近代以前の心理学
“心理学には長い過去があるが、その歴史はきわめて短い”
ヘルマン・エビングハウス
古代ギリシャの哲学者たちは、「プシュケー」(psyche)についてさまざまな考察を行なった。プシュケーとは、「魂」という意味の言葉で、Psychology(心理学)は、psycheとlogos(言葉、論理)から成り立っている。
ヒポクラテス以前に、てんかんは「聖なる病い」と考えられてきた。てんかん発作は神々からのメッセージだととらえられてきたのである。その他の病気も、だいたい「神々の怒り」の表れと考えられることが多かった。特に精神的な病いは、「神聖病」と考えられていた。ヒポクラテスは「てんかんは脳の病気」と見なした。また、世転びや悲しみ、不安、考える、見る、聞くといった感情や五感の働き、さらには狂気なども「脳」に由来すると考えていたという。非常に合理的で、現代にも通じる脳理解をしていたといえる。
環境と健康の関係についても、合理的な視点を持っていた。
の3つである。
植物的心は、栄養摂取と生殖を司っている。自律神経系のことを植物神経系と呼ぶこともあるのは、アリストテレスのこの分類に由来しているという。消化や呼吸、生殖、循環、分泌といった自律的な働きである。
動物的心は、感覚と運動を担っている。
人間的心とは理性のことで、理解することや意思などを意味している。
ヘルマン・エビングハウス
古代ギリシャの哲学者たちは、「プシュケー」(psyche)についてさまざまな考察を行なった。プシュケーとは、「魂」という意味の言葉で、Psychology(心理学)は、psycheとlogos(言葉、論理)から成り立っている。
ヒポクラテス「聖なる病いではなく、脳の病気」
ヒポクラテス(B.C.460頃–370頃。ずいぶん長生きだ)は、医学を迷信や呪術と区別し、観察や臨床を重視する経験科学としての医学の礎を築いた。ソクラテスとほぼ同時代の人物である。医師の倫理について述べた「ヒポクラテスの誓い」は、現代の医療倫理にも通じるものだ。ヒポクラテス以前に、てんかんは「聖なる病い」と考えられてきた。てんかん発作は神々からのメッセージだととらえられてきたのである。その他の病気も、だいたい「神々の怒り」の表れと考えられることが多かった。特に精神的な病いは、「神聖病」と考えられていた。ヒポクラテスは「てんかんは脳の病気」と見なした。また、世転びや悲しみ、不安、考える、見る、聞くといった感情や五感の働き、さらには狂気なども「脳」に由来すると考えていたという。非常に合理的で、現代にも通じる脳理解をしていたといえる。
環境と健康の関係についても、合理的な視点を持っていた。
健康にとってよい風とよくない風については上述した。私は次に水について ─ 病気をおこす水,健康に大変よい水,そして水がもたらす害について ─ 述べてみたい。水の健康に及ぼす影響は非常に大きいからである。(ヒポクラテス「空気・水・場所について」)
プラトンの魂の三分説
プラトン(B.C.427-347。同じく長寿)は『国家』のなかで人間の魂を3つに区分した。- 理知(ロゴス)
- 気概(テュモス)
- 欲望(エピテュメーテース)
の3つである。
気概(テュモス)とは、困難に立ち向かう意思や勇気を表す言葉だ。プラトンは、この魂の三分説を、社会にも当てはめた。社会において理性を司るのが哲人、気概を司るのが武人、欲望を司るのが経済活動に従事する庶民だという。
心を3つに分けるというアイデアは、たとえば知情意とか、フロイトの「自我、超自我、エス」などにも共通している。
アリストテレス『魂について』
アリストテレス(B.C.384-322)は『魂について』(霊魂論などとも訳されている)で、心を「人間的心」「動物的心」「植物的心」に区分した。やはり三階建てモデルである。
英訳版は、Internet Classics Archiveで読むことができる。
“On the Soul”By Aristotle,Written 350 B.C.E 植物的心は、栄養摂取と生殖を司っている。自律神経系のことを植物神経系と呼ぶこともあるのは、アリストテレスのこの分類に由来しているという。消化や呼吸、生殖、循環、分泌といった自律的な働きである。
動物的心は、感覚と運動を担っている。
人間的心とは理性のことで、理解することや意思などを意味している。
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