2015年で最も重要な、あるいは興味深い心理学論文トップ10

公開日: 12/30/2015 心理学


PsychCentralで、「2015年で最も重要な、あるいは興味深い心理学論文トップ10」が紹介されていました。PsychCentralのCEOであるジョン・グロール博士のセレクションとのこと。

Top 10 Important or Intriguing Psychology Articles of 2015

面白そうなのでちらほらと眺めてみます。

1.心理学を応用した尋問や拷問に、倫理的な規制が

今年の2月に発表された、サイコロジストが尋問や拷問に関与する際の倫理的問題に関する調査です。調査の代表者であるデイヴィッド・ホフマンさんの名前から通称「ホフマン・レポート」と呼ばれていますが、正式には、

Independent Review Relating to APA Ethics Guidelines, National Security Interrogations, and Torture.
「アメリカ心理学会の倫理的ガイドラインに関連した独自レビュー、国家安全保障の尋問と拷問」
という名称です。6ヶ月間に渡り、5万を超える文書をレビューし、148名の関係者に200回以上のインタビューを実施したのだそうです。軍やCIAで行なわれた尋問・拷問に心理学者が関与していることが明らかにされ、議論を呼びました。アメリカ心理学会のトップらがこの件で引退することになったといいます。

心理的(精神的)拷問については、日本トラウマティック・ストレス学会誌で昔読んだ宮地尚子先生の「拷問とトラウマ」が詳しかった記憶があります。

2.初回精神病エピソードのケアとしては、抗精神病薬を中心とした通常の治療と比べて、心理療法や家族支援などに焦点を当てたプログラムのほうが2年後の結果がよかった


アメリカ国立精神衛生研究所によるプロジェクトで明らかにされました。
Initial Psychotic Episode Best Managed by Team-Based Approach

「初回精神病エピソードはチーム・アプローチによるマネジメントがベスト」とのことです。訓練された専門家が、それぞれのクライエントにパーソナライズされた治療プランを立てて、チームで支援します。抗精神病薬の使用を減らし、回復指向の心理療法や、家族教育と支援、ケースマネジメント、仕事や教育のサポートなどが、一人一人のニーズや要望に応じて提供されるのです。プランは、クライエントとチーム、そして家族たちによる共同の意思決定に基づいてつくられるのだそう。

このプログラムを使って治療された患者は、一般的な治療を受けた人たちと比べて、治療からのドロップアウトが少なく、症状、人間関係、生活の質などもより改善したといいます。

一般的には、初回の精神病エピソードは入院や投薬中心の治療で、落ちついてきたら心理教育や家族支援といったケアが提供されることが多いと思いますが、初期からそうした介入もしたほうが結果がいいということのようです。

フィンランドで行なわれているという「オープン・ダイアログ」に通じるものもあるのかな。

3.心理学研究の再現性は考えられているよりもずっと低い

発表された心理学の研究結果の多くは牛の糞だと判明!?
でも取り上げました。
ランダムに選ばれた100の心理学研究の追試を試みたところ、そのうち36%しか統計的に意味のある結果を得られなかったというもの。

4.使っちゃいけない心理学と精神医学の専門用語50

不正確で、誤解を招いたり、間違って使われる、曖昧で論理的に混乱した言葉やフレーズが50取り上げられています。

Fifty psychological and psychiatric terms to avoid: a list of inaccurate, misleading, misused, ambiguous, and logically confused words and phrases

ここにそうした用語がリストアップされてました。

不正確かつ誤解を招く用語としては、
「自閉症の流行」「洗脳」「催眠トランス」「〜に対するジェンダー(あるいは教育や民族、知能、外向性などなど)の影響」「嘘発見テスト」「多重人格障害」
などが挙げられていました。

しょっちゅう間違って用いられる用語として、
「行動化」「近接」「否認」「フェティッシュ」「分裂」
が挙げられています。精神分析用語が多いですね。

あいまいな用語としては、
「併存疾患」「相互作用」「医学的モデル」「還元主義」が、

矛盾している言葉として、
「階層的段階的回帰(Hierarchical stepwise regression、どう訳すの?)」「心身療法」「観察可能な症状」「パーソナリティ・タイプ」などなど。

冗長なものとして挙げれてるのが、
「生物的環境的影響」「経験的データ」「メンタル・テレパシー」「神経認知」でした。

こんなにあると、何も言えなくなってしまうじゃないか。

5.自閉症はほんとうに「流行」しているのか? 

自閉症そのものが増えたのではなく、知的障害などのその他の児童精神科の診断が単に置き換わっただけだと。

6.音楽の好みは認知スタイルとリンクしている

3000人を対象にした調査で、音楽の好みがその人の認知スタイルとつながっていることが明らかになったという研究。
「共感タイプ(感情的、生理的に音楽に反応する人)」は、R&Bやソウル、アダルト・コンテンポラリー、ソフトロックといったメローな感じの音楽を好む。
「分析タイプ(音楽を分析、体系化する人)」は、パンクやヘヴィ・メタ、ハード・ロックといった激しい音楽を好む。
分析タイプがパンクを好むというのはちょっと意外な気もしますけど。

7.治療の成功を予測するのは? fMRIとゲノム薬理検査

抗うつ薬の効果がどれくらいあるかがfMRIで分かるようになるかもという研究と、ゲノム薬理検査(Pharmacogenomic testing)という遺伝子検査で特定の薬物への反応が予測できるようになるんじゃないかという研究。

8.性的な誘惑をどれくらい受け入れるかの男女の違いと類似性

前にYoutubeで、美人の女性が道を歩く男性に「Hしない?」と誘いかけてどれくらいが応じるか、という動画を見たのを思い出した。その逆で、男性が女性に声をかけるというパターンもありました。みなさんご想像のように、男性の多くはその誘いを受け入れ(いや、なかには「彼女がいるから」と断っている男性もいた)、ほとんどの女性は拒否していました。

男性と違って女性は、友人や家族から社会的に判断されるという恐怖と、身体的に傷つけられるという恐怖(妊娠する怖れなども含めて)があるので、女性は性的な誘惑に応じない傾向があると考えられています。

紹介されている研究では、女性が感じるこのふたつの恐怖を体験しにくいようなセッティングをつくると、性的な誘惑への男女差はなくなるということが明らかにされているそうです。

39ドル95セントで全文読めるみたいなので、女性の抵抗感を減らす秘訣に関心のあるかたはどうぞ。

あとの2つは、「政治的に多様なほうが社会心理学は発展する」とか「プロダクト・プレイスメントはテレビ視聴者の行動を変化させるか?」といった研究が紹介されていました。プロダクト・プレイスメントというのは、映画やテレビドラマの劇のなかの小道具や背景に実際の企業名や商品名などを表示させる広告手法だそうです。

ではでは、みなさまよいお年をお迎え下さい。
来年もよろしくお願いします。

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昨日、『スターウォーズ/フォースの覚醒』を観た。カイロ・レンがメンタル弱すぎなのは「もっと悪くなる」ために最後にやっちゃうことの伏線だろうからいいとして、殺陣シーンもライトセーバーふりまわしてるだけでずいぶん大雑把だったぞ。

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