認知行動療法に○○○を加えると、不安障害の治療成績が向上する
Adding Newer Treatment Can Ease Anxiety In The Long Run|PsychCentral
「新しい治療を加えると長期的に不安を減少させることができる」
the Journal of Consulting and Clinical Psychologyに掲載された論文から。
動機付け面接 “motivational interviewing” を標準的な認知行動療法(CBT)に加えることで、全般性不安障害の症状の重症度が、CBT単独の治療よりも改善したという研究です。
動機づけ面接とは、もともとはアルコール依存症のクライエントを対象にした面接法として発展してきました。アルコールの問題を抱えた人は、「酒をやめたい」と願うと同時に「やめたくない」と強く感じています。動機づけ面接は、クライエントのなかの矛盾を広げて、両価性(どっちの気持ちもある)を明らかにしながら、解消していこうというアプローチです。
以下、 Wikipediaから動機づけ面接の4つの原理を引用。
- 共感を表現する: カウンセラーはクライエントを正確に理解しようとし、その内容をクライエントと共有する。
- 矛盾を拡大する: クライエントがこうありたいと望む生き方と、現実の生き方の間にある矛盾を探ることで、行動を変えることの価値をクライエント自ら気づくようにカウンセラーが援助する。
- 抵抗を手玉に取る:変わりたくないという気持ち,逡巡は病的ではなく、誰にでもある自然なこととカウンセラーが受け入れるようにする。
- 自己効力感をサポートする: クライエントの自己決定(ときにはクライエントが現状維持を選ぶときでさえ)を尊重することによって、クライエントが自信を持って、うまく変わっていけるように援助する。
この研究を行ったマサチューセッツ・アマースト大学のMichael Constantino 博士によると、全般性不安障害はとても扱いにくい障害で、長期にわたる標準的な認知行動療法をすべて実施しても、よくなるのは半数以下なのだそうです(たぶんそういうデータがあるのでしょう)。
「変化するように言うよりは、むしろ、変化するのは難しいと理解することのほうが助けになるのです」「抵抗に出会ったとき動機づけ面接の方略がもちいられるほうが、患者は改善するし、治療から多くのことを得るのです」とConstantino 博士。
ええと、研究では85人の全般性不安障害の患者さんが集められて、15回のセッションを受けました。43人はCBT単独で、42人はCBTプラス動機づけ面接。
結果。15セッション直後に、心配と全般的な苦悩を測定したところ、両者の成績に違いはありませんでした。
ところが一年後のフォローアップ調査では、 CBT単独群と比べてCBTプラス動機づけ面接群の改善のほうが著しくよかったということです。
「CBTプラス動機づけ面接」には、sleeper effectがあるんじゃないかとのこと。
なんでこんな違いが生じたのでしょうか?
Constantino 博士らは次のような仮説を立てています。
動機づけ面接は、よりクライエント中心のアプローチなので、患者は治療が終わってセラピストの支援が得られなくなってからも、自分でがんばったりチャレンジしたりして問題を解決しようとする姿勢が強かったのではないかということです。動機づけ面接のストラテジーは患者により自律性を与えるので、長期に渡って自分を助けることができるのだろう、と書かれていました。
セラピストから出されたホームワークをやってるだけよりは、自分のなかの内発的な動機を活用できたほうが効果が長く続くということですね。
どんなアプローチでも、上手なセラピストはクライエントの内発的な動機をうまく掘り出しているのでしょうが、動機づけ面接について少し知っておくと変化への抵抗が大きい人に出会ったときに役に立つかもしれません。
オリジナルの論文は以下。
Integrating Motivational Interviewing With Cognitive-Behavioral Therapy for Severe Generalized Anxiety Disorder: An Allegiance-Controlled Randomized Clinical Trial.
Westra, Henny A.; Constantino, Michael J.; Antony, Martin M.
Journal of Consulting and Clinical Psychology, Mar 17 , 2016,
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