人狼ゲームで学ぶコミュニケーションの心理学 嘘と説得、コミュニケーショントレーニング』読了。

「究極の心理ゲーム」と言われる人狼ゲームについて、心理学のプロと人狼ゲームのプロ(ってなんだ)がチームを組んでできあがった本だそうです。




嘘や説得、コミュニケーションについて、心理学的な視点から解説されている。人狼ゲームを、コミュニケーションスキルのトレーニングに活用する際に手元に置いておきたい本でした。

「嘘」とは「意図的に誰かを騙す陳述」と定義されます。私たちは一日に数回程度は嘘をついているのだといいます(「もっと嘘つく」という人もいれば、「嘘なんてついたことないもん」という人もいるかもしれないけど)。調査では、「他者が嘘をついたと感じた頻度は、自分が嘘をついた頻度に比べて少ない」ことが明らかになっているそうです。嘘というのは、とても日常的な現象ですが、私たちは他者の嘘についてけっこう鈍感にすごしているということになります。

「他者の嘘や隠し事に敏感であること」「嘘っぽいと感じさせずにメッセージを伝えること」は日常生活においても重要なスキルだと著者たちは言います。

人狼ゲームは、こうしたコミュニケーションのトレーニングに最適なゲームなのです。

一読して興味深かったのは、「専門家は嘘を見破れるのか?」というところ。エクマンたちの研究では、嘘を見破る専門家と考えられる職種の人々を対象に実験が行なわれました。それによると、嘘を見破るのがもっとも得意だったのは、CIAなどの政府の役人で、平均の正答率は73%だったとのこと(一般人は、45%から70%のあいだくらいで、65%を超えることはめったにない、なんてことも紹介されていた)。
臨床心理学者は67.5%、保安官66.7%、ふつうの心理学研究者は57.7%だったそうです。

エイクハートたちによる「嘘を見破るトレーニング」の研究も紹介されていました。トレーニング前後の成績を見ると、ソーシャルワーカーや学生はトレーニングによって成績が向上していましたが、なぜか警察官はトレーニング後の方が嘘を見破る確率が減っていました。

巻末の記録用紙や振り返りシートは、研修やトレーニングなどのグループワークとして人狼ゲームを活用するときに便利だと思います。



人狼ゲームで学ぶコミュニケーションの心理学-嘘と説得、コミュニケーショントレーニング