ソクラテスとほぼ同時代の人物である。医師の倫理について述べた「ヒポクラテスの誓い」は、現代の医療倫理にも通じるものだ。

ヒポクラテス以前に、てんかんは「聖なる病い」と考えられてきた。てんかん発作は神々からのメッセージだととらえられてきたのである。その他の病気も、だいたい「神々の怒り」の表れと考えられることが多かった。特に精神的な病いは、「神聖病」と考えられていた。ヒポクラテスは「てんかんは脳の病気」と見なした。また、世転びや悲しみ、不安、考える、見る、聞くといった感情や五感の働き、さらには狂気なども「脳」に由来すると考えていたという。非常に合理的で、現代にも通じる脳理解をしていたといえる。

環境と健康の関係についても、合理的な視点を持っていた。
健康にとってよい風とよくない風については上述した。私は次に水について ─ 病気をおこす水,健康に大変よい水,そして水がもたらす害について ─ 述べてみたい。水の健康に及ぼす影響は非常に大きいからである。(ヒポクラテス「空気・水・場所について」)

プラトンの魂の三分説

プラトン(B.C.427-347。同じく長寿)は『国家』のなかで人間の魂を3つに区分した。

  • 理知(ロゴス)
  • 気概(テュモス)
  • 欲望(エピテュメーテース)

の3つである。


気概(テュモス)とは、困難に立ち向かう意思や勇気を表す言葉だ。プラトンは、この魂の三分説を、社会にも当てはめた。社会において理性を司るのが哲人、気概を司るのが武人、欲望を司るのが経済活動に従事する庶民だという。

心を3つに分けるというアイデアは、たとえば知情意とか、フロイトの「自我、超自我、エス」などにも共通している。

アリストテレス『魂について』

アリストテレス(B.C.384-322)は『魂について』(霊魂論などとも訳されている)で、心を「人間的心」「動物的心」「植物的心」に区分した。やはり三階建てモデルである。


英訳版は、Internet Classics Archiveで読むことができる。
“On the Soul”By Aristotle,Written 350 B.C.E 

植物的心は、栄養摂取と生殖を司っている。自律神経系のことを植物神経系と呼ぶこともあるのは、アリストテレスのこの分類に由来しているという。消化や呼吸、生殖、循環、分泌といった自律的な働きである。

動物的心は、感覚と運動を担っている。

人間的心とは理性のことで、理解することや意思などを意味している。

ガレノスの四体液説

四体液説は、医学の祖ヒポクラテス(B.C.468-377)に由来している。ヒポクラテスは人間の身体は、血液、粘液、黒胆汁、黄胆汁の四つの体液から成ると考えた。この四つは、それぞれ風、水、地、火という四大元素の表れである。また、熱、冷、乾、湿という性質とも関連している。ガレノス(A.D.131-199)は、これらの四つの体液のバランスによって人間の気質が別れると考えた。




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