統合失調症における視空間知覚障害のエビデンスと心理テスト:視空間的パターン推論

8/10/2015

心理テスト 精神医学 統合失調症 認知

t f B! P L
Visuospatial Ability | SCHIZOPHRENIA LIBRARY

統合失調症に見られる視空間知覚能力の障害についてコンパクトに紹介されていた。以下、覚書。

視空間知覚能力とは?

  • いくつかの対象のあいだの視覚的および空間的関係を同定する能力が視空間能力である。
  • 対象をイメージし、小さな部分を位置づけることで大きな形を捉える、または対象と対象の違いや類似を理解する、といったことで視空間能力は測定される。

視空間知覚能力を査定する心理テスト

WAIS(ウェクスラーの知能検査)の動作性の下位検査には、視空間知覚能力を査定することができるものが含まれている。
  • 積木(block-design):小さな積木を組み合わせて大きなパターンを作る
  • 絵画配列(picture arrangement):知覚スキルと絵をロジカルな順序にそって位置づける
  • 組合せ(Object Assembly):パズルを完成させるスピードと正確さ
  • 絵画完成(Picture Completion):イメージを視覚的にスキャンし、間違いを見つける
  • 行列推理(Matrix Reasoning):パターンを推論して正しいデザインを選ぶ
その他の、視空間能力の検査。
  • ベントン線方向判断テスト(The Benton Judgment of Line Orientation Test):
*視覚記名力検査とは別のテストらしい。
線方向づけ(Line Orientation)
Benton, Hmsher, Varney, & Spreen (1983) が 考案 し 、 頭頂葉機能に鋭敏 と さ れている方法に基づいている検査である 。
中心点より放射状に伸びた 1 3 本の同 じ長 さの直線によって構成される半円形の図形が提示さ
れる。 全ての直線にはそれぞれ 1-13 の番号がつけ られている。その図形の下には上記の直線のうちのいずれか2本と同一方向に伸びる2本の直線が描かれている。 被検者は、その2本が 1 -13 のうちのどの直線と一致するかを答えるように求め られる。 1 0 施行行われ、 正しく同定さ れた各線分 l 本につき1 点 が得点される (0-20 点) 。 刺激は原版に基づいている。(日本語版神経心理検査 R B AN S の標準化研究[pdf])
とのことだった。こんな図形。


  • レイの複雑図形(Rey-Osterrieth Complex Figure TESR, ROXFT):検索すると図形や文献がたくさん出てくるので省略。
  • 神経心理検査RBANS(Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status, RBANS):アーバンスと読むらしい。上記文献によれば「即時記憶、遅延記憶、視空間 ・ 構成、言語および注意の各認知領域を評価することができ る簡便でかつ詳細なスクリーニング検査」とのことである。線方向づけ課題はこれの下位検査として組み込まれている。

統合失調症の視空間知覚能力の障害に関するエビデンス

これまでの研究では、統合失調症患者の視空間能力の障害については以下のような事実が確かめられている。
  • 視空間記憶の低下
  • 初発の統合失調症患者においても、視空間知覚能力は全般的に貧しい
  • 知覚的問題解決能力の低さ
  • 第一世代、第二世代の抗精神病薬の投与で視空間プロセスの改善に違いは見られない
  • オランザピンを投与された患者は治療の前後を比較すると改善が見られたが、クロザピンとリスペリドンの場合は視空間認知の改善は認められなかった
  • 作業活動の水準の低さや視空間能力の貧しさと、理解・判断・推理の障害の関連
  • 精神病のハイリスクの人々は、遺伝的なリスクよりも、視空間作動記憶の障害の方が大きい

視空間的パターン推論とは

その後の追記です。

視空間的パターン推論(spatial pattern inference)は、視覚情報を用いて、物体の位置、方向、形状、サイズなどの特性を推論するプロセスです。このプロセスは、人間が視覚的な情報を処理し、物体を認識する上で非常に重要です。

視空間的パターン推論は、脳の視覚野によって処理され、物体の特徴を推論するために、様々な情報源を利用します。これらの情報源には、双眼視覚や単眼視覚、視点の変化、投影などが含まれます。視空間的パターン推論は、一般的に非常に迅速で自然なプロセスであり、人間が日常的に直感的に行っていることの一つです。

視空間的パターン推論は、認知心理学や神経科学の分野で研究されています。研究者たちは、このプロセスを理解することによって、視覚的な認知や注意、記憶、意思決定などに関する基本的なメカニズムを解明しようとしています。

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心理学(臨床心理学中心)と関連領域についての覚書です。


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