コンセンサスゲーム「月で遭難したら(NASA)」

3/29/2015

ゲーム コミュニケーション

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『火星の人』を読んで思い出したのが、昔やったことのある「月で遭難したら(NASA)」というコンセンサス・ゲームです。 コンセンサス・ゲームとは、ある課題に対してグループで意見を出し合いながら「合意」に至るというものです。企業研修のグループワークなどでも行なわれることが多いみたいですね。


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まずは個人で課題に回答した後、皆でディスカッションして、グループとしての意見をまとめます。ただし、多数決などは使わず全員が納得するまでとことん話合うという方法を取ります。 コンセンサス・ゲームにはいろいろありますが、このNASAはJay Hallという社会心理学者が1962年に考案したものだそうです。 調べてみると、Hallさんは2011年に78歳で亡くなったらしい。 Ernest James (Jay) Hall Jr. (1932-2011)
Dr. Hall committed himself to developing new educational techniques and was a pioneer in implementing learning for leaders. In 1962, with assistance from NASA, he created the NASA Moon Survival Task - the original Consensus Decision—Making Exercise—which has been used world-wide and imitated in a variety of formats.
教育のための新しい技法や、リーダーシップを学ぶための方法などを研究していた人なんですね。NASAの助けを借りて「NASA 月のサバイバル」というゲームを開発しました。 NASA Moon Survival Task -: The Original Consensus Exercise という21ページの短い本も出ていたようです。 日本語版はいくつかのサイトで紹介されていますが、こんな内容です。
あなたの乗った宇宙船が、月面に緊急着陸した。 母船は、月面上の距離で約300キロ離れている。 宇宙船は壊れたので、月面を自力で進むしかない。 母船にたどりつかないかぎり、確実に死が待っているが、 宇宙船の中にあるもので、 使えそうなのは次の15品目だけだ。 では、15品目の中で、もっとも生存に必要なものは何か。 重要なものから順に、1、2、3と番号をつけてほしい。 何が重要かを冷静に判断すれば、 あなたは無事に母船にたどりつけるかもしれない。
品 目 優先順位
マッチ箱
宇宙食
長さ20メートルのナイロン製ロープ
パラシュート
ソーラー発電の携帯ヒーター
45口径のピストル2挺
粉ミルク1ケース
酸素ボンベ2本
月面用星座表
自動的にふくらむ救命ボート
磁気コンパス
20リットルの水
照明弾
注射器入り救急箱
ソーラー発電FM送受信機

月面で遭難したら(問題編) この問題には、NASAの専門家による「正解」があります(回答篇)。個人の考えよりも、グループでの合意による回答の方が、正解に近ければ、そのグループはより創造的な問題解決を行なえているということになります。 似たようなコンセンサス・ゲームとしては「砂漠の遭難」や「若い女性と水夫」といった課題も知られています。「砂漠の遭難」は「月で遭難したら」と同じく「正解」がありますが、「若い女性と水夫」は個人の価値観の違いなので、「正解」はありませんでした。「遭難した女性が、別の島のフィアンセに会いたいばかりに、船を持っている水夫に身体を許してしまう。それを知ったフィアンセは激怒して・・・」というストーリーでした。登場人物には傍観しているだけの老人や、親切なんだけどなんとなく下心のありそうな親友なんて人もいて、その5人の「好きな順」を決めるのでした。こんなの、グループで「合意」するのは難しいに決まってるのですが、わいわい意見を言い合うことで自分や他人の価値観が見えてくるのが面白いのです。

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