英語の手習いを兼ねて、海外の臨床心理学・精神医学関連記事を読んでいます。

Gut-Brain Connection Shown in IBS Patients with Childhood Trauma|PsychCentral

「小児期のトラウマを持つ過敏性腸症候群(IBS)患者に見られる内臓−脳の関係」


過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome :IBS)の患者の腸内細菌と脳の感覚処理をする部位が双方向に関連し合っていることが明らかになったという研究の紹介記事です。

ええと、脳で苦しみを感じるサインは、腸内細菌の構成内容に影響を与えて、その結果、腸の化学的な作用が脳の構造にインパクトを与えると。

特に、過敏性腸症候群において、人生初期のトラウマ体験が、腸内細菌の構成内容の変化と脳の構造的機能的変化に関連していることが判明したそうです。

つまり、子供時代の心的外傷体験が腸内細菌の状態や脳に影響を与えているということでしょうか。


腸内細菌の変化が脳の感覚処理の部位にフィードバックされ、腸刺激への感受性を変えてしまう、つまり過敏性腸症候群を導いてしまうということが示唆されています。

調査対象となった過敏性腸症候群の患者たちは、腸内細菌の状態が健康な人と変わらない群と、異なる群に分類することができました。
後者の方が、より人生初期のトラウマ体験を持っていて、過敏性腸症候群の症状も長期間に渡っていることが明らかになりました。また両群では脳の構造も異なっていたとのこと。




調べて見たら日本の研究でも次のようなものがありました。

心的外傷後ストレス障害における腸内細菌叢の変化 消化器心身医学 Vol. 23 (2016) No. 1 p. 2-5
近年,心的外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder: PTSD)と過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome: IBS)の関連性が指摘されており,一方で精神疾患と腸内細菌との関連性が指摘されている。また,IBSでは腸管粘膜における脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor: BDNF)の発現が増加するとの報告もある。今回我々は,本学で開発されたPTSD動物モデルを用い,腸内細菌叢や腸管粘膜におけるBDNF発現の変化について検討した。シャトル箱を用いてラットに逃避不能の電撃を負荷すると,後の行動観察でラットはPTSD,学習性無力(learned helplessness: LH),indeterminateのいずれかの行動パターンを呈することが判明した。行動パターンによって腸内細菌叢の構成が異なり,PTSD群ではBacteroidetes,LH群ではProteobacteriaの割合が増加する傾向がみられた。またLH群では,近位結腸のBDNF発現が増加する傾向がみられた。これらの変化がmicrobiota-gut-brain axisに関連し,行動変化や消化管機能に影響を与えている可能性がある。
とのことです。Bacteroidetes(バクテロイデス)というのは、脂肪の吸収を抑えたり燃やしたりする腸内細菌だそうで、「ヤセ菌」とも呼ばれているようです。

Proteobacteria(プロテオバクテリア)には大腸菌、サルモネラ、ビブリオ、ヘリコバクターなど多種多様な病原体が含まれていて、姿を自由自在に変化させるギリシャ神話のプロテウスにちなんで命名されているとのこと。

どちらも、適切なバランスで腸内に含まれているのが望ましいのですね。

味噌汁とかヨーグルトとか、発酵食品をもっと食べようと思いました。