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【夢占いはなぜ信じられるのか?】科学で読み解く「予知夢」と文化のつながり——最新研究が明かす“夢と超常信仰”の心理

 


はじめに:なぜ人は「夢」に意味を求めるのか?

「変な夢を見た……もしかして何かのサイン?」
そんなふうに思ったことはありませんか?

古代から人類は夢に特別な力を見出してきました。夢占い(oneiromancy)は、その代表例です。預言者ヨセフから、戦国武将の夢判断まで、夢を“神のお告げ”と見る文化は世界中にあります。

けれど、なぜ私たちは夢を単なる脳のランダムな活動として切り捨てず、「意味がある」と感じるのでしょうか? その疑問に心理学的・文化進化論的な視点から迫ったのが、今回紹介する研究論文です。


論文の概要:夢のどんな内容が「意味あり」と思われるのか?

2023年に発表されたこの論文(Gauging oneiromancy: The cognition of dream content and cultural transmission of (supernatural) divination.)は、夢に「予言的意味」があると感じられる仕組みについて、被験者の夢記述と信念の傾向を分析することで解明を試みたものです。

キーワードは以下のとおり:

  • Oneiromancy(夢占い)

  • Cultural transmission(文化の伝播)

  • Supernatural belief(超常的信念)

  • Omitted agency(自己主体性の省略)

  • Nightmares(悪夢)と伝達性

本研究では、「どんな夢が他者と共有されやすく、どのような夢が“神秘的”に見なされやすいのか?」を分析しています。


【CARDD理論】夢の“超常性”を高める4要素とは?

本論文の中心には、著者らが提唱する CARDDモデル(Cognitive Apparatus for Recognizing Dream Divination)があります。

以下の4つの特徴が組み合わさると、夢は「ただの夢」ではなく、「意味ある夢」に認識されやすくなるという仮説です:

要素内容
C - Communication夢が他者と共有されやすいか
A - Atypicality現実では起こり得ない印象があるか
R - Relevance自分にとって重要・感情的か
D - Detail具体性が高いか
D - Divinability占い的意味づけが可能か

これらの要素が強い夢ほど、「これは予知夢かもしれない」「何かのお告げかも」と受け取られやすく、他者との共有(dream communication)も促進されます。


実験結果:こんな夢が「占い的」と思われやすい

著者らは、一般被験者にさまざまなタイプの夢を提示し、それを「誰かに話したいと思うか」「予言的だと感じるか」などで評価しました。

その結果:

  • **悪夢(nightmares)**は、もっとも「共有したくなる」「意味がありそう」と感じられた。

  • 自己主体性(self-agency)の省略——夢の中で自分が積極的に行動せず、ただ見守っていたり受動的な存在であったりする夢ほど、神秘的と見なされやすかった。

  • ストーリー性のある夢死や生まれ変わりを含む内容は、「占い的」「語りたくなる」傾向が高かった。

つまり、「怖かった」「意味深だった」「変だった」「誰かに話したい」という感情が、夢を“超常”と感じる引き金になっているというわけです。


人はなぜ「夢占い」を共有したくなるのか?

本研究は、夢が他者に語られるとき、それは単なる“面白い話”ではなく、信念や文化を媒介する装置であることを指摘します。

特に以下の3点は重要です:

1. 感情的に強い夢は“意味のあるもの”とみなされやすい

  • ネガティブな感情(恐怖・不安・驚き)は、夢の伝達性を高める

  • 喜びや愛といったポジティブな夢よりも「何かが起こる予感」を与えやすい

2. 「他者の声」や「神の意志」が聞こえる夢の共有は信念の強化に

  • 超常的存在の登場(神・霊・祖先など)は、夢を社会的に“信じるべきもの”として広めやすい

  • 民間信仰やスピリチュアリズムの継承に繋がる構造がある

3. 「自分が原因じゃない」夢は語りやすい

  • 夢の中で自分が行動主体になっていない(=何かが“起こった”)という構造は、他者への責任転嫁や、受け身的予兆としての意味づけをしやすい


文化と夢の関係:予知夢は“語られて”生き残る

夢は個人の脳内体験であると同時に、文化的な物語の一部です。

この研究は、「語りたくなる夢」が文化のなかで共有され、そこに占いやスピリチュアルな意味が付与されていくプロセスを、認知的視点から明らかにしています。つまり、夢が占いになるには、“物語としての共有性”が不可欠だということです。


まとめ:あなたの夢が“語られる”とき、文化が生まれる

「昨日、こんな夢を見たんだ」
その一言の奥には、個人の感情、文化の枠組み、信念の継承が入り混じっています。

夢占いを信じるか信じないかは自由ですが、「夢を語ること」自体が私たちの文化と信念をつくっている——この研究は、その事実を静かに、しかし力強く示しています。

あなたの夢が、明日の物語になるかもしれません。

Gauging oneiromancy—the cognition of dream content and cultural transmission of (supernatural) divination

A Nordin - Religion, Brain & Behavior, 2024 - Taylor & Francis

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