サリーとアンの課題(心の理論)

4/26/2015

心理学 精神医学 発達障害

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心の理論(Theory of Mind)とは


心の理論(Theory of Mind)とは、ヒトや類人猿などが、他者の意図や目的、信念、知識などを推測する心の働きを指す。もともとはチンパンジーのあざむき行動の研究から始まった。

「心の理論」とは、自分自身や他人の心の中にある信念、感情、欲求、意図などを推測し、理解する能力のことだ。心の理論は、子どもの発達において重要な役割を果たしている。例えば、子どもたちは、他人の視点を理解し、共感することができるようになることで、社会的な交流を効果的に行うことができる。

心の理論の研究は、主に2つのアプローチで行われている。1つは、心の理論の発達を調査することで、心の理論がどのように形成され、発達するのかを理解することだ。もう1つは、心の理論がうまく機能していないと思われる人々を研究することで、心の理論の重要性を明らかにすることだ。

心の理論の発達に関する研究では、幼児期から始まり、思春期や成人期に至るまで、心の理論がどのように発達するかを調査している。幼児期の研究では、子どもたちが他人の欲求を理解し、共感することができるようになる時期が約2歳であることが示されている。また、思春期においては、社会的な状況に対する理解力が向上し、社会的な問題に対処する能力が発達することが示されている。

心の理論が適切に機能していないと思われる人々を研究することで、心の理論の重要性を明らかにすることができる。例えば、自閉症スペクトラム障害(ASD)の人々は、他人の感情や意図を理解する能力に欠けていることが知られている。自閉症スペクトラムの子どもは、定型発達や他の障害(たとえばダウン症)などと比べて、この心の理論の発達が遅い。統合失調症などの精神疾患によっても、こうした心的機能が障害されることがある。このような研究から、心の理論が社会的な交流において重要であることが明らかになった。

サリーとアンの課題

これは、バロン–コーエンらによって作られた、心の理論のテストによく用いられる「サリーとアンの課題」。

「サリーとアンの課題」とは、発達心理学で用いられる典型的な課題の一つで、この課題は、子どもたちの理解度や認知能力を評価するのに使われている。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

「サリーがボール(ビー玉のことも)をかごに隠して出かけるが、そのあいだにアンがボールを箱にこっそり移し替えてしまう」といったストーリーを聞かせて、「帰ってきたサリーはボールがどこにあると思っているか」を問う。自閉症スペクトラムの子どもは、定型発達(もしくはダウン症などの他の障害をもつ子ども)と比べて、この心の理論課題の通過が2〜6年遅れるという。

Google Scholarからいくつか最近の研究のアブストラクトをナナメヨミ。

統合失調症と心の理論

Theory of mind in the early course of schizophrenia: stability, symptom and neurocognitive correlates, and relationship with functioning

慢性期の統合失調症患者において、心の理論の障害は陰性症状などと関係していることはよく知られている。この研究では、発症したばかりの統合失調症患者にも心の理論の障害が見られることが明らかにされた。

失感情症における心の理論の役割

Role of theory of mind in emotional awareness and alexithymia: Implications for conceptualization and measurement

「情緒認知とアレキシサイミア(失感情症)における心の理論の役割」。
心の理論の障害は、自分の感情認知も難しくしている。感情に適切な言葉を与えるのが難しい”anomia(失語)”と、感情を体験することが障害されたより重篤な”agnosia(失認)”を分けるといいだろうとのこと。

きょうだいの影響

心の理論の多面的な発達におけるきょうだいの影響

“きょうだいの有無ときょうだい構成が心の理論の成績に与える影響を検討した結果,心の理論の獲得開始時期は,きょうだいがいる子どもの方が早く,1 人っ子の方が遅れていることが示唆された。しかし,心の理論の発達が遅れて入園した場合でも,保育園で仲間や保育士と一緒に過ごすうちに,心の理論を身につける柔軟性をもつことが示唆された”
だそう。

心の理論と実行機能

自閉症スペクトラム障害における心の理論と実行機能の関係についての研究動向

“ASD児における心の理論と実行機能の関係性は,定型発達児のそれとは大きく異なるという可能性”

“ASD児における心の理論の発達は定型発達児と比べて遅れるのみではなく,異なる機序を示す可能性が高い”

“ASD児においては実行機能の発達が心の理論の発達に先行する可能性が高い”

“実行機能と中枢性統合の困難さゆえに社会的な情報の非定型な入力が発生し,そのために心の理論の発達に困難さが生じる”

“直観的・自動的に心の理論課題を解決するのではなく,言語を媒介とした心的状態の表象(Happé,1997)や,言語的命題の積み重ねによる言語的類推で補償して心の理論を解決している”

などなど。

ラ・トゥールの「いかさま師」と心の理論

これはフランスの画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(1593-1652)のいかさま師(ダイヤの札版)』という作品。ウタ・フリスの『自閉症の謎を解き明かす』という本の表紙にも用いられていた。本の表紙では、絵画の全体像ではなく断片が用いられている。自閉症の人たちは部分知覚優位で全体像が把握しにくいため、「左の三人がいかさまを企てている」といったストーリーを理解しにくいということ。





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