例によってdマガジンで、AERA(2016年3月7日号)をめくっていたら、「アレルギー」の特集で、そのなかに「アトピーの行動療法」というページがあったので興味を惹かれて読んでみました。




アトピー性皮膚炎によるかゆみをともなう湿疹は、かくと一時的に楽になるが、症状はかえって悪化してしまう。
子どものかきむしりが始まると、親はなんとかやめさせようとするが、こうした親の行動がかきむしり行動を助長させることもある。

アレルギーの専門医の大矢医師によると、
「乳幼児期は、母親を求める本能がとても強い。子どもはかゆみを訴えてかけば、快感が得られるだけでなく、お母さんにかまってもらえます。それを学習すると、快感と親の注目という『報酬』が欲しくて、さらにかくようになってしまうのです」
とのこと。

心理学では必ず習うオペラント条件付けの話ですね。

「かゆい」という先行刺激があって、「かきむしり」という行動をすると「親の注目」が得られる。それによって、「かきむしり」行動の頻度が増える、というわけです。

これを減らすためには、子どもが望ましくない行動をしているときには、「注目」という報酬を与えない、つまりかきむしっているときには子どもから離れてかまわないというふうに対応します。
かきむしっていないときにはしっかりかまって、スキンシップをする、絵を描くといったかく行為と両立しない行動を覚えさせる、といった方法が書かれていました。

かゆみが強いとどうしてもかいてしまうので、ステロイド薬などの薬物療法と、行動療法をタイミングよく組み合わせるのがコツとのことでした。

アトピーは、ぜんそくと並んで心身症の代表でもあるので、ストレスによって悪化したり、アトピー自体が心理的なストレスにつながることもしばしばです。

ついでに関連する研究などを調べてみました。
思春期アトピー疾患者に対する集団認知行動療法の治療効果

では、4週間4セッションの認知行動療法(病態理解、リラクセーション、ストレスマネジメント、アサーショントレーニング)によって、ストレス反応が緩和され、より自己主張ができるようになったとありました。

Management of Itch in Atopic Dermatitis

という論文がオンラインで閲覧できたので、ななめ読み。

“Psychological Intervention”(心理的介入)
として挙げられていたのは、

  • 身体的リラクセーション
  • かきたい欲求のコントロール

でした。

ABCモデル(気づき、バランス、コントロール)に基づいてストレスマネジメントするグループプログラムを評価した研究では、かゆみの強さが減ったとの結果が得られたとのことです。

認知行動療法や自律訓練法によって、かゆみの強さとひっかき行動の減少が見られ、ステロイドの使用が減ったそうです。

Habit reversal”(習慣逆転法)も効果があると紹介されていました。
ひっかきたい欲求を感じたときに拳を握るといった、別の行動を学習させます。抜毛や爪噛みなどの行動療法でよく使われる方法ですね。