『異常心理学』誌から。

Oakley, Beth F. M.; Brewer, Rebecca; Bird, Geoffrey; Catmur, Caroline, Theory of mind is not theory of emotion: A cautionary note on the Reading the Mind in the Eyes Test.
Journal of Abnormal Psychology, Vol 125(6), Aug 2016, 818-823

「心の理論は感情の理論ではない:目から心を読むテスト(RMET)に関する留意点」

といった感じでしょうか。




他者の心の状態(意図や目的、信念、知識)などを推測する心の働きを「心の理論」と呼びます。サリーとアンの課題などで測定されることがありますね。

自閉症スペクトラム障害の人々の社会的技能や、社会性の障害において、この心の理論が重要な役割を果たしていると考えられています。


The Reading the Mind in the Eyes Test (RMET) 「目から心を読むテスト」というのが、海外ではよく使われているらしい。

オンラインでできるので、辞書を引き引きやってみたのですが、目だけだし外国人の写真だし、言葉も英語なので、かなり難しいとの印象をうけました。

やってみたら、36問中24点でした。

平均点は26.2点、アスペルガー障害もしくは高機能自閉症をもつ成人の平均が21.9点とのことです。

はい。

論文(のアブストラクト)に戻りましょう。

RMETは心の理論の測定によく用いられていますが、表情の認知が必要なテストなので、アレキシサイミア(失感情症)の人も成績が低下します。

自閉症スペクトラムの人々もアレキシサイミアが見られることがしばしばありますが、だからこそRMETのスコアが心の理論の障害によるものなのか、アレキシサイミアによるものなのかを見分けるのが難しい。

といったあたりが問題提起で、この研究では自閉症スペクトラム(ASD)の人たちと、ASDはないけどアレキシサイミアをもつ人たちを対象にして調査を行ったということですね。

RMETとは別に、

the Movie for Assessment of Social Cognition (MASC)「社会認知のアセスメントのための動画」

というテストを用いたようです。

目から心を読み取るRMETでは、ASDとアレキシサイミアに得点差は見られなかったものの、動画による社会認知テストでは、ASDの人のみが低得点だったという結論です。

というわけで、RMETは心の理論というよりは、感情認知を測定しているのだろうと示唆されるとのことでした。また、自閉症スペクトラムの人のアレキシサイミア仮説も支持するだろうとのこと。